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第四部
俺に開けさせて。
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散々なボランティアだった。
いや、子供たちとの触れ合いは楽しかったし、お土産と称して渡されたカップケーキは美味しそうだし、おばさんたちも終始いい人たちで本当によかった。
けれど動くと中に出されたユーリのが出てきそうでヒヤヒヤしたし、ヤンチャな男の子はすぐにスカートを捲ろうとしてくるしで、ああいったところで働く人は大変だなぁとも痛感した。ま、激しく動く作業はトナカイユーリがしてくれたし、スカートもユーリが断固阻止してくれたから、そこはよかったんだけど。
帰り道、適当にコンビニでお弁当を買って、いつもの道を歩く。ふわふわと降ってきた雪に「あ」と空を見上げた。
「降ってきた」
「流石に冷えるね。ほら、こっち寄って」
ユーリが差した傘に二人で入る。触れ合ったところがそれとなく恥ずかしくて、それを誤魔化すように「傘、持つよ」と持ち手に手をかけた。
「リヒトが持ったら俺が屈まないといけないね」
「嫌味?」
「まさか。愛情表現。小さくて可愛いってこと」
自然にそういうことを言えるのが、少しだけ羨ましい。いい年で拗ねたなんて思われたくなくて、僕はフードを被って少し俯いた。それにユーリが笑って「じゃあ」と右手に持ったコンビニ袋を僕に差し出す。
「こっち、持ってくれる?」
「ん」
それを左手で受け取った際、覗き込んできたユーリに軽く口づけされた。離れたユーリが、心底幸せそうに笑っている。
「お前、さぁ……、場所を……」
「場所なんて選んでられないよ。いつだって俺は、リヒトに触れたいって思ってるから」
それでも少しはこっちの身を考えてほしい。心臓がいちいち煩くて、口から飛び出しそうになるから。
あの並木道を二人で歩く。道はうっすらと白くなっていて、僕たちの足跡だけが残される。そんな静かな空間も好きなのだけど、思い出したことがあって、僕は「あ」と顔を上げた。
「ユーリ、誕生日っていつ? 何か渡そうと思うんだけど」
僕みたいな庶民のプレゼントなんて、ユーリからみれば大したものではないかもしれない。でもたぶん、こいつは僕からの物なら、なんでも喜ぶ気がした。
「誕生日はベタに二十四日だけど……、特にいらないかな。今さら物に執着はないし」
「だと思った。でもユーリから財布もらったから、何か返したいなって思って」
「んー、じゃ、これ」
ユーリは何事もないように、自然な動きでポケットから小さな小箱を取り出してきた。ユーリが、僕に目だけで開けてと訴えている。僕も空いている右手で、その箱をゆっくりと開けた。
「……ピアス?」
「うん」
それは、小さな水色の石がついた、シンプルなものだった。
「ありがとう……? ん? え、と、僕、開けてないけど……?」
「知ってる。だから、俺に開けさせて?」
「は!?」
あまりにも僕が慌てたものだから、持っていたコンビニ袋が揺れて、中のお弁当が飛び跳ねた。
「駄目?」
ユーリが少し眉尻を下げて、淋しそうに首を傾げる。それに弱い僕は「う」と言葉が詰まり、それから息をひとつ吐ききって、
「駄目っていうか、痛そう。それに、これって僕がもらってない?」
とピアスにやっていた視線を上げて、ちらりとユーリを見上げた。ユーリは片手で器用に箱を閉めて、またポケットに突っ込んでから、
「そんなことないよ。リヒトの右耳に、これをつけさせて?」
と右手で僕の右耳に軽く触れた。ユーリの腕が微妙に視界を邪魔して、今ユーリがどんな顔をしているのか見えない。
「でも、つけたら、その、邪魔に、ならないかと思って……」
「邪魔? あぁ、もしかして」
耳たぶをふよふよと触っていた手が、僕のフードを取り去った。そのままユーリは少し屈んで耳元に口を近づける。
「こういうこと、するのに?」
「……っ」
ぬる、とユーリの舌が耳の上あたりを掠める。身体が揺れて、腰にぞくりとした感覚が走った。それに耐えられずユーリのコートの袖を掴めば、ユーリはまた軽く唇を重ねてくれた。
「リヒトは本当に煽るの上手いよね。また外で襲ってほしいの?」
「煽ってないし、もう外は嫌だ。だから」
今度は僕から重ねにいって、すぐに離した。そのままユーリの胸に頭をつけて「早く帰る、寒いし」と俯いたまま呟く。
「あぁもう、リヒト、そういう……っ、なんでもないよっ」
珍しく赤くなったユーリが、珍しく僕を置いて先を歩いていく。傘から出された僕は「ちょっと」と急いで隣に並んで、少しだけ文句を言う。ユーリの横顔は珍しく赤いままで、降り出した雪の色も相まって、それはとても映えていた。
いや、子供たちとの触れ合いは楽しかったし、お土産と称して渡されたカップケーキは美味しそうだし、おばさんたちも終始いい人たちで本当によかった。
けれど動くと中に出されたユーリのが出てきそうでヒヤヒヤしたし、ヤンチャな男の子はすぐにスカートを捲ろうとしてくるしで、ああいったところで働く人は大変だなぁとも痛感した。ま、激しく動く作業はトナカイユーリがしてくれたし、スカートもユーリが断固阻止してくれたから、そこはよかったんだけど。
帰り道、適当にコンビニでお弁当を買って、いつもの道を歩く。ふわふわと降ってきた雪に「あ」と空を見上げた。
「降ってきた」
「流石に冷えるね。ほら、こっち寄って」
ユーリが差した傘に二人で入る。触れ合ったところがそれとなく恥ずかしくて、それを誤魔化すように「傘、持つよ」と持ち手に手をかけた。
「リヒトが持ったら俺が屈まないといけないね」
「嫌味?」
「まさか。愛情表現。小さくて可愛いってこと」
自然にそういうことを言えるのが、少しだけ羨ましい。いい年で拗ねたなんて思われたくなくて、僕はフードを被って少し俯いた。それにユーリが笑って「じゃあ」と右手に持ったコンビニ袋を僕に差し出す。
「こっち、持ってくれる?」
「ん」
それを左手で受け取った際、覗き込んできたユーリに軽く口づけされた。離れたユーリが、心底幸せそうに笑っている。
「お前、さぁ……、場所を……」
「場所なんて選んでられないよ。いつだって俺は、リヒトに触れたいって思ってるから」
それでも少しはこっちの身を考えてほしい。心臓がいちいち煩くて、口から飛び出しそうになるから。
あの並木道を二人で歩く。道はうっすらと白くなっていて、僕たちの足跡だけが残される。そんな静かな空間も好きなのだけど、思い出したことがあって、僕は「あ」と顔を上げた。
「ユーリ、誕生日っていつ? 何か渡そうと思うんだけど」
僕みたいな庶民のプレゼントなんて、ユーリからみれば大したものではないかもしれない。でもたぶん、こいつは僕からの物なら、なんでも喜ぶ気がした。
「誕生日はベタに二十四日だけど……、特にいらないかな。今さら物に執着はないし」
「だと思った。でもユーリから財布もらったから、何か返したいなって思って」
「んー、じゃ、これ」
ユーリは何事もないように、自然な動きでポケットから小さな小箱を取り出してきた。ユーリが、僕に目だけで開けてと訴えている。僕も空いている右手で、その箱をゆっくりと開けた。
「……ピアス?」
「うん」
それは、小さな水色の石がついた、シンプルなものだった。
「ありがとう……? ん? え、と、僕、開けてないけど……?」
「知ってる。だから、俺に開けさせて?」
「は!?」
あまりにも僕が慌てたものだから、持っていたコンビニ袋が揺れて、中のお弁当が飛び跳ねた。
「駄目?」
ユーリが少し眉尻を下げて、淋しそうに首を傾げる。それに弱い僕は「う」と言葉が詰まり、それから息をひとつ吐ききって、
「駄目っていうか、痛そう。それに、これって僕がもらってない?」
とピアスにやっていた視線を上げて、ちらりとユーリを見上げた。ユーリは片手で器用に箱を閉めて、またポケットに突っ込んでから、
「そんなことないよ。リヒトの右耳に、これをつけさせて?」
と右手で僕の右耳に軽く触れた。ユーリの腕が微妙に視界を邪魔して、今ユーリがどんな顔をしているのか見えない。
「でも、つけたら、その、邪魔に、ならないかと思って……」
「邪魔? あぁ、もしかして」
耳たぶをふよふよと触っていた手が、僕のフードを取り去った。そのままユーリは少し屈んで耳元に口を近づける。
「こういうこと、するのに?」
「……っ」
ぬる、とユーリの舌が耳の上あたりを掠める。身体が揺れて、腰にぞくりとした感覚が走った。それに耐えられずユーリのコートの袖を掴めば、ユーリはまた軽く唇を重ねてくれた。
「リヒトは本当に煽るの上手いよね。また外で襲ってほしいの?」
「煽ってないし、もう外は嫌だ。だから」
今度は僕から重ねにいって、すぐに離した。そのままユーリの胸に頭をつけて「早く帰る、寒いし」と俯いたまま呟く。
「あぁもう、リヒト、そういう……っ、なんでもないよっ」
珍しく赤くなったユーリが、珍しく僕を置いて先を歩いていく。傘から出された僕は「ちょっと」と急いで隣に並んで、少しだけ文句を言う。ユーリの横顔は珍しく赤いままで、降り出した雪の色も相まって、それはとても映えていた。
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