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六月に書いた短編
ゴールデンウィーク2
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ゴールデンウィークの間だけ、居酒屋バイトをする。僕がそれを聞いたのは、一日目の送りの時だ。
「店長、僕聞いてないですよ……」
いつもなら裏口あたりで別れるのに、なぜか帰らず、むしろ「俺もバイト」なんて普通に、至極当たり前のように言ってきたのだ。休憩室にいた店長が、あらかじめ用意していた新品の制服を渡しながら、
「なんだお前さん、言ってねぇのか」
とユーリをちらりと見上げた。
「当日言ったほうが楽しそうだったんで」
渡された制服を軽く当ててから、ユーリが「荷物は?」と視線を彷徨わせた。
「僕のロッカー使えばいいよ……」
仕方なしに中を少しだけ詰めて、ユーリに貴重品を置くよう促した。荷物を詰め込むのを見てから、さっさと着替えてしまおうと服に手をかける。半分ほど捲り上げたところで、ユーリから「何してんの」と待ったがかかった。
「何って、着替えだけど」
「更衣室あるでしょ」
「この後スイや他の女の子も来るし、僕は別に使わなくても」
「じゃ、何、リヒトの裸全員に見せてんの」
「言い方。とりあえず遅れるから離せ」
「嫌だ」
無理やり服を脱ごうとして破れるのも困る。服が簡単に破れはしないと思うのだけど、ユーリの力の強さは侮れない。それに僕の力じゃ敵わないのもわかっているし。
「あーもう、裸なんて今さらだろ? お前は付き合いたての、最近やっと手を繋いで一緒に登下校するようになった初々しい中学生男子か?」
「俺が見るのと他が見るのとは意味が違いますよね? 大体、何ですかその例えは? せめて高校生に」
「はよー! あ、リッちゃーん! と、彼氏さん?」
時間になったのか、スイが休憩室に来た途端に賑やかになる。服を脱ごうとする僕と止めようとするユーリを見て、全てを悟ったように頷いている。それから人差し指をビシッと立てて、
「リッちゃんと彼氏さんで更衣室使えばいーじゃん?」
とドヤ顔で一番駄目な案を出してきた。
「あ、それはいい案ですね」
「いいわけないだろ! おい、離せって」
ユーリに半ば引きずられるようにして更衣室に連れ込まれていく。二人で入っても狭くはないけれど、こんな場所に二人なんて嫌な予感しかない。ピシャリとカーテンを閉められて、逃げようにも奥側に追いやられては逃げようもない。
「はい、着替えましょうか」
「な、何もするなよ……?」
「何もって……」
服を捲り上げられ、肌に外気が触れる。その微かな冷たさとユーリの熱に、胸がピンと主張するのが嫌でもわかった。
「ひ、あ……っ」
かかる吐息も熱いし、身体は変に反応するしで、これ以上ない恥ずかしさで目をぎゅっと閉じた。
「はい、早く腕通して」
「……へ?」
言われて目を開ければ、服を取り払われた状態のまま、ユーリが制服の袖を通すように促していた。どういうことだとユーリを見上げれば、にやりと意地悪く笑うユーリと目が合った。
「何かあるって期待してた?」
「は、あ……!? するわけないだろっ。もう出てけよ! 一人で着れる!」
カーテンを少しだけ開けて、胸板を強く押してユーリを更衣室から追い出した。
これじゃ本当に僕が期待してたみたいだ。そう思われるのもシャクだし、ていうか、そもそもユーリが短期でもバイトをするなんて聞いてないし。
次々に浮かんでは消える文句を、帰ったら、いや帰りながらでもぶつけてやろうと決め、ズボンに足を通す。それからカーテンを開ければ、既に着替えを終えたユーリが、同じく着替え終えたスイの髪を綺麗めにまとめているところだった。
「わー! 彼氏さんすごい! 手先器用だねぇ!」
「義姉によくやらされたからね」
「おねーさんいるの? 絶対美人さんじゃーん!」
元からスイは誰とでも打ち解けるほうだから、二人が話すのは別に構わない。むしろ、敵だった二人が仲良く話してくれるのなら大歓迎だ。微笑ましいとも思う。
でも。
「……なんで僕が更衣室使わないといけないんだ」
ガラにもなく拗ねているのは自覚している。
そんな僕にユーリは気づいているのに、面白がっていることも。だからなおさら気に入らなくて、それが僕を素直にさせなくなる。
「先行ってる」
「あ、リッちゃーん。あたしも行くー!」
スイも少し遅れてついてくる。
後からゆったりと余裕そうに来たユーリに簡単な説明をして、僕はお店の暖簾をかけた。
「店長、僕聞いてないですよ……」
いつもなら裏口あたりで別れるのに、なぜか帰らず、むしろ「俺もバイト」なんて普通に、至極当たり前のように言ってきたのだ。休憩室にいた店長が、あらかじめ用意していた新品の制服を渡しながら、
「なんだお前さん、言ってねぇのか」
とユーリをちらりと見上げた。
「当日言ったほうが楽しそうだったんで」
渡された制服を軽く当ててから、ユーリが「荷物は?」と視線を彷徨わせた。
「僕のロッカー使えばいいよ……」
仕方なしに中を少しだけ詰めて、ユーリに貴重品を置くよう促した。荷物を詰め込むのを見てから、さっさと着替えてしまおうと服に手をかける。半分ほど捲り上げたところで、ユーリから「何してんの」と待ったがかかった。
「何って、着替えだけど」
「更衣室あるでしょ」
「この後スイや他の女の子も来るし、僕は別に使わなくても」
「じゃ、何、リヒトの裸全員に見せてんの」
「言い方。とりあえず遅れるから離せ」
「嫌だ」
無理やり服を脱ごうとして破れるのも困る。服が簡単に破れはしないと思うのだけど、ユーリの力の強さは侮れない。それに僕の力じゃ敵わないのもわかっているし。
「あーもう、裸なんて今さらだろ? お前は付き合いたての、最近やっと手を繋いで一緒に登下校するようになった初々しい中学生男子か?」
「俺が見るのと他が見るのとは意味が違いますよね? 大体、何ですかその例えは? せめて高校生に」
「はよー! あ、リッちゃーん! と、彼氏さん?」
時間になったのか、スイが休憩室に来た途端に賑やかになる。服を脱ごうとする僕と止めようとするユーリを見て、全てを悟ったように頷いている。それから人差し指をビシッと立てて、
「リッちゃんと彼氏さんで更衣室使えばいーじゃん?」
とドヤ顔で一番駄目な案を出してきた。
「あ、それはいい案ですね」
「いいわけないだろ! おい、離せって」
ユーリに半ば引きずられるようにして更衣室に連れ込まれていく。二人で入っても狭くはないけれど、こんな場所に二人なんて嫌な予感しかない。ピシャリとカーテンを閉められて、逃げようにも奥側に追いやられては逃げようもない。
「はい、着替えましょうか」
「な、何もするなよ……?」
「何もって……」
服を捲り上げられ、肌に外気が触れる。その微かな冷たさとユーリの熱に、胸がピンと主張するのが嫌でもわかった。
「ひ、あ……っ」
かかる吐息も熱いし、身体は変に反応するしで、これ以上ない恥ずかしさで目をぎゅっと閉じた。
「はい、早く腕通して」
「……へ?」
言われて目を開ければ、服を取り払われた状態のまま、ユーリが制服の袖を通すように促していた。どういうことだとユーリを見上げれば、にやりと意地悪く笑うユーリと目が合った。
「何かあるって期待してた?」
「は、あ……!? するわけないだろっ。もう出てけよ! 一人で着れる!」
カーテンを少しだけ開けて、胸板を強く押してユーリを更衣室から追い出した。
これじゃ本当に僕が期待してたみたいだ。そう思われるのもシャクだし、ていうか、そもそもユーリが短期でもバイトをするなんて聞いてないし。
次々に浮かんでは消える文句を、帰ったら、いや帰りながらでもぶつけてやろうと決め、ズボンに足を通す。それからカーテンを開ければ、既に着替えを終えたユーリが、同じく着替え終えたスイの髪を綺麗めにまとめているところだった。
「わー! 彼氏さんすごい! 手先器用だねぇ!」
「義姉によくやらされたからね」
「おねーさんいるの? 絶対美人さんじゃーん!」
元からスイは誰とでも打ち解けるほうだから、二人が話すのは別に構わない。むしろ、敵だった二人が仲良く話してくれるのなら大歓迎だ。微笑ましいとも思う。
でも。
「……なんで僕が更衣室使わないといけないんだ」
ガラにもなく拗ねているのは自覚している。
そんな僕にユーリは気づいているのに、面白がっていることも。だからなおさら気に入らなくて、それが僕を素直にさせなくなる。
「先行ってる」
「あ、リッちゃーん。あたしも行くー!」
スイも少し遅れてついてくる。
後からゆったりと余裕そうに来たユーリに簡単な説明をして、僕はお店の暖簾をかけた。
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