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第三章
第七話
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グレアの誕生祝いと告白。その前々日、クリロン城にて。
辺境伯は書斎にて、茶を楽しみ、穏やかな気持ちで書類に目を通していた。
その時、突如としてドアが開き、家臣が転がり込んできた。
何事か、と目を丸くしつつも次の一言を待ち、心を引き締める伯爵に対し、彼は荒い息とともに語り始めた。
「何だと!? それは確かなのだな!?」
「はい! 確かにそう存じております」
部下の威勢良い返事に感化されたように勢いよく立ち上がると、辺境伯は自ら城中を奔走して方方の者に戦支度を命じた。
腹心たちが自分と代わるように慌ただしく走り始めてから、彼は晴れ晴れしい表情を浮かべ、空を仰いだ。
「父上、どうか見ていてください。念願を叶える時が来たのです」
昼を過ぎるころ、歩兵、弓兵、騎士、魔法使いにカタパルトまで揃えた計一万人の軍勢は、東に向かって出発した。
グレアの誕生祝い後の夜、ガナン最大の酒場の地下には、合計九パーティ、四十人の冒険者が集まっていた。
彼らは全員「銅級」、「銀級」、「金級」のいずれかであり、「貴金属同盟」という率直な名を持った”冒険者同盟”の会員であった。
冒険者たちは「定例会」の為に一堂に会した訳だが、既にその会は予定を三時間超過しながらも、未だに開始に至っていなかった。
同盟の要である「銀級」の四人パーティ:「四重奏」の到着が遅れているのだ。
責任感が強く祭り好きな彼らが今回のように遅刻することは前例がなく、同様の町を彼らより遅く発ったはずの「銅級」パーティは何事もなく会に出席しているということもあって、同胞たちの間には不安が漂っていた。
「どう見るかね、若旦那」
擦り切れた茶色の革の外套と三角帽子、黒装束と白い顎髭という恰好をした背の高い老兵、「金級」の「星狩りのジールバード」が、酒をあおりながらパーティリーダーにふと尋ねる。
「凡な回答しかできないが、まあ、『旅の禍』に出会ったと考えるのが当然だろう」
そう答えて彼もグラスを傾けた。
だが、中に入っているのはジュースだった。
ボサボサの黒髪に三白眼、一切の艶のない真っ黒な短ローブと軽鎧という姿が特徴的である小柄な少年。
齢十五にして「金級」パーティ「夜明けの旅団」の代表を務める、人呼んで「奇跡のマギク」。
マギクは喉を十分に潤してから言った。
「けど、僕はそう割り切らず、敢えて調べてみたっていいと思う。冒険者の死というものは珍しくないが、ここら一帯に『銀級』以上相当の魔物が出現することは考えにくいからね。…しかも、キリカの能力なら調査は容易い」
「じゃあ、決まりだな」
ジールバードが挙手すると、群衆の中から三人が現れた。
新方針はメンバー全員に共有された。
「明日から行動を開始する」
メンバーは頷いた。
三十分後、盟主である「銀級」シャールマの決定により結局「定例会」は規模を縮小して開催され、その後緩やかに解散した。
辺境伯は書斎にて、茶を楽しみ、穏やかな気持ちで書類に目を通していた。
その時、突如としてドアが開き、家臣が転がり込んできた。
何事か、と目を丸くしつつも次の一言を待ち、心を引き締める伯爵に対し、彼は荒い息とともに語り始めた。
「何だと!? それは確かなのだな!?」
「はい! 確かにそう存じております」
部下の威勢良い返事に感化されたように勢いよく立ち上がると、辺境伯は自ら城中を奔走して方方の者に戦支度を命じた。
腹心たちが自分と代わるように慌ただしく走り始めてから、彼は晴れ晴れしい表情を浮かべ、空を仰いだ。
「父上、どうか見ていてください。念願を叶える時が来たのです」
昼を過ぎるころ、歩兵、弓兵、騎士、魔法使いにカタパルトまで揃えた計一万人の軍勢は、東に向かって出発した。
グレアの誕生祝い後の夜、ガナン最大の酒場の地下には、合計九パーティ、四十人の冒険者が集まっていた。
彼らは全員「銅級」、「銀級」、「金級」のいずれかであり、「貴金属同盟」という率直な名を持った”冒険者同盟”の会員であった。
冒険者たちは「定例会」の為に一堂に会した訳だが、既にその会は予定を三時間超過しながらも、未だに開始に至っていなかった。
同盟の要である「銀級」の四人パーティ:「四重奏」の到着が遅れているのだ。
責任感が強く祭り好きな彼らが今回のように遅刻することは前例がなく、同様の町を彼らより遅く発ったはずの「銅級」パーティは何事もなく会に出席しているということもあって、同胞たちの間には不安が漂っていた。
「どう見るかね、若旦那」
擦り切れた茶色の革の外套と三角帽子、黒装束と白い顎髭という恰好をした背の高い老兵、「金級」の「星狩りのジールバード」が、酒をあおりながらパーティリーダーにふと尋ねる。
「凡な回答しかできないが、まあ、『旅の禍』に出会ったと考えるのが当然だろう」
そう答えて彼もグラスを傾けた。
だが、中に入っているのはジュースだった。
ボサボサの黒髪に三白眼、一切の艶のない真っ黒な短ローブと軽鎧という姿が特徴的である小柄な少年。
齢十五にして「金級」パーティ「夜明けの旅団」の代表を務める、人呼んで「奇跡のマギク」。
マギクは喉を十分に潤してから言った。
「けど、僕はそう割り切らず、敢えて調べてみたっていいと思う。冒険者の死というものは珍しくないが、ここら一帯に『銀級』以上相当の魔物が出現することは考えにくいからね。…しかも、キリカの能力なら調査は容易い」
「じゃあ、決まりだな」
ジールバードが挙手すると、群衆の中から三人が現れた。
新方針はメンバー全員に共有された。
「明日から行動を開始する」
メンバーは頷いた。
三十分後、盟主である「銀級」シャールマの決定により結局「定例会」は規模を縮小して開催され、その後緩やかに解散した。
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