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第1章 星のない朝
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獣人は、朝というものを特別だと思ったことがなかった。
夜が終われば光が来る。それだけの現象だ。喜びも、期待もない。
目を開けると、天井のひび割れが視界に入る。
何度も見たはずの光景なのに、そこに「慣れ」はなかった。
慣れる理由がなかったからだ。
彼は自分がここにいる理由を知らない。
この部屋に住んでいるのか、ただ留まっているだけなのかもわからない。
だが、体は勝手に起き上がる。
生きるという行為は、意思とは無関係に続いていた。
窓から差し込む光は弱く、世界を薄く塗り替えるだけだった。
色はあるはずなのに、名前を持たない色。
獣人の毛並みも、指先も、その中に溶けている。
胸に手を当てる。
星の形の印が、そこにある。
触れるたび、奇妙な感覚が走る。
痛みではない。懐かしさでもない。
ただ「欠けている」という感覚。
それが何を意味するのか、彼は考えない。
考えようとすると、思考は途中で途切れ、言葉になる前に霧散する。
まるで、最初から答えを持たない問いのように。
獣人は立ち上がり、外へ出た。
街は、朝を受け入れる準備ができていなかった。
人々は忙しなく動きながらも、どこか疲れた目をしている。
誰も彼を気に留めない。
獣人もまた、誰かを気に留める理由を持たなかった。
歩く。
理由も目的もなく。
そのとき、背後から声が聞こえた。
「おい、あんた」
振り返る。
年老いた旅人が、杖に体重を預けながら立っていた。
「……生きてる顔をしてないな」
獣人は返事をしなかった。
返す言葉を、持っていなかった。
旅人はしばらく彼を眺め、それから小さく笑った。
「まあいい。生きてるってのは、たいていそんなもんだ」
その言葉は、奇妙な重さを持って獣人の中に残った。
重いのに、形がない。
――生きている。
初めて、その言葉が意味を持とうとした瞬間だった。
獣人は旅人の背中を見送りながら、胸の星に触れる。
なぜか、そこが少しだけ温かく感じられた。
答えは、まだない。
だが、問いは生まれた。
その朝、獣人は初めて、
「生きるとは何か」を考え始めた。
夜が終われば光が来る。それだけの現象だ。喜びも、期待もない。
目を開けると、天井のひび割れが視界に入る。
何度も見たはずの光景なのに、そこに「慣れ」はなかった。
慣れる理由がなかったからだ。
彼は自分がここにいる理由を知らない。
この部屋に住んでいるのか、ただ留まっているだけなのかもわからない。
だが、体は勝手に起き上がる。
生きるという行為は、意思とは無関係に続いていた。
窓から差し込む光は弱く、世界を薄く塗り替えるだけだった。
色はあるはずなのに、名前を持たない色。
獣人の毛並みも、指先も、その中に溶けている。
胸に手を当てる。
星の形の印が、そこにある。
触れるたび、奇妙な感覚が走る。
痛みではない。懐かしさでもない。
ただ「欠けている」という感覚。
それが何を意味するのか、彼は考えない。
考えようとすると、思考は途中で途切れ、言葉になる前に霧散する。
まるで、最初から答えを持たない問いのように。
獣人は立ち上がり、外へ出た。
街は、朝を受け入れる準備ができていなかった。
人々は忙しなく動きながらも、どこか疲れた目をしている。
誰も彼を気に留めない。
獣人もまた、誰かを気に留める理由を持たなかった。
歩く。
理由も目的もなく。
そのとき、背後から声が聞こえた。
「おい、あんた」
振り返る。
年老いた旅人が、杖に体重を預けながら立っていた。
「……生きてる顔をしてないな」
獣人は返事をしなかった。
返す言葉を、持っていなかった。
旅人はしばらく彼を眺め、それから小さく笑った。
「まあいい。生きてるってのは、たいていそんなもんだ」
その言葉は、奇妙な重さを持って獣人の中に残った。
重いのに、形がない。
――生きている。
初めて、その言葉が意味を持とうとした瞬間だった。
獣人は旅人の背中を見送りながら、胸の星に触れる。
なぜか、そこが少しだけ温かく感じられた。
答えは、まだない。
だが、問いは生まれた。
その朝、獣人は初めて、
「生きるとは何か」を考え始めた。
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