魔王メーカー

壱元

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第四章

第二十六話

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 リレラは敵と対峙していた。

ウロの声に反応して回避姿勢を取り、完全な直撃は免れたとはいえ、身体を突き抜ける衝撃波と落下によるダメージは、恐らく常人であれば耐えられなかっただろう。

それでも彼女は立ち上がった。その耐久力と技術に感心していたところだった。

「待てリレラ。お前、手足にひびが入ってるだろ」

「…ばれちゃったか」

ジールバードは一流の狙撃手。目がいいのだろう。

見抜かれたリレラは少しだけ照れくさそうだった。

「それじゃいかん。…ウロ」

「言われなくたって分かってるっつーの」

ウロは右手に盾、そして左手に…装飾の付いた、中心に行くにつれて色が黒くなっている大きな円盤を持って飛び出した。

「オレの『道具』は回数に限りがあんだ。時間は稼ぐ。ちびっ子、ヒールはお前に頼んだわ」

刹那、敵が腕を振り下ろす。

ウロは姿勢を崩されながらも盾を使ってそれを受け流し、続く攻撃も同じように無効化した。

私は確認の意味を込めてリーダー:マギクの方を見た。

彼は静かに頷いた。

了承は得た。

一つ深呼吸をしてから馬車を飛び出し、リレラのもとに馳せ参じた。

その身体に触れ、魔力を注ぎ込む。

黄金色の光が溢れ、剣士の傷を癒していく。

その時、敵が大きく口を開け、私達の方に向けて火球を吐き出した。

絶体絶命かと思われたが、ウロが素早く滑り込み、左手の「円盤」を火球に向けた。

火球はどんどん「円盤」の中心部に吸い込まれて小さくなり、遂には私達に届く前に消失してしまった。

お株を奪われ、流石の「怪物」もその赤い目を丸くした。

「あのクソ蛇野郎だけじゃ情報が不十分だった。でも嬉しいことに同じ『鱗』持ちがもう一匹現れてきてくれたもんでなぁ。おかげで構造を解析した上この『鏡』でコピることまで出来ちまったぜ」

「鏡」の中心には数個の「鏡鱗」が浮き上がっていた。

「『合わせ鏡』ってとこか? まあいい。とにかくセルフで首絞めありがとな、バーカ!」

ウロの横をリレラがすり抜け、そのまま敵の腕を切り刻む。

敵は動揺し、遂に一歩、二歩と後退した。

それを見逃さなかったジールバードがその右目を貫き、最適のタイミングで最高の隙を作り出す。

リレラの全身がまた魔力に包まれ、振り下ろす豪快な一撃が動きの止まった両腕を綺麗に両断した。

着地したリレラは追撃を繰り出そうと再び地面を蹴り上げたが、相手はさらに後退しながら口を大きく開ける。

リレラは動きを中断し、ウロがカバーに入る。

目には目を、歯には歯を、「鏡鱗」には「鏡鱗」を。「必殺技」は再び無効化された。

さらに、そのあんぐりと開いて露わになった口腔内にマギクの「火」属性魔法が放たれ、爆発を起こす。

その首は骨が露わになり、辛うじて身体にくっついているのみになった。

風が吹けば揺れ、まるで斬ってくれとでも言うかのような状態に。

リレラは天高く舞い上がり、そのまま鋭い一撃を見舞った。

再生途中の腕を使って頭を覆う。

だがそれも気休めにさえならない。

一秒程度の時間稼ぎの末、その雁首は地面に落とされた。

 リレラはすっかり脱力し、ふわりと落下し、そのまま偶然にも敵の頭の上に降り立った。

その時、意外なことが起こった。

サクッと音を立てて、敵の頭部が崩れてしまったのだ。

リレラの無事を祝うでもなく、勝利の喜びを分かち合うでもなく、今までの異常な耐久性を考えれば明らかに道理の通らない現象に、一同はただただ困惑した。

「脆すぎね? 中身入ってんのかよ」

ウロがそう軽口を叩くと、

「確かめてみたらどうだ?」とジールバードも乗っかった。

ウロは半ば困惑しつつも悪い笑みを浮かべ、面白がりながらその欠片を持ち上げた。

しかし、現れたその光景に一同は驚愕した。

冗談が、まさかの事実だったのだ。

そこには脳もない。頭蓋もない。神経もない。

ただ空っぽだったのだ。

直後、死んだはずの敵の身体が動き出す。

全員が背筋を凍らせながら、素早く戦闘態勢を取る。

だが、私達はその後すぐに、さらなる戦慄に襲われた。

何か、中程度の重さのものが地面に落ちる音がした。

見ると、ラーラが馬車の外に投げ出されていた。

敵の身体から長く太いものが飛び出し…人間の身体を、テンをぐちゃぐちゃと咀嚼していた。

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