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第二章 後編
第二十七話
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作戦決行日。
午前中、平常通り過ごしたグレア達は、午後になると一旦集合した後に別れた。
ラーラは図書館へ、私は作業部屋へ。
「失礼します」
ドアをノックし、狼狽しながら書斎に転がり込む。
「どうしたんだい?」
羽根ペンを置き、訝しげな表情をする辺境伯に対し、グレアは食い気味に返答する。
「ラーラが、ラーラが行方不明です!」
同時刻、ラーラは図書館に忍び込むと、幾冊かの書籍を取り出し、「火」属性の魔法を苦手ながら用いて着火した。
「火」が「炎」となり、十分に大きくなってから図書館中にぶちまける。
そこかしこから黒煙と炎が上がり、他の無垢な利用者たちもやがて異変に気づく。
だが、叫んで逃げ惑う間もなく、その首を一瞬出現した黒い斬撃が通過し、切断する。
「キリカナム教団」から得た「闇」属性魔法の至宝、「星滅刀」である。
床と内装とが異なる赤色に染まり、やがて入口に黒色の群衆が押し寄せる。
ラーラは颯爽と歩き出し、すれ違いざまに魔のネックレスを付けている者一人一人の首を刎ねていった。
返り血を、発生させた「闇」に吸収させながら進撃する彼女の行く先は上階の書斎であった。
グレアによると、午後ラーラは集合場所に現れず、不審に思って城内を探しても影も形も見当たらないという。
「近衛兵」の命令違反に該当するということで、何かしらの懲罰をも求めるという。
「分かった。捜し出して相応しい処分を与えよう」
「お願いいたします」
辺境伯は立ち上がろうとした。その時、ドアを開け放って近衛兵の一人が部屋に突撃した。
「大変です、閣下! 『秘密のラーラ』が図書館を炎上させた上、多数を殺傷し、こちらに向かって居ます!」
「なんだって」
同時刻、偶然巡回していた「近衛兵」の一人と「秘密のラーラ」は廊下にて対峙していた。
「…まさか、お前はそんな事を仕出かす奴だったなんてな」
長柄刀を構えながら、彼は敵をよく観察した。
血痕一つない、宵闇のように黒いローブに身を包み、ゆったりとこちらに接近する。
だが、溢れ出る殺意も相まって、かえって恐ろしく、まるで夢幻から現れた死神のように彼の目に映った。
かつての同僚の魔法の射程は無限ではないことを、彼は知っていた。
「影渡り」も「闇針」も「喰」も、一定の領域にさえ入らなければ脅威ではない。
それに、彼の第一優先事項は彼自身の手による撃破ではなかった。
「なあ、悩みがあんなら話聞くぜ、『秘密のラーラ』さんよ」
十分に長い廊下を、軽口を挟みながら、敵との間に常に一定の距離を保つようにしつつ、後ろ向きに歩いていく。
そして、廊下全体の三分の一の辺りに達した所で、突如として足を止め、ラーラに突撃する。
ラーラは身構えるが、その時、後方から数名の一般兵が予兆なく現れ、全身全霊で迫り来る。
グレアは伯爵を守護するように依頼され、遂に書斎に二人きりになった。
不安げな伯爵の視線が逸れた瞬間、グレアは緊張しながら両手に魔力を溜め始めた。だがその時、僅かに髪が揺れ、グレアは戦慄した。
「やっぱりそうでした」
背後に立つ影が耳元で囁く。
午前中、平常通り過ごしたグレア達は、午後になると一旦集合した後に別れた。
ラーラは図書館へ、私は作業部屋へ。
「失礼します」
ドアをノックし、狼狽しながら書斎に転がり込む。
「どうしたんだい?」
羽根ペンを置き、訝しげな表情をする辺境伯に対し、グレアは食い気味に返答する。
「ラーラが、ラーラが行方不明です!」
同時刻、ラーラは図書館に忍び込むと、幾冊かの書籍を取り出し、「火」属性の魔法を苦手ながら用いて着火した。
「火」が「炎」となり、十分に大きくなってから図書館中にぶちまける。
そこかしこから黒煙と炎が上がり、他の無垢な利用者たちもやがて異変に気づく。
だが、叫んで逃げ惑う間もなく、その首を一瞬出現した黒い斬撃が通過し、切断する。
「キリカナム教団」から得た「闇」属性魔法の至宝、「星滅刀」である。
床と内装とが異なる赤色に染まり、やがて入口に黒色の群衆が押し寄せる。
ラーラは颯爽と歩き出し、すれ違いざまに魔のネックレスを付けている者一人一人の首を刎ねていった。
返り血を、発生させた「闇」に吸収させながら進撃する彼女の行く先は上階の書斎であった。
グレアによると、午後ラーラは集合場所に現れず、不審に思って城内を探しても影も形も見当たらないという。
「近衛兵」の命令違反に該当するということで、何かしらの懲罰をも求めるという。
「分かった。捜し出して相応しい処分を与えよう」
「お願いいたします」
辺境伯は立ち上がろうとした。その時、ドアを開け放って近衛兵の一人が部屋に突撃した。
「大変です、閣下! 『秘密のラーラ』が図書館を炎上させた上、多数を殺傷し、こちらに向かって居ます!」
「なんだって」
同時刻、偶然巡回していた「近衛兵」の一人と「秘密のラーラ」は廊下にて対峙していた。
「…まさか、お前はそんな事を仕出かす奴だったなんてな」
長柄刀を構えながら、彼は敵をよく観察した。
血痕一つない、宵闇のように黒いローブに身を包み、ゆったりとこちらに接近する。
だが、溢れ出る殺意も相まって、かえって恐ろしく、まるで夢幻から現れた死神のように彼の目に映った。
かつての同僚の魔法の射程は無限ではないことを、彼は知っていた。
「影渡り」も「闇針」も「喰」も、一定の領域にさえ入らなければ脅威ではない。
それに、彼の第一優先事項は彼自身の手による撃破ではなかった。
「なあ、悩みがあんなら話聞くぜ、『秘密のラーラ』さんよ」
十分に長い廊下を、軽口を挟みながら、敵との間に常に一定の距離を保つようにしつつ、後ろ向きに歩いていく。
そして、廊下全体の三分の一の辺りに達した所で、突如として足を止め、ラーラに突撃する。
ラーラは身構えるが、その時、後方から数名の一般兵が予兆なく現れ、全身全霊で迫り来る。
グレアは伯爵を守護するように依頼され、遂に書斎に二人きりになった。
不安げな伯爵の視線が逸れた瞬間、グレアは緊張しながら両手に魔力を溜め始めた。だがその時、僅かに髪が揺れ、グレアは戦慄した。
「やっぱりそうでした」
背後に立つ影が耳元で囁く。
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