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亡国の残光
ミトラの選択 その4
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「悩まなくてもいいと? 戯れを言っているの? イサオ」
抱えた膝から顔を上げたミトラは、少し恨めしげに勇男を見た。
「ふざけてるわけじゃねぇよ、ミトラ。ただな、オレからすると、それはミトラが悩むことでもないって思ったぜ?」
「王族でもなく、故国を失ったこともない貴方に、なぜそんなことが軽々に言えるというの?」
ミトラはますます目元を険しくさせた。
殺意さえ滲んできそうなミトラの視線を、勇男はわずかに気圧されながらも受け止めた。
「た、たしかにオレは王族じゃない。故国って言われると……どうなんだろうな、異世界から来た場合。あとオレはミトラじゃないから、ミトラの気持ちも分からない」
「……それは完全な部外者ということでは?」
「そうなるよな。けど、部外者だからこそ、ミトラが見えていない、外からの目線で物が見えるんだよ」
「では、その外からの目線で何を見ての物言いだというの?」
「ミトラがエジプラット王国最後の人間っていうなら、本当にミトラの好きなようにしていいってことだよ」
勇男の言葉に、ミトラは幾ばくか考えを巡らせ、
「妾個人の判断で復讐に走っても良いと?」
少し脅しをかけるように言ってきた。
「そういう物騒な行動も含めて、まぁ、ミトラの好きなようにしていいんじゃないかって、オレは思う」
勇男は遠い空の彼方を見るように天を仰いだ。
「オレはミトラの母親に会ったことはないけど、『好きなようにしていい』って言ったんなら、本当にミトラが好きなようにしていいってことなんじゃないか? エジプラット王国のことがどうとかっていうんじゃなくて」
「母の言葉は、エジプラット王国の命運を妾に託すものだった。妾はその責務を果たさなければいけない」
「そうか? そういう意味も含まれてるとしても、ミトラはエジプラット王国最後の一人で、最後の王族っていうなら、キレイさっぱり終わらせるのも『好きにしていい』ってことじゃないのか?」
「……」
勇男の言葉を聞き、またミトラはしばらく考えを巡らせた。
「……仮にそうすることも許されているとして、イサオ、貴方は何を根拠にそんなことを言っているの?」
「そりゃあもちろん―――」
勇男はミトラの目を真っ直ぐに見て言った。
「クレオパトラはミトラの母親だからだな」
抱えた膝から顔を上げたミトラは、少し恨めしげに勇男を見た。
「ふざけてるわけじゃねぇよ、ミトラ。ただな、オレからすると、それはミトラが悩むことでもないって思ったぜ?」
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「では、その外からの目線で何を見ての物言いだというの?」
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「妾個人の判断で復讐に走っても良いと?」
少し脅しをかけるように言ってきた。
「そういう物騒な行動も含めて、まぁ、ミトラの好きなようにしていいんじゃないかって、オレは思う」
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「オレはミトラの母親に会ったことはないけど、『好きなようにしていい』って言ったんなら、本当にミトラが好きなようにしていいってことなんじゃないか? エジプラット王国のことがどうとかっていうんじゃなくて」
「母の言葉は、エジプラット王国の命運を妾に託すものだった。妾はその責務を果たさなければいけない」
「そうか? そういう意味も含まれてるとしても、ミトラはエジプラット王国最後の一人で、最後の王族っていうなら、キレイさっぱり終わらせるのも『好きにしていい』ってことじゃないのか?」
「……」
勇男の言葉を聞き、またミトラはしばらく考えを巡らせた。
「……仮にそうすることも許されているとして、イサオ、貴方は何を根拠にそんなことを言っているの?」
「そりゃあもちろん―――」
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