グラディア(旧作)

壱元

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第一章

01-11「毒」

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 ミナーヴァが引き絞った矢を放つ。

茨と花弁が散り、飛燕のように飛び出す。

 デッドリー・ソーン。

雪峰は咄嗟にしゃがみ込んで間一髪で回避した。

「その技…やはりそうか。うちらの所にも一人『同類』がいるぜ」

雪峰が右手の銃で素早く三連射する。

 トリプルショット。

ミナーヴァは一瞬で決断し、右に駆ける。

一つが弓の骨組みに当たって弾かれた。

再び弓を引き、敵を見据える。

敵は距離を詰めながら乱射してくる。

身体を反らしたが右肩と左膝に被弾する。

 ミナーヴァ、バリア計79%喪失。

態勢を維持したまま、弓を突き出し、矢を発射する。

雪峰は銃を下ろして横に避けた。

しかし途中で矢の軌道がまたも湾曲し、さらに長く走らされる。

(もう少し走れば回避できる。そしたらまた俺の番だ)

そう思って相手を見た時、矢が腹に突き刺さった。

バリアが崩壊した。

ーー雪峰、リタイア。

「ふう」

激戦を終えたミナーヴァが息をつく。

(何よ、一人でもめちゃめちゃ厄介じゃない! 兄弟で残っていたらと考えると恐ろしいわ!)

ふと床に目をやると、そこには奇妙なものがあった。

黄緑色に発光する液体のようなもの。

(何よこれ)

ミナーヴァは自分の脳内に備え付けられた知識の本棚の内を探った。

答えは案外、「新本」のコーナーで見つかった。

「電子毒」。

正式名称:「電子障壁形成阻害液」。

触れるだけでもバリアを蝕む物質。


 トクスが深く腰を落として構える。

(さあ、行くぞ!)

彼は地面を蹴って地面を滑るかのように速く走り出した。

敵の右側、武器のある方へと向かう。

「何が狙いだ? 狂ったか?」

コブラが剣を持ち上げた。

すると手前で方向転換し、今度は左側に向かう。

コブラは今度は身体を回転させず、盾を持つ手に力を込めた。

移動してきたトクスと、パールが同一線上に並ぶ。

(馬鹿め)

盾を少し後ろに引く。

(それがお前さんの仲間を痛めつけることになるんだよ!)

盾を勢いよく押し出し、トクスを彼の攻撃と同時に派手に吹っ飛ばす。

 シールドバッシュ。

トクスは空中でバランスを崩し、背中からパールとぶつかる。

「きゃっ」

「うわっ」

二人共転倒しながら離れ、地面に転がる。

 トクス、バリア計71%喪失。

 パール、バリア:24%喪失。

コブラはズシズシと音を立てて急接近してくる。

「パール、君は左へ走れ。僕は右に行く」

「わかりました!」

二人は急いで立ち上がり、反対方向に全力疾走した。

コブラの刺突を回避し、左右から挟む形になる。

「中々いいじゃねえか。そんだけ『仲良し』なら、俺らの入団テストぐらいは受かるだろうぜ。どうだい、2軍として移籍してこねえか?」

「生憎だね。もうしばらくはここに居るつもりなんだ」

その時、コブラの盾を一本の矢が鋭く撃ち抜く。

「良い決断よ、トクス」

敵を見据え、再び矢をつがえる。

「ここに居なさい。私達がメジャーリーグで優勝するまで!」

「勿論さ」

回答を聞くと、ミナーヴァはまた一撃放った。

矢はまたまた軌道を変化させる。

「ああ、そうだ」

コブラが矢を軽々と盾で弾く。

「お前さんたち全員で移籍したらどうだ? オーナーは安く買える選手をいつも欲しがっているからな!」

ミナーヴァの表情が変わる。

「今なんて? 安い?」

「ああ、確かにそう言った。カローラGCは誰が見たって小粒ちゃんだ。運営は明らかに無能だし、もう既に限界は見えている…。そんな雑魚クラブ相手なら、交渉次第では破格で契約ができるからな」

父親の顔が思い浮かぶ。

どこか抜けているが、いつも夢を追い続け、一生懸命で、誰にでも優しい、そんなーー

「殺す!」

ミナーヴァは再び矢をつがえた。

全力で引き絞る。

弦は鋭角を作り、先端に光の茨が集まる。

(普通、デフェンダーの盾に攻撃すれば、バリアは削れる。でも、コブラの盾は重厚すぎる。普通の攻撃ならかすり傷すら与えられない。)

「なら、これで!」

矢が放たれる。

コブラは左右を警戒しつつ、防御態勢に入った。

矢が盾の中心を捉える。

花びらが舞い、茨が渦巻く。

 デッドリー・ソーン。

刹那、白い光が視界を覆った。

1秒も立たないうちに視界は開け、敵の姿が認識できた。

敵のバリアに…矢は傷を付けられなかった。

「残念だったな」

「ちっ」

ミナーヴァは不愉快そうに舌打ちした。

(でも、これで少しでも時間が稼げたわ…)

「ん?」

頭部装備に表示されたバリア残量値にコブラは目を疑った。

バリア:計79%喪失。

状態異常:「電子毒」!


 トクスは敵の右側に回り込み、コブラは凄まじい攻撃を放った。

その時、トクスは攻撃を武器の刀身で受けた。

刀身には「電子毒」が付着し、それが持ち主の手を離れてしまった時「毒」は派手に床に撒き散らされた。

飛沫は遠くミナーヴァの足元へも届いた。

トクスは武器を受け取ると即時にその発想力で驚奇の一手を捻出した。

映像資料で見る限り、コブラは「シールドバッシュ」を多用していた。

彼にとっての右側から襲い来る連中に対してはことさらに。

(前後からの勢いが合わされば、一瞬はバリアに穴が開く。毒を注入できる!)

迫りくる大盾に自らの刺突攻撃を合わせ、狙い通りに敵に「電子毒」の付与は出来た。


 (少量だから消耗させるのには時間がかかる。ナイス時間稼ぎ、ミナーヴァ!)

「なるほどな」

コブラは憎悪を込めて笑顔を浮かべた。

「やるじゃねえか。MLKの時といい、最近はよく追い詰められるな…」

そう言うと、彼はパールの方に向けた盾に両手を添えた。

「あんなの見せられちゃ、燃えちまうじゃねえか。なあ、俺の奇策も見てくれよ」

次の瞬間、なんと盾が独立して高速で前方に飛び出しパールに迫る。

「ま、待って下さい!」

パールは吹き飛ばされ、思わず杖を手放してしまう。

コブラはそれを空中で掴むやいなや自らに「解毒」を施す

「トクス、敵の死角へ行きなさい! あたしが撃つからその間に!」

トクスはハッとして応答した。

「了解!」

ミナーヴァは弓を急速に引く。

同時に敵から見て左側にいるトクスが、敵の後方へ移動する。

コブラは突然ミナーヴァの方に走り寄ってくる。

その疾さといったらまるで弾丸のようであった。

ミナーヴァは冷静に距離を取りながら、弦を限界まで引っ張った。

矢が神聖な光を纏う。

(最大の防衛手段を手放した今なら…)

敵が距離にして2m地点まで迫った時、ミナーヴァはまとわり付く鋭い茨とともに放った。

 至近距離デッドリー・ソーン!

必中だと確信した。

だが、敵は信じがたい程巧みに、そして迅速に、身体を捻った。

瞬きよりずっと迅くミナーヴァの頭を突き刺す。

 コブラ・ブロウ。

「嘘っ」

ミナーヴァの障壁は無情にもバラバラに粉砕され、彼女はベンチに送られた。

ーーミナーヴァ、リタイア。

突如、背後からトクスが襲いかかる。

コブラは振り向き様に杖で殴りつけた。

側頭部に強い衝撃を与える。

 トクス、バリア計87%喪失。

一瞬怯んだトクスに、再び杖をぶつける。

今度はトクスは短剣を使って見事にいなし、一歩踏み込んでその喉を狙って突きを繰り出した。

だが敵は上半身を少しだけ後方に反らし、僅かに出っ張った胸部装甲の表面に当てて凌いだ。

コブラ、バリア:計88%喪失。

「毒コンビ」は互いに地面を蹴って離れた。

仕切り直しになったその瞬間、コブラは斜めに走り出した。

そこには盾の下敷きになって、もがくことさえ出来ないパールが居た。

その目に絶望の火が宿る。

「へへっ」

コブラは空中に浮かんだと思うと、盾の上に自分の巨体を叩きつけた。

パールのバリアは風船のように圧破されてしまった。

ーーパール、次いでリタイア。

「よっこせっと!」

コブラは盾を起こし、頑丈な持ち手を右手で掴んだ。

そして、トクスを視界の中央に捉える。

「一騎打ちになってしまったよ…どうしてくれるんだい?」

「へへ、狙ってやったことだぜ。お互いに満身創痍だ。いっそこうすりゃ清々しい」

トクスは腰を低くして武器を構えた。

コブラも盾を身体に引き寄せ、守りを固める。

「行くよ」

トクスが正面から挑む。

コブラは盾を少し引いた。

(シールドバッシュ? いや…)

盾は手を離れて独りでに敵へと向かっていく。

(手を添えなくてもできるのかよ!?)

トクスは紙一重で回避した。

すると、視界の端で杖が動いた。

「シャッ!」

上半身を横に倒して回避する。

(これもブラフ…狙いは次にある!)

切先が引っ込み、想像を絶する速度で飛び出す。

 シャープ・トキシック。

(敵の攻撃は強力だ。なら…)

トクスは持てる力の全てを動員してナイフを突き出した。

剣先近くの側面を捉えた。

衝撃で剣先が弾かれ、コブラ本人の胸に突き刺さる。

(反動も凄まじいはず!)

コブラ、バリア:計99%喪失。状態異常:「電子毒」。

トクスは宙返りして素早く距離を取った。

「やられたぜ」

真顔でそう呟くと、コブラは消失した。

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