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第8話 転生したら「た○○」だった件

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 俺は生まれた。
 転生なので生まれたのだ。

 動く歩道のようなところに乗せられて、どこかに運ばれていく。
 何かの製品だろうか。
 これまでの転生経験上──すごい言葉だが事実だから仕方ない──次は違った系統だと思っていたのになぁ。

 暗い所に大勢の仲間とともに押し込められた。
 少しひんやりしている。
 隣との距離が近すぎて、望まぬキスをしてしまいそうである。

 どこかの工場に到着したようだ。
 いきなり体重計に乗せられる。俺は男だからいいが、女性だったら憤慨しそうだ。いや、最近ちょっとお腹に肉が付き始めていたから、気にはしてたっけ。人間だった頃の話だけど。

 そこからまた涼しいところに連れていかれた。
 工業製品を保管する温度ではない。となると俺は何だ?
 かすかに皮膚から呼吸ができるし、生きてるという実感はある。

 皮膚呼吸──目を持っている生き物だったら景色がわかるはずだ。しかし明るさくらいしか判別できない。つまり目はないのだ。
 まさかだとは思うが、あの生まれた感覚──卵?

 もしそうだとすると、悲惨な結末もありうるではないか。
 いやだ死にたくない──っていうのもおかしな気がするけど、間違ってもいないはずなんだよなぁ。

 凸凹道を車で走っているかのような振動が身体を襲う。どうやら別のところに運ばれたらしい。そしてそのままガソリンスタンドにある洗車機に放り込まれた気分を味わう。
 いやー、これ案外気持ちいいのな。

 それから熱い視線を感じ、隣に居た仲間がどこかに連れ去られた。
 よくわからない機械に何度も通され、紫外線にも曝される。お肌が焼けちゃうじゃないか。って乙女か俺は。むしろ男らしい日焼けをしたかった。悲しくも筋肉が貧相だったので、そういう気にもならなかったが。

 最後に身長別に振り分けられた。
 たぶん似たり寄ったりの仲間が集められているのだろう。そしてプラスチックケースに詰められる。
 ああ、そういえば自宅にあるフィギュアはこんな気分なんだろうか──

 これは間違いない。卵だ。
 せめて美味しくいただいてくれ。

 とあるスーパーに陳列される。
 ワゴンに山積みになってるから怖い。
 一人暮らしをはじめたばかりの可愛らしい女の子に手を差し伸べられたい──

「あっ!」

 小さな女の子がワゴンにぶつかった。そのはずみで俺を含む10名が詰まったパックが落下する。
 そして俺は意識が遠のいた。
 他の仲間は無事だったのだろうか──

次回 第9話 転生したら「○○○き」だった件
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