魔王メーカー

壱元

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第四章

第二話

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 翌朝、一足早く目覚め、寝袋を出た私は、ラーラの目元が冷たくなっているのに気付いた。

胸が痛くなった。

そうだ、一人にしてしまってはいけなかった。この子は一人だと悪夢にうなされるのだ。

野宿の時は私の横に寝かせてもらえるよう頼もう。

ああ、しばらくうなされるところを見なかったから忘れていた。

しばらく見なかったから。

しばらく、見なかった…

デザ村に居た時、彼女はいつも別のベッドで寝ていた。

距離が離れているとはいえ私の隣のベッドだったから、毎朝と毎夜、起床時と就寝時、少なからず無意識の内に視界の内に入っていたはずだったのに、どうして「しばらく見なかった」のだろう。

私が隣で寝ているから? いや、では日中私が居ない時間帯はどうなる? 世話の為に入って来たトロールからもそんな話は一切聞かなかった。

…もしかしたら今の眠りとあの時の「昏睡」は違うものなのかもしれない。

現に昨日ラーラは一時的とはいえ目を覚まし、私を守ってくれた。

ようやくラーラが帰って来たのかもしれない。

「はあ」

思わず白い息が漏れる。

安堵、希望、歓喜…煌びやかな感情たちが湧きあがり、溢れ出して、今度は私の目元が冷たくなった。

 

 支度をして、馬車に乗り込んだ。

最終目的地はケンダル王国の都、ロー・シテン。

それは私とラーラの旅のゴールでもあったが、ルートに関しては今回の方がやや南だ。

「僕たちが最初に目指すのは魔法都市『べレムジア』だ。僕たち『貴金属同盟』の得意先である『レセモ商会』の支部があるんだ。そこに寄りたくてね」

マギクが言った。

馬車は勢いよく走り、日はあっという間に沈んでしまった。

中継地点である小さな町で宿を取り、馬と車を預けて荷物を下ろした。

「さてと」

ジールバードはニッと笑った。

「飲み行くぞおら!」

一同が盛り上がる。そんな中、私は突然後ろから袋を被せられた。

生地が薄く、辛うじて周辺を透かして見ることは出来るが、顔の輪郭が隠れ、他人からは誰だかわからないだろう。

戸惑う私に、後ろからリレラが言った。

「お前たちの正体が知れ渡ったら、酒場が大騒ぎになるからね。ごめん、我慢して欲しい」

私と、リレラに背負われたラーラは酒場に居る時は顔を覆っておくという条件付きで同行を許された。

とはいっても、向こうが私達を宿に置いておきたくないというのが本音なようだった。


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