魔王メーカー

壱元

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第二章 前編

第三十三話 前編

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 グレアは走り回りながら「火球パシア」を二発放った。

相手は笑みを浮かべながら同じように「火球」を繰り出し、攻撃を相殺した。

「ははっ」

少年は楽しげに接近し、少女に向かって掌を突き出した。

次の瞬間、何本もの微細な光の束が溢れ出し、対象を切り裂く。

絹糸セーア」。

その由来は字のとおりである。

グレアは急いで柱に隠れ、額に冷や汗を浮かべながら腕輪を見た。

残量はもう半分を切っている。

グレアは胸中で突沸する焦燥を鎮め、「光槍グシャルボーレアス」を準備しながら飛び出した。

敵の姿を瞬時に捕捉し、力強く突き刺す。

次の瞬間、敵の前に広がったのは、グレアにとっては既視感のある防護結界。

「ふふ、お揃いの腕輪だね」

敵は奇妙にも、手首を返す動作を行った。

突然グレアの身体が浮き上がり、天井へと引っ張られた。

しかしながら、この感覚には親しみがあった。

グレアは近付いてくる天井に向かって「火球」を放ったが、吸収された。

グレアは「新たな地面に落下」し、叩きつけられた。

結界が展開される。

「驚いた? うちで開発した非 元素属性の『重力を操る』魔法、『死天メメンエスク』だよ」

その時、再び天地が逆転し、グレアはなすがまま床に叩きつけられた。

再び広く、大きく、結界が展開される。

「天井は魔法を吸収する。でも床はしない。君はこれまでで床については知っていただろうに、迷いは命取りだね」


 ラーラは教祖と互角の戦いを繰り広げていた。

ラーラが「ローゼン」を使うと、ホーバは「影渡りヌイコーゼ」で回避するか「腕輪」で受け止め、男が「喰」を使った場合もラーラは同様に対応する。

消費した魔力も同程度であった。

勝負が動いたのは、ラーラが横に一歩足を出した時であった。

シークレットブーツの中で足をくじき、ラーラはバランスを崩して転倒した。

男はその隙を見逃さず、温存しておいた教団最大火力をぶつけた。

ラーラの眼前に、巨大な漆黒の花弁が開き、迫りくる。

彼女は咄嗟の判断で後方に「影渡り」したが、腕輪の魔力を全て持って行かれた上、「距離を抹消し」て移動した先にあった壁に生身で激突した。

全身を強く打ち、ラーラは吐血した。


 バセリアが地面を連続して蹴り、速度を増していく。

部屋の隅から隅へ駆け抜け、全身に光を纏い、雷閃の如く敵に激突する。

蒼風流:迅雷突。

常人ならば反応さえ出来ない、神速に見紛う程の一撃。

だがこの剣士には届かない。

二本の剣で完璧に受け止められ、威力を地面に流された。

タイミング、位置、威力、全てが読まれていた。

「泰然流」名物「柳」と「理識」の交差。

バセリアはダメ押しとばかりに足を止めての連撃を行った。

これも全て防がれた。

すかさず距離を取ろうとすると、敵は遂に反撃に出た。

身体を回転させながら、相手の身体を素早く二本の剣で切り裂く「餓狼」。

バセリアは脇腹と胸を鎧ごと破壊された。



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