66 / 170
第三部
邪魔はしないよ
しおりを挟む
季節は過ぎ、秋へと変わる。
僕は資格試験や就活、卒論のテーマ決めに集中するため、コンビニのバイトを辞めた。前々からユーリも辞めてほしいとは言っていたし、ちょうどよかったのかもしれない。
大学も始まり、一年生で講義の多いユーリは、朝から夕方までずっと学内にいる。僕はといえば、大抵ゼミ室か図書室にいるから、ユーリが会いに来ることなんてしょっちゅうだ。
「で、講義は?」
「教授が出張とかなんとかで休みだよ。ひとコマ空いちゃった」
「それで? わざわざ来たのか……」
分厚い参考書とルーズリーフから目を上げて、肘をつき右隣に座るユーリ見る。その際、首元に見えた赤い跡がやけに目立って、僕はすぐに視線を反らした。
昨夜つけてほしいと強請られて自分がつけたものなのに、こうして明るい中で見るとやけに恥ずかしい。やっぱり見えない場所につけるんだったと反省した。
「俺はリヒトに会いに来ただけ。邪魔はしないよ?」
そう言いながらも、ユーリの左手は僕の太ももをゆっくりと撫で上げている。息を軽く漏らして睨みつければ、ユーリは「ん?」と何食わぬ顔で僕を見下ろしていた。
「……っ、なら、手をどけろよ」
「えー。ま、いっか」
いつもは食い下がらないユーリが、珍しく手をどけた。それに僕は目を丸くして、席を立つユーリに「え、え?」と素っ頓狂な声を上げる。
「どうしたの、リヒト?」
意地悪な笑みもなく、至ってユーリは普通に首を傾げている。ユーリに向かって伸ばした行き場のない手が、どうすればいいのか虚空を彷徨う。
「あ……、いや、空いた時間、どうするのかと、思って……」
「学内のカフェでも行こうかと思ったんだけど?」
「そう、なんだ」
おずおずと、彷徨っていた手を下ろした。きつく言った手前、今さら一緒に行くなんてどの口が言えるだろうか。
けれど、そんな僕のことをよく知っているユーリは「だから」と下ろした手を取り、僕を半ば無理やり立ち上がらせた。
「一緒に行こうよ。息抜きも兼ねてさ」
「あ、う、うん」
荷物をすぐにまとめて鞄を肩から下げると、ユーリがぐいと僕の腰を引き寄せた。服越しとはいえユーリの熱が伝わり、僕はすぐに「ユーリ……!」と離れようとする。
「んー、ちょっとだけ」
「ちょっとって……」
一応講義中なため、僕らの他にはほとんど学生はいないが、それでもどこから見られているかわからない。しっかりした胸板を押し返すが、がっちりと腰に手を回され、なおかつパーカーの中に手を入れ、軽く触れられては上手く力が入らない。
「ん……っ、だめ、ユーリっ」
「リヒトの身体、柔らかくてほんと好き」
「ふあっ……」
男の身体が柔らかいわけあるか。といつも思うが、いや、ユーリと暮らすようになってから三食食べるようになったし、実は少し太ったのかもしれない。それはちょっと嫌だ。
ユーリの手がパーカーの中からジャージへと移動する。ジャージの中に入れられた手は、さらに下着をずらし、やわやわと僕の臀部を揉んでいる。
「これ以上、は……っ」
「ふーん。でもリヒト、欲しそうな表情、してるよ?」
そんなわけがない。そう訴えるように思いきり睨みつけてやったが、ユーリは明らかに支配者の顔をして、愉しそうに舌舐めずりをしている。
「駄目だって、リヒト。そんな目で見られても興奮するだけだからさ」
「何言って……んっ」
口を塞がれ、ユーリの舌が無理やり唇を割って入ってくる。逃げるように縮こまっていた舌を絡め取られ、僕もおずおずと舌先で応える。舌の裏側、口内の上側、さらには歯列を念入りに舐め取られ、やっとユーリは口を解放してくれた。
「ちょっとって言ったけど、やっぱりシたい」
「帰るまで我慢しろよ……!」
「つまり、帰ったらぐちゃぐちゃのトロトロにされる覚悟があるってこと?」
ユーリの欲に満ちた目が、僕を、僕だけを見つめている。だから僕は応えるように、ユーリの口に軽くだけ触れて「……いいよ」と小さく呟いた。その反応はユーリにとって意外だったのか、僕を抱き寄せる力が緩む。その隙に腕を解くようにして抜け出すと、
「ほら、カフェに行くんだろ」
と本棚の合間を縫うように、少しだけ早歩きで、ユーリより先に図書室を出た。
僕は資格試験や就活、卒論のテーマ決めに集中するため、コンビニのバイトを辞めた。前々からユーリも辞めてほしいとは言っていたし、ちょうどよかったのかもしれない。
大学も始まり、一年生で講義の多いユーリは、朝から夕方までずっと学内にいる。僕はといえば、大抵ゼミ室か図書室にいるから、ユーリが会いに来ることなんてしょっちゅうだ。
「で、講義は?」
「教授が出張とかなんとかで休みだよ。ひとコマ空いちゃった」
「それで? わざわざ来たのか……」
分厚い参考書とルーズリーフから目を上げて、肘をつき右隣に座るユーリ見る。その際、首元に見えた赤い跡がやけに目立って、僕はすぐに視線を反らした。
昨夜つけてほしいと強請られて自分がつけたものなのに、こうして明るい中で見るとやけに恥ずかしい。やっぱり見えない場所につけるんだったと反省した。
「俺はリヒトに会いに来ただけ。邪魔はしないよ?」
そう言いながらも、ユーリの左手は僕の太ももをゆっくりと撫で上げている。息を軽く漏らして睨みつければ、ユーリは「ん?」と何食わぬ顔で僕を見下ろしていた。
「……っ、なら、手をどけろよ」
「えー。ま、いっか」
いつもは食い下がらないユーリが、珍しく手をどけた。それに僕は目を丸くして、席を立つユーリに「え、え?」と素っ頓狂な声を上げる。
「どうしたの、リヒト?」
意地悪な笑みもなく、至ってユーリは普通に首を傾げている。ユーリに向かって伸ばした行き場のない手が、どうすればいいのか虚空を彷徨う。
「あ……、いや、空いた時間、どうするのかと、思って……」
「学内のカフェでも行こうかと思ったんだけど?」
「そう、なんだ」
おずおずと、彷徨っていた手を下ろした。きつく言った手前、今さら一緒に行くなんてどの口が言えるだろうか。
けれど、そんな僕のことをよく知っているユーリは「だから」と下ろした手を取り、僕を半ば無理やり立ち上がらせた。
「一緒に行こうよ。息抜きも兼ねてさ」
「あ、う、うん」
荷物をすぐにまとめて鞄を肩から下げると、ユーリがぐいと僕の腰を引き寄せた。服越しとはいえユーリの熱が伝わり、僕はすぐに「ユーリ……!」と離れようとする。
「んー、ちょっとだけ」
「ちょっとって……」
一応講義中なため、僕らの他にはほとんど学生はいないが、それでもどこから見られているかわからない。しっかりした胸板を押し返すが、がっちりと腰に手を回され、なおかつパーカーの中に手を入れ、軽く触れられては上手く力が入らない。
「ん……っ、だめ、ユーリっ」
「リヒトの身体、柔らかくてほんと好き」
「ふあっ……」
男の身体が柔らかいわけあるか。といつも思うが、いや、ユーリと暮らすようになってから三食食べるようになったし、実は少し太ったのかもしれない。それはちょっと嫌だ。
ユーリの手がパーカーの中からジャージへと移動する。ジャージの中に入れられた手は、さらに下着をずらし、やわやわと僕の臀部を揉んでいる。
「これ以上、は……っ」
「ふーん。でもリヒト、欲しそうな表情、してるよ?」
そんなわけがない。そう訴えるように思いきり睨みつけてやったが、ユーリは明らかに支配者の顔をして、愉しそうに舌舐めずりをしている。
「駄目だって、リヒト。そんな目で見られても興奮するだけだからさ」
「何言って……んっ」
口を塞がれ、ユーリの舌が無理やり唇を割って入ってくる。逃げるように縮こまっていた舌を絡め取られ、僕もおずおずと舌先で応える。舌の裏側、口内の上側、さらには歯列を念入りに舐め取られ、やっとユーリは口を解放してくれた。
「ちょっとって言ったけど、やっぱりシたい」
「帰るまで我慢しろよ……!」
「つまり、帰ったらぐちゃぐちゃのトロトロにされる覚悟があるってこと?」
ユーリの欲に満ちた目が、僕を、僕だけを見つめている。だから僕は応えるように、ユーリの口に軽くだけ触れて「……いいよ」と小さく呟いた。その反応はユーリにとって意外だったのか、僕を抱き寄せる力が緩む。その隙に腕を解くようにして抜け出すと、
「ほら、カフェに行くんだろ」
と本棚の合間を縫うように、少しだけ早歩きで、ユーリより先に図書室を出た。
36
あなたにおすすめの小説
僕に双子の義兄が出来まして
サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。
そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。
ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。
…仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。
え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました
湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。
蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。
だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。
しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。
「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」
――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈
__________
追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ
一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる
(主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです)
※R成分薄めです
__________
小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です
o,+:。☆.*・+。
お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/
ありがとうございます!!
BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m
生贄傷物令息は竜人の寵愛で甘く蕩ける
てんつぶ
BL
「僕を食べてもらっても構わない。だからどうか――」
庶子として育ったカラヒは母の死後、引き取られた伯爵家でメイドにすら嗤われる下働き以下の生活を強いられていた。その上義兄からは火傷を負わされるほどの異常な執着を示される。
そんなある日、義母である伯爵夫人はカラヒを神竜の生贄に捧げると言いだして――?
「カラヒ。おれの番いは嫌か」
助けてくれた神竜・エヴィルはカラヒを愛を囁くものの、カラヒは彼の秘密を知ってしまった。
どうして初対面のカラヒを愛する「フリ」をするのか。
どうして竜が言葉を話せるのか。
所詮偽りの番いだとカラヒは分かってしまった。それでも――。
狼領主は俺を抱いて眠りたい
明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。
素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。
辺境の酒場で育った少年が、美貌の伯爵にとろけるほど愛されるまで
月ノ江リオ
BL
◆ウィリアム邸でのひだまり家族な子育て編 始動。不器用な父と、懐いた子どもと愛される十五歳の青年と……な第二部追加◆断章は残酷描写があるので、ご注意ください◆
辺境の酒場で育った十三歳の少年ノアは、八歳年上の若き伯爵ユリウスに見初められ肌を重ねる。
けれど、それは一時の戯れに過ぎなかった。
孤独を抱えた伯爵は女性関係において奔放でありながら、幼い息子を育てる父でもあった。
年齢差、身分差、そして心の距離。
不安定だった二人の関係は年月を経て、やがて蜜月へと移り変わり、交差していく想いは複雑な運命の糸をも巻き込んでいく。
血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】
まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。
【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件
りゆき
BL
俺の部屋の天井から降って来た超絶美形の男。
そいつはいきなり俺の唇を奪った。
その男いわく俺は『運命の相手』なのだと。
いや、意味分からんわ!!
どうやら異世界からやって来たイケメン。
元の世界に戻るには運命の相手と結ばれないといけないらしい。
そんなこと俺には関係ねー!!と、思っていたのに…
平凡サラリーマンだった俺の人生、異世界人への嫁入りに!?
そんなことある!?俺は男ですが!?
イケメンたちとのわちゃわちゃに巻き込まれ、愛やら嫉妬やら友情やら…平凡生活からの一転!?
スパダリ超絶美形×平凡サラリーマンとの嫁入りラブコメ!!
メインの二人以外に、
・腹黒×俺様
・ワンコ×ツンデレインテリ眼鏡
が登場予定。
※R18シーンに印は入れていないのでお気をつけください。
※前半は日本舞台、後半は異世界が舞台になります。
※こちらの作品はムーンライトノベルズにも掲載中。
※完結保証。
※ムーンさん用に一話あたりの文字数が多いため分割して掲載。
初日のみ4話、毎日6話更新します。
本編56話×分割2話+おまけの1話、合計113話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる