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魔帝動乱編 白銀の少女と伝説の聖剣

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自称魔王の後継者

サタン・ジオ・インザークによって


広場に突如出現した一匹の竜。


六天魔皇の銅像を踏み潰し

鳴り響く咆哮は街中の建物の硝子を破壊する。

その拍子に巨大な石像がルミナに飛んでいったが


何故かルミナに当たった石像の方が粉々になっており

ルミナには傷一つない。




「ルミナ…大丈夫だった!?」


「はい!当たったけど全然痛くなかったです。」


「そ…そうなのね…よかったわ。」



「シャル姉~!」

「ルイン…!大丈夫だった?」

「うん、皆も無事だけど…あれなに?」



ドラゴンは全身が体毛に覆われていて暗灰色の毛並みをしている。

身体のあちこちがゾンビみたいに腐り果てて
ボロボロと崩れていて不気味な様をみせている。


「な……なんなんだ、あいつは!」


声が背後から聞こえ振りかえるとバランが呆然として呟いていた。


「ドラゴン……なの?」

皆も同様にドラゴンの毛並みを見て
不気味な様を感じているのか慄然となって呟いた。



屍腐竜は気性も荒く広場の周辺の建物を尻尾でなぎ払っている。



「!?まずい、まだ住人が避難しているのに……。

このままじゃ……。」


そう思った時だった。

屍腐竜はドラゴンブレスのように破滅の魔法を放ち

帝国の半分を消し飛ばした。

その破滅の波動から私達を庇い護った父は気を失った。

破滅の波動の余波が私達に飛んできたが

ルインが破滅の波動を破壊してくれた。





「……あんなやつに…どうやって…勝てっていうのよ…!」

「ねえ、シャル姉?アレ私が壊していい?」



「…………」

ルミナは呆然と立ち尽くした私の前に立ち


帝国全体にも効果が及ぶ広大な魔力、精密な魔力操作で

まるで夜空に浮かぶ星座のような魔法陣を描き

死骸も残らず死亡してしまったはずの一千万の人々を蘇らせる。


全知全能の世界の記録アカシックレコードを改竄し書き換えるという

シャルロットの創世の力と同格の現実改竄能力であり

世界の法則や理から完全に逸脱している魔法を行使する。


星命流転アストラル





星命流転の光に反応した屍敗竜の腹部から

無数の触手が生えてルインとシャルロットとルミナを拘束し



灰色のドラゴンの腹の避け目の中に
あっさりとルミナは呑みこまれた。



「ギャアアーーーッ!!!!」



「ルミナッッッーーーーーー!!!」




モルドレッドの叫びは虚しく木霊するだけだった。









「う………ここ……は………いったい?」


ここは、屍腐竜の体内……のようです。 


どうにか脱出を試みて体内から氷結魔法や

名も無き魔法ゼラークを放つがビクともしない。 


彷徨っていると一緒に呑み込まれた

ルインちゃんとシャルロットさんを見つけました。


「シャルロット…さんっ!?」


ルインちゃんとシャルロットさんは服が溶かされて

触手に体中を好き勝手にされてしまっています。

気絶しているのか呼び掛けても一切反応しません。


触手は次の獲物を私に定めて襲い掛かってくる。

触手は私の体を拘束すると溶解液を散布して服だけを溶かして

私を一糸纏わぬ、産まれたままの姿に変えてしまいます。

触手の粘液には媚薬のような成分があり

触手に触れられた体がピクピクと痙攣し

だんだん、体温が上がって火照っていくのが分かる。


「い……や……やめて……くだ……さ………い………。」

無数の触手にもみくちゃにされてしまい

私は脳を焼かれる程のあまりの快楽に耐えきれず

お漏らししてしまい、気を失ってしまいました。 







「お目覚めかしら、眠り姫?」

 

妖艶な声音で囁かれ、ルミナは覚醒した。

慌てて周囲を見渡す。

相変わらず、私は服を着ていない。

恥ずかし過ぎるけど、そんなことを気にしている場合ではないのです。

 

「ここは・・・・・?」

 

不思議な部屋だった。白と黒
正方形のタイルで埋め尽くされた床。

四方の壁際には作りかけの石膏像が散在している。

不安定な人体。不完全な鳥獣。城塞や神殿のミニチュアや


ルミナが見たこともない乗り物の模型もあった。


起き上がったルミナの前方には、幼い少女。




アンティーク調の椅子にゆったりと腰掛けている。モノクロームで統一された内装において、


絢爛たる純白のドレスが異様に映えている。



 

「ここは創世神域。そして、私は、アルビオン」

 

「アルビオン・・・・・?」

 

「個体名シャルロット・レガリアの私の本体

未熟なあなたたちを導くための人格。

・・・・・とでも言えば良いのかしらね?」



「あ……あのっ!シャルロット…さん」
 

「どうすれば…モルドレッドさんを……

お姉ちゃんを………助けられますか?」



「安心して、私の言う通りにすれば

あの子を助けられるという結果まで

運命を導いてあげられるわ。」




黒い魔力の粒子がシャルロットさんの影から浮かび

黒い粒子が魔力の塊となって剣の形を象っていき

剣の形をした闇…のような影となりました。




「さあ、後はこの剣に向かって、この呪文を唱えるだけでいいよ」



「は…はい、頑張りますっ!」



「顕現せよ……光の恩寵を受けし剣よ……!

神々の血肉を喰らい黒雲の天を絶ち

星雲を支配し星命を廻転させる星空よ…!

すべての闇を祓う力を、我に与えよ……!!

その銘は……聖剣エクス=ヴォルディスノアール!」



 
「ルミナス・メモティック・フォールンナイトが命じるっ!!!」



ルミナは脳裏に浮かんだ呪文を無我夢中に唱える



「アルメーテ、ゴルハールペート・・・・・エスパルダール!」


ただの影でしかなかった剣に実体が宿り



「ブラフオネーラ、ファルダーヘ……エスカルセーラ・・!!!」




聖剣の基盤となる聖遺物から聖なる光を帯びたものを抽出する。

 


「ブフエータ、オンブレーラ……

アンテブラーゾ…………

マノーボラ・・・・・」


聖なる光が宿った影の剣は闇色に輝いていき……

 

「キホーテ・・・・・グアルダ・・・・・ 

グレーバ・・・・・

エスカルペ・・・・・・・・・・」


白と黒の魔力粒子が影の剣に収束し混ざり合う

これで、最後の仕上げだ。 

その聖剣を現実に顕現させる開放の言葉を紡ぐ。

 

「―――エスポラーソ・アブソリュート!」







モルドレッドは必死に屍腐竜の攻撃や触手を避けていたが


瓦礫に足を取られ転げてしまい

触手で手足を拘束されて遥か上空に吊り上げられる。

そして、屍腐竜の口から紫雷の魔力粒子が溢れてきて

紫雷の光弾がモルドレッドに向けて放たれる。


その時、ルミナの声が頭に響くように聞こえた。




「お姉ちゃん…受け取ってくださいっ!」



屍腐竜の腹から眩い光が溢れ
紫電の光弾が直撃する寸前にモルドレッドの体を包み込んだ。


モルドレッドの髪がルミナのような白銀に染まり


右目が真祖の吸血鬼の真紅の瞳に変わり

左目が雪の結晶のような透き通った白銀の瞳へ染まり


世界中の魔素の色を書き換えて

塗り替える程の膨大な魔力を放出し

天地を紅と白銀の魔力に塗り変える。




天に手を掲げると光り輝く星空と星座の魔法陣
そして白銀と黒紫の魔法陣を展開し
脳裏に浮かんだ呪文を唱える。



「顕現せよ……光の恩寵を受けし剣よ……!

神々の血肉を喰らい黒雲の天を絶ち

星雲を支配し星命を廻転させる星空よ…!

すべての闇を祓う力を、我に与えよ……!!

その銘は……聖剣エクス=ヴォルディスノアール!」


現れたのは一振りの光輝く闇色の剣だった。

光の属性を帯びた、闇色の聖なる神滅の剣。



モルドレッドは手に取った
聖魔神剣エクス・ヴォルディスノアールを軽々と振り上げると跳躍した。


自らも落下しつつドラゴンの頭部から腹部にかけて

光り輝く刀身を一直線に振り下ろした。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

まさしく一刀両断。

 

刀身は白銀の光芒と化し、ドラゴンの肉を斬り、骨を断つ。


猛威を振るったドラゴンの体躯は

まるで紙のように、あっけなく引き裂かれた。

聖魔神剣エクス・ヴォルディスノアールの一撃を受け

肉体が滅んでいきやがて完全に消滅する屍腐竜。

完膚なきまでに破壊された肉体は、ついには灰色の粒子と化して

さらさらと風に流されていった。



その粒子が光輝き、屍腐竜がいた黒雲の中心に収束すると

帝国を覆い尽くしている黒雲が晴れていき

空を夕焼けのように金色の光が照らしている。

 


 

「きゃああああああっ!」

 

その消滅とともに拘束されていたルミナが空中に投げ出された。

 

「ルミナ!」

 

モルドレッドは自身の持つ残った全ての魔力を使い加速し

ルミナの華奢な身体を抱きしめる。


「お姉ちゃん……!」

「よかった……無事で」

モルドレッドが笑顔で呟いた

その時、聖魔神剣エクス・ヴォルディスノアールは

光の粒子となって霧散し、消え去ってしまった。


私達はゆっくりと市街地に降り立った。

シャルロットの異能によって

私達の溶かされた服や街は元通りになった。








魔帝国を襲った脅威はこうして終結した。

 

駆けつけた騎士団の調査により事件はひとまずの終結を迎える。


調査隊による屍腐竜事件の調査も始まる。

王族の慰問なども行なわれる事になるが

それは私達には関係のない出来事だ。

 
  

屍腐竜の被害は凄まじく帝国は甚大な被害を受けた。

死者こそいないが類を見ないほどの甚大な被害だった。

死者が出なかったのは奇跡だ。




街中にはこんな噂が後になり流れる。

邪竜を打ち倒し帝国を救った救世主様がいたのだと。



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