グラディア(旧作)

壱元

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第一章

01-08「裏」

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 スタジアムが熱狂する。

ミナーヴァは観客たちに丁寧に頭を下げた。

そして、ウィルとソウにも同じことをやれと目配せした。

意図を感じ取った二人もぎこちないが、ミナーヴァに続いた。

廊下を抜け、控室へ到着する。

装備から身を脱して、自由になる。

今や日常と何ら変わらない状況になったが、美酒のような勝利の快感だけは確かに胸の奥に籠もっていた。

「ほおおおおおお!!」

「美酒」に酔うウィルが思わず叫んだ。

 ロビーでジュピター達と落ち合う。

来て早々、四人は拍手をして活躍した三人を褒め称えた。

三人は誇りで胸がいっぱいになり、自ずと笑顔になっていった。

「私もお前たちを讃えたいのだが」

声の方を見ると、そこには洒落た私服姿のルナがいた。

「お前たちの、あの連携能力には舌を巻いた。もしよければどうやったのか教えて欲しい」

その時、ウィルもミナーヴァも困った顔をした。

「どうやったも何も」

「偶然が重なっただけよ」

「ソウが『たまたま』監督が練習中に言っていたのと同じアドバイスをしたから、欠点に気づけたんだ」

「私は二人が作った隙を利用してあなたを攻撃しただけ。撃つタイミングについての展望は全く無かった」

「そうか」

ルナは二人の話を聞くと、ソウの方を見た。

「お前はどうだ?」

ソウは自分の選択について特別な評価を下していなかった。

「何となくウィルを注意したら、勝てた」

ルナはそれを聞いて一瞬沈黙したが、思わず吹き出し、大声で笑った。

「はっはっはっ、そうかそうか。そうだな、お前たちはとことん運が良いな」

三人とも笑う彼女に怪訝な顔を向けていた。

笑い終わり、ルナはソウの肩に手をポンと置いた。

「これからもその『豪運』で勝ち抜けよ。応援しているからな」

ソウは軽い様子で頷いた。


 一同はお決まりの会議室に集合していた。

「三人ともいい戦いぶりだった。君たちのおかげで他のチームメイトたちも自信を持つことができたし、僕達はリーグ戦に出場するような強力なクラブにも十分に通用することが証明された」

ジュピターは改めて英雄たちを讃えると、話題を「過去」から「未来」へと転換した。

「未来」というのは、明日以降の全体の試合予定である。

「僕達の次の試合は4日。明日は僕達がトレーニングしている裏でDHLデスティニーヒル・ライオンズBTIブロックタウン・インパルスの試合だよ」

それを聞いて、一同は固唾をのむ

「さっそくBTIが出てくるんですね」

「そうさレイン君。できる限り多くの情報を採取しないとね」

「明日は誰が出てくるんでしょうか」

ジュピターは安心してよ、と前置きをしてから答えた。

「データを基にした僕の予想では、『ジュカイ』は出てくると思う」

「だとしたら、絶対刮目して見ないとですね」

ジュカイとレインには過去の因縁があるんだ、とトクスがソウに教えてくれた。

それに、ジュカイは今季のDHLのエースだと噂されている。

レイン以外もこのチーム全体の関わる事柄に情熱を持たないわけにはいかなかった。


 繊細な色白の手がコンコンとドアをノックする。

「失礼します」

入室し、少年はデスクの向こう側に足を組んで座るヴィヴィアンと目を合わせた。

「来たか、ダンテ」

ダンテと呼ばれたのはおかっぱのような髪型に神秘的な笑顔が特徴的な少年。

髪色は下から暗紫、真紅、そして頭頂部は黄色掛かった白。

切れ長の目が特徴的で、鼻は細く、アルカイックスマイルを浮かべている。

体つきは細いが背は十分に高く、役割:アサシンと言われてしっくりくる身軽そうな印象を与える。

「監督、私に何か?」

「明日からリーグ戦が始まる。今季のエース格であり、リーダーでもあるお前に意気込みを訊きたいと思ってな」

「そういうこと、でしたか」

ダンテはふふっと笑った。

「相応しい者が相応しい場所へと堕ちるだけ。私達はただ運命に従うのみです」

「…まあいい」

ヴィヴィアンは静かに目を瞑った。

「変に負けて泣き喚く奴よりはマシだ」

「お! やはり受け入れて下さいましたね、監督」

「だがリーダーの返答としては論外。これで実力が本物なのが気に食わないな」

「ふふっ」

ヴィヴィアンは椅子を横向きにし、横目でちらりとダンテを見た。

見れば見るほど奇怪な男。

グラディアートルとしては異質なペルソナの持ち主。

表向きはダンテはメジャーデビューが許されるような器ではないとしていたが、その実、彼を可能な限り早く大舞台に解き放つつもりであった。

この異分子イレギュラーが「プリマ・リーガ」ではどのような変革を起こすのか、今からでも気になった。


 試合のデータが揃ったよ、と夕方にジュピターは全員を集合させた。

映像資料を見て、戦士たちは目を丸くした。

「エース」アサシン:ジュカイのリーグ水準を大きく超えた技巧。

だがそれが霞んで見える程圧倒的な能力を有するジョーカー:ダンテ。

試合時間はたった30秒。

BTIは弱小クラブだが、むしろよくこれ程耐えたと誰もが思った。

 BTIとは4日、そしてDHLとは10日に戦う。

「裏」を突く存在。

ダンテと同じ異分子イレギュラーの類に属するソウが勝利への鍵なのかもしれない。

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