魔王メーカー

壱元

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第二章 前編

第三十一話

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 私は地面に放った「火球パシア」の爆風で、ラーラは「影渡りヌイコーゼ」で、「大火球ビシア」から身を逃れた。

私の着地点が盛り上がり、何本もの先が尖った細長い岩石が突き出した。

丁度昨日仕入れた知識だ。「地」属性の基礎魔法の一つ、「崖剣ギリアサーヴ」だ。

私は自らの纏った勢いを殺せぬまま、それらに突っ込んだ。

だが、結界が展開されて事なきを得た。

反撃の「火球」を「崖剣使い」に見舞うと、向こうは軌道をよく見て身を躱し、一歩下がろうと足を上げた。

その瞬間、私は師匠直伝の「凍棘レーセシャンガ」を発動した。

地面から突き出した氷の棘たちによって敵は脚部を複雑に貫かれ、そのまま固定された。

罠に掛かった敵は、激痛に悶え苦しみながら、私の「火球」を頭部に受けて絶命した。

「お見事です」

ラーラは余裕げに立っていた。

彼女の眼前には頭部を欠いている以外、一切無傷の死体が転がっていた。

「すぐ終わったのに、助けてくれなかったんですか?」

「貴女なら一人でも何とかなりそうでしたので。でも、”腕輪”に助けられましたね」

袖を捲って見てみると、先の事故で腕輪中の液体魔力の約五分の一が消費されていた。

きっとこれからもこれに助けられるだろうが、どのくらい保つだろうか。

「おい、こっちも片付いたぞ」

返り血まみれのバセリアが手を振った。

第一波は乗り越えた。

私達はちょっとした会議の末、三手に別れることにした。

一人きりで達人二人と同じ課題に挑む私の不安を感じ取ってか、ラーラは私の肩に手を載せ、「貴女なら大丈夫」と力強く言ってくれた。

 覚悟を決めて薄暗い廊下を進んでいくと、部屋への入口の所で杖を携えて佇む人影が見えた。

向こうもこちらを視認したらしく緊張感を帯びながら杖を構え、その先端に赤色の魔法陣を展開した。

反応する間もなく魔法が放たれ、結界が出現した。

魔法の火力・射程を強化する「杖」という道具、魔法陣の色、そして小規模かつ電光石火…攻撃の正体は割り出された。

高度「火」属性基礎魔法:「炎銃ブレアヴォイト」。

私は壁に隠れ、反撃の準備をした。

約二十秒の充填の末、壁から飛び出した私は、コースを悟られないように、不規則に、ジグザグに走って接近した。

そして攻撃を紙一重で回避し、適当な距離で「光槍グシャルボーレアス」を敵に突き刺した。

なんとか進路を切り拓いた。

 辿り着いた先はそれなりに大きい広間で、何本もの柱が立っていた。

まるで待ち構えていたかのように、赤髪の少年が椅子の上にどっしり座っていた。

 

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