魔王メーカー

壱元

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第二章 後編

第二十二話

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    グレア様がジャサー城を出発してから最初の三日間、私は午前中に魔法の自主練習、午後は自室で腕輪・ネックレスの解析と再現、という日々を送っていました。

「キリカナム教団」から持ち出した魔法のうち、私が習得出来る分は全て自在に使えるようになりました。

一方で、腕輪・ネックレスに掛かっている魔法は、解析こそ易しかったものの、再現にはかなり骨が折れました。

そもそも純粋な魔力そのものを固体として発現させる「結界魔法」も、生物の五感に特定の波長の魔力をピンポイントで合わせる「催眠魔法」もかなり高度な魔法ですから、習得には時間を要するのが当然なのですが。

こんなそんな高等魔法を備えた魔具を大量生産出来るのは何者なのか…興味は尽きませんが、きっと人智を超えた魔術師か、あるいは魔物の血族で、遠くの地に住んでいるのでしょう。

    四日目以降の午前は図書館で調べ物をしていました。

基本的には魔王出現から討伐までの歴史や、有名な魔物についての知識を深めていました。


    六日目のことでした。

本棚から目当ての一冊を取り出した時、横から声を掛けられました。

「近頃はやけに調べ物に精を出されているようですね、『秘密のラーラ』様?」

声の主はあの胡散臭い執事セイン

私は身構えました。というのも、入口からここに歩いてきて本を引き出すまで、周りにはこの男の気配が微塵も感じられなかったのです。

それに、この男は私の進路を塞ぐように立っています。

「へえ、『魔王伝』ですか。やっぱり同じ魔族として気になるんですか?」

妙に妖しい微笑みを浮かべながら、彼はいかにも何気ない様子で切り出しました。

「ええ。まあ、そんな所です」

「でもまさか憧憬を抱いているわけじゃないですよね?」

「まさか。『魔王』は人類の仇ですよ。私は魔物の血も流れているのですが、心は人間の方を向いています」

「それはそれは失礼いたしました」

彼はわざとらしく礼をし、目を細めました。

「『閣下の方を』ではなく、『人間の方を』向いているんですね。他の’’ネックレス’’を付けている方々よりも一段と志がお高いようで」

「…」

私は十分に動揺していましたが、彼はそれを知ってか知らずか、追い打ちをかけました。

「魔法の習得も順調だったようで、『目標』があるのでしたら、叶えるには十分な様ですね」

こいつはどこまで知っている…と、たじろいだ私は思わず本を落としました。

「おっと」

セインは私の本を拾い上げ、手袋はめた手で埃を払うと、

「どうぞ。お気を付けて」と渡して来ました。

私は本に触れたその瞬間から紫色の表紙が触手のようにうねり立ち、私の手を呑み込んでしまうのではないかとさえ思いましたが、なるべく動揺を隠して、

「私としたことが。感謝いたします」

と受け取り、

「いえいえ」

彼も丁寧に答え、立ち上がりました。そして、

「私、邪魔をしてしまっているようですね。失礼しました」と徐ろに道を開けました。

私が「構いませんよ」と警戒しつつもその横を通ると、

「あまり変なことはしない方がいいですよ」と、フード越しに耳打ちしました。


    不覚でした。

その後の読書には集中出来ませんでした。

作戦については再度考え直すほかなく、結局残り四日間は自室に篭もりきりになりまし

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