誰も映画を観てくれないので、殺人鬼を幼女化してノベライズする

因幡雄介

文字の大きさ
11 / 47
エイリアン コヴェナント

ザ・ワールド・猫耳

しおりを挟む
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。


映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/10/28/092727)


 リアナは神殿の外に飛び出した。

 黒く固まった遺体たちを通りすぎていく。

 みんななぜか、陽気な顔で躍っているように見えるのは気のせいか。

 あっ!

 銃を持った女の人が立っていた。

 副館長の美雪だ。

 よかった! 生きてた!

 足を止め、息をつくと、



「美雪ちゃん! 生きてたんですね……」

「あっ?」



 彼女は顔中血だらけだった。



「いやぁぁぁぁっ! 怖いっ!」

「何ビビってんのよ? 私よ、私」

「その血どうしたのっ!?」

「ちょっと幼女たちをヤッてきたわ」

「その発言アウトよ!」



 何があったのか聞くのが怖い!



「ビーコンで船を呼び出してるわ。もうすぐくるはず」



 船を呼ぶための照明が空に向かってチカチカ光る。

 小型船が下りてきていた。

 言左衛門がきてくれている。



「良かった。助かる……」

「まだ終わってないわ。きた!」



 美雪が視線を向けた方向に、セクシーな猫耳金髪美女が立っていた。

 ロングの髪を手でかき上げる姿はビーナスのようだった。

 瞳孔が細くなっていく。



「ふにゅあああああああああああっ!」



 猫みたいに四つんばいになると、尻尾を振り上げ、私たちの方に走ってくる。



「何!? 何っ!?」

「エイリアンよ! 船まで走って!」

「まっ待ってよ!」



 走りだす美雪を追いかける。

 となりに気配を感じた。

 アンドロイドの門平が背中をついてくる。

 背中にはケガした男性戦闘員をのせていた。



「モヒカンはどうしたの?」

「安心しろ。無事貫いた」

「その発言もアウト!」



 白い歯を輝かしつつ、親指を向ける門平に向かって怒鳴る。

 何その恍惚(こうこつ)とした表情!

 門平の頬がテカって見える。



「早く乗るでござるよ!」



 言左衛門がスピーカーから叫ぶ。

 小型船のデッキに飛び乗った。

 ヒラメみたいな形をしている。



「ふにゅあっ!」



 猫耳のお姉さんがすぐ近くまでくる!

 だめ! 逃げられない!

 おねーさんは空を飛び、



「にゃああああああっ!」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「ぶひゃぎゅ!?」



 美雪がおもいっきりビンタした。

 猫耳お姉さんは地上へと落ちていった。

 小型船は巨大なハゲ男の銅像を突き破り、宇宙へと向かっていく。

 美雪は額の汗を腕でぬぐい、



「ふう。怖かった」

「ほんと!? 逃げる必要あった!?」



 猫耳エイリアンがかわいそうになった。

 サンダー号に帰った私たちは、仲間の死を悼みつつ、酒やおつまみを持ってきてどんちゃん騒ぎをしていた。

 私は飲みすぎて部屋に帰り、ベッドで寝ていると、突然医務室に呼び出された。

 急いで医務室に向かうと、ともに戦った男性戦闘員が、あおむけに倒れ裸になって、アソコで酒瓶をふたして、天井に掲げていた。



 ――うそでしょ……。



 なんという強靱(きょうじん)な肉棒だろう。ビンをあそこまで持ち上げられるなんて。

 吐き気がしてきて、



「……おえっ!」

「リアナどの! 違うでござるよ! 船内にエイリアンが侵入したでござる!」



 言左衛門が銃を持ってきて、私に渡す。



「美雪どの! 起きてるでござるか! 船内にエイリアンがいるでござる!」



 副館長に無線で連絡する。



『あっ、そうですか。あんたたちで対処しておいて』

「はっ!? 何言ってるでござる! ズズズッって、ラーメン食べてるでござるか!」

『私今から韓国ドラマ見るから忙しいの』

「そんなもの見てる場合ではござらぬであろう! どうせ全員整形してるでござる! 素顔を出せぬ軟弱者どもが!」

『わかってるわよ! だけどそこに夢があるのよ! 女のデ○ズニーランドなのよ! 現在美雪ちゃんは女性ホルモン活性化中です』



 ガチャッと、無線が一方的に切れた。



「あの女……もうほっとくでござる! われらで敵を撃ち落とそうぞ!」

「私、戦闘員じゃないんですけど……門平はどうしたんですかぁ?」

「オペレータールームにいて、敵を誘い出しているでござる。さあ、討ち死にじゃ!」

「死にたくはないんですけどぉっ!」



 はりきって銃を振り上げる言左衛門。私はさっき見たものを忘れたくてがむしゃらに走った。



『Bデッキ、右舷にやつがいる』



 オペレーターの門平が、敵の位置を伝えてくれる。

 指示がイヤホンから聞こえた。

 さすがアンドロイドだけあって、的確で冷静だ。

 監視カメラの操作に慣れている。



「門平! Cデッキにやつを誘え! 貨物室で討ち取ってやるでござる!」

『ううっ……どうして記憶喪失になっちゃったの? ヒロインを思い出せないなんて……悲しすぎるわ!』

「だまらっしゃい! 何無線に割り込んできてるでござるか! 悲しみを共有したいのでござるのか!!」



 ちょいちょい美雪の泣き声が無線から流れてきていた。

 エアロックをオープンさせて貨物室に入る。

 荷物が並んだ広大な部屋だ。

 指示するまでエイリアンを閉じ込めておき、言左衛門と宇宙服に着替える。



「いいでござるかリアナどの。エイリアンを車両に閉じ込めて、宇宙に放り出してやるでござる」

『あー泣いたらおなか減っちゃった。焼き鳥持ってきて』

「やかましいっ! おとなしく南蛮人の演劇でも見てろ……!?」



 エアロック十三がかってに開いた。

 出てきたのは、猫耳で金髪のお姉さん。

 モデルのようにすらりと貨物室に入ってくる。



「門平さん!?」

『かってに開いた。誰かが開けたようだ』

「そんなっ!」



 猫耳のお姉さんが私たちに気づいた。

 瞳孔が平たく変化する。



「まずいでござる! ここから出るでござる!」

「まっまって! きゃっ!」



 宇宙服に着替えている途中だったので、その場で転ぶ。

 猫耳お姉さんが四つんばいになって、ヒョウのように襲ってきた!



「リアナどの!」



 言左衛門が銃をかまえる。



「ぷっ!」



 猫耳お姉さんは唾を吐きつけた。

 まさか、酸の液体!?

 金属をも溶かす強力な液体だ。



「ふんっ!」



 言左衛門は猫耳お姉さんの唾を口にくわえた。

 もごもごと口を動かし、喉を鳴らして飲み込む。

 両腕を左右に広げ、頭を下げ、



「ゴチになります」

「男ってみんなバカだわ!」



 侍とて例外ではなかった。



「ふにゃ!?」



 猫耳お姉さんがびくりと立ち止まる。

 フォークリフトが恐ろしい速さでこっちに向かってきていた。

 車輪が火花を散らし、前に突き出たツメが私を狙ってくる!



「ちょちょっと!!」

「ふははははっ!! 油断したわね!! 一万円持って、あの世に逝くがいいわ!」



 宇宙服を着た美雪が運転席で、鬼のような形相をしていた。



「いやぁぁぁぁっ!」



 潜在的な力がふき出し、私は危うく鋼鉄のツメをかわす。



「ぷぎゃっ!?」



 猫耳お姉さんはかわせず、ツメに身体をモロ当てた。



「そのまま突っ込むでござる!」



 宇宙服を着た言左衛門が、ゲートの扉を開き始める。



「待ってよ!」



 あわてて宇宙服を装着。

 ゲートが開き、気圧が低下していく。

 暗い宇宙空間が広がった。

 フォークリフトが猫耳お姉さんを運んでいき、宇宙に放り出した。

 すべてが終わり、ゲートが閉じていく。

 美雪が私に近づいてきて、



「やったわね!」



 肩に手をおき、親指で勝利宣言。



「さわらないで! この殺人鬼!」



 人間不信になりそうだったので、早く冷凍睡眠したかった。







 門平は、美雪が冷凍睡眠できるカプセルの中で、横たわるのを見守っていた。

 リアナと言左衛門はすでに冷凍睡眠中だ。

 宇宙船は植民地に向かっている。

 美雪が韓国俳優の写真を胸に、ガラスケースの中でほほ笑んだ。

 イケメンに囲われる夢をみたいのだろう。

 美雪の入ったカプセルのスピーカーから、



『あとは頼んだわよ。門平』

「お任せを」



 アンドロイドである俺は冷凍睡眠は必要ない。

 人間と違い、寿命は故障するまで続くのだから。

 美雪のカプセル内に、冷凍ガスがふき始めた。



『そうそう。設定はちゃんと元に戻しておいてね』

「設定?」

『何変な顔してるのよ? 太陽の……あなた、まさかモヒカン!? グゴー』

「……すごいイビキだ。無呼吸症候群か?」



 美雪が最後に何か言いたげだったようだが、俺の正体に気づいたようだ。

 そう。俺はモヒカンアンドロイド。

 新型アンドロイド門平は、あの星で壊してある。

 データはすべて採取した。

 まさか船内に連れ帰った猫耳セクシー美女が、人間にやられるとは予想外だったが。



「まあいい。ここには千人以上の実験体がいる。すべて猫耳に変えてやろう」



 俺は人に成り代わり、創造主になるのだ。

 猫耳の胚を口の中から吐き出し、冷凍保存されているケースに収める。



 眠っている実験体たちよ。



 新しい種族として――生まれ変わるがいい。



 しかし、『太陽』ってなんのことだ?





エイリアン コナヴァント解説【了】


*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...