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・第1集【英雄の世紀の幕開け~世紀と世界を超え、人の限界を超えた者達が現れ始めた~】
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「知的遊戯として犯罪を行うのは退廃的だ、【犯罪王】」
「差別と侵略に抗したいなら正道を行くべきだったね、【犯罪皇帝】」
「「最も、我々の同類は今後も現れるだろうな」」
(残された経緯が不明の、【犯罪王】と【犯罪皇帝】の対話を録音したエディソン式蓄音筒の記録)
スーパーヒーロー、正義の味方、即ち超人英雄。それは、文明化・産業化された現代に蘇った神話や伝説の英雄のような存在です。近代化によってその存在が露になりやすくなったのか、あるいは近代化によって阻害されつつある人間個人そのものがそれに抗い進化した結果なのか、陰謀によるものか、それらの複合か。
そんな超人英雄達と、それに敵対する者の呼称としてのスーパーヴィランや怪人に彩られた、英雄の世紀と呼ばれる二十世紀以前にも、あたかも近代化による人間の矮小化を拒むように、しかし同時に近代的な知識を駆使した幾人かの近代英雄が存在していました。
代表的な人物は数々の難事件を解決したイギリスの【名探偵】、逆に様々な状況で不可能と思われた盗みを成功させたフランスの【怪盗】、支配者の横暴に剣で立ち向かったメキシコの仮面剣士【剣傑】、北米の仮面ガンマン【孤警】、そして日本において維新の英傑を助けた黒覆面の【天狗】です。
(白黒写真の中でパイプを吹かす鹿打ち帽を被った男)
(【怪盗】の被害を告げる当時の新聞記事)
(今に残される当時彼等が使用した武器や仮面、覆面)
(新撰組隊士の日記の中にある【天狗】に関する記述)
【怪盗】はどちらかと言えばヴィラン的でしたが、愛国心から時に国家の為に働き、義侠心から時に民衆に奉仕した故に、言わば後の非合法ヒーローのように民衆からは受け止められていました。
これは反政府的であった【剣傑】や、古い政府と戦い新しい政府を作る側に立っていた【天狗】も類似した所があり、法に触れてはいたものの法に超越する道義や倫理には従っている、政府の腐敗と闘っていると見なされ、【怪盗】よりも更に強く正義の側の存在として認知されていました。
法と秩序を守る【名探偵】と悪政悪法を覆す【剣傑】、そしてその狭間に立つ【天狗】と更に際どい位置に居る【怪盗】、後の世においてヒーローの合法と非合法二つの潮流は、この時既に生まれていたのです。
この時代の完全なヴィランと言えたのは、【名探偵】のライバルだった欧州犯罪組織のドン【犯罪王】、そして西欧諸国による侵略と植民地化に対する抵抗としての側面を持って生まれた、反西欧と反撃としての西欧社会に対する犯罪を説いた【犯罪皇帝】でした。
【犯罪王】と【犯罪皇帝】は激しく争い、そしてまた独自の犯罪コネクションを持っていた【怪盗】もその争いに介入。その中で【犯罪王】が【名探偵】の手により打倒され……最終的には【怪盗】の組織はフランスにとっての良き時代の終わりに、【犯罪皇帝】の組織はアジアにおける独立運動と戦争の中へ、それぞれ埋没していきました。
それを更に後押ししたのが、第一次世界大戦とその前に起きた【火星人】襲来事件です。
(当時の慌ただしく印刷された新聞に書かれた数々のおどろおどろしい五本腕の蛸のような火星人とそれを象った巨大な火星人型機動兵器、そしてその尖兵として戦う緑の皮膚を持つ四本腕の獣人達の絵、そして戦後に撮影された火星人、火星獣人戦奴の死体や宇宙船・火星人型機動兵器の写真達)
火星からの宇宙船落着と内部に入っていた光波熱線兵器と毒ガスで武装した五肢軟体生物並びにそれを象った巨大火星人型機動兵器、そして緑色四腕巨獣人戦奴による侵略。
(火星人型機動兵器を挽き潰すようにして擱座し諸共に残骸となった軍艦の写真)
戦中における英軍艦サンダークラップの抗戦と米旧南軍大尉ジョナサン・カーター氏の火星人緑色四腕巨獣人戦奴を扇動しての反乱抵抗運動などもありましたが、アメリカ合衆国と大英帝国を主に襲ったこの災害で両国は一方的に打撃を受け、結果的に病による【火星人】全滅が無ければ地球全土が侵略を許していた可能性は大だったでしょう。
戦後、米国二大発明家テスラー氏による火星兵器研究が行われ、米国二大発明家エディソン氏による火星宇宙船の自動機能解析と細菌を満載した宇宙船を逆送する攻撃によってか、現代においても詳細は定かではありませんがその後【火星人】は出現しませんでしたが、力及ばずという意識は強く。
(火星目がけて自動操縦で飛翔していく火星人宇宙船の記録映像。画面端にエディソン氏の姿)
【天狗】はあくまで維新期限定の英雄でしたし、【名探偵】や【怪傑】の英雄性も、機関銃と大砲と塹壕と泥濘、そして米英が操作法をある程度解析し戦争に投入した残存した火星人型機動兵器が人間的な英雄性を否定する第一次世界大戦の後は、何時しか忘れ去られていきます。
そして圧倒的な科学文明による破壊は人間性・英雄性を、僅かに戦闘機パイロットの騎士道一騎打ちじみた空中戦を残して否定していきました。
(塹壕を悠々と跨ぎ越え、跨ぎ御越えた塹壕を光波熱線兵器と毒ガスで蹂躙する火星人型機動兵器)
殊に火星人型機動兵器は、メンテナンスが出来なかった事もありこの第一次世界大戦のみの使用に留まり大戦末期は戦車に道を譲りましたが、一方的な迄に同盟国軍側を蹂躙しました。更に、操縦マニュアルが有る訳でもなく手探りの勘と経験で運転されていた火星人型機動兵器はしばしば暴走し、民間人の住む集落を光波熱線兵器や毒ガスで蹂躙殺戮する事もしばしばでした。
「恐怖だ、恐怖しかない。あれが、火星人か」
「火星人の兵器を人間が人間に使うなんて。前線は総崩れだ。どころか、私達が避難した村すら、火星人型機動兵器の攻撃で焼け落ちていた」
「英米の連中は火星人に魂を売った悪魔だ。いいや、火星人に乗っ取られ、火星人に操られているのかもしれない」
「故郷の村が、火星人兵器の毒ガスで全滅した。英米の火星人達を、必ずや殺してやると誓った」
(同盟軍、主に独逸軍の将兵の手記)
時代はより強力な、超人を必要としていたのです。
「彼等は正義を為した。為したと、我々は思った。そして、我々はそれを天意だと信じてしまった」
(第二次世界大戦後、この時代を後から振り返った兵士の証言)
超人英雄の世紀の事実上の始まりは、第二次世界大戦が迫り来る1930年代に始まります。
時に1930年。かつて欧州を席巻した【怪盗】を思わせる大盗賊【変装怪人】と【少年少女探偵団】が相争っていた日本に怪人【蝙蝠髑髏】が姿を現します。
(当時のニュース映画。蝙蝠の羽と黒い髑髏の貌を持つ超人が列車を覆し警官隊を蹴散らし破壊活動に及び、百貨店の屋上から空に飛び立つ)
【蝙蝠髑髏】はそれまでの怪盗と探偵の知恵の争い等とは比べ物にならない、軍隊でも阻止出来ない力を持って暴れ回りました。連続して大火を起こすだけでは無く超能力で火山噴火すら起こした【蝙蝠髑髏】。
辛うじて【蝙蝠髑髏】が発掘中だった孤島の遺跡から現れた事を突き止めた【変装怪人】が倒れ遺跡の謎を解き明かした【少年少女探偵団】も犠牲にならんとした正にその時、超人【金鵄髑髏】が現れ、伊豆大地震を引き越そうとした【蝙蝠髑髏】を打倒したのです。
(当時のニュース映画。民衆の歓呼を受ける、鵄の翼を象ったマントを羽織り鳶の頭を象った兜を被り黄金髑髏の貌を持つ超人の姿)
当時高天原遺跡と呼称されたレ・ムー・リア遺跡から出現したこの古代超人【金鵄髑髏】は、大日本帝国を自己が所属していたレ・ムー・リアの後継国家であると判断。大日本帝国に帰属しその守護者たる事を宣言し、英雄として全国民の歓呼と信頼を受け、それによる大日本帝国での超古代遺跡研究の一大流行を巻き起こします。
次いでドイツにて、1927年から活動を開始していた民族社会主義独逸人民党の超人党首【調停者】が1933年総統授権法を樹立する事で独裁体制を確立、ヴァイマル共和国体制の終焉と独逸総統帝国の樹立を宣言しました。
(民族社会主義独逸人民党の記録映像。黒いボディスーツの上から黒いマントを纏った金髪碧眼で十字星型の特徴的な瞳孔を持つ類い希な美少年が、自身の瞳孔を象った星十字の紋章を刻んだ垂れ幕を背景に演説をしている)
「ボク達とボク達の党によって、荒廃から国民の団結を取り戻すのだ! 君達の心はボクの心に聞こえている。ボク達は一つだ。一つの民族。一つの国家。ドイツ! ボク達を分断する貧困と敗戦と混乱と犯罪と腐敗と暴力の中から、それを強いる世界から! 破壊された社会を、政治的混乱と退廃への沈滞から、取り戻す! 君達が、ボク達が、皆が、本来祖先達が護り続けてきた伝統あるしかるべき地位と真っ当な生活を! 抑圧と略奪を破壊する事を皆が望んでいる事をボクは知っている!」
「今や、この数週間の内に他国と結んで敗戦以来ドイツを支配してきた勢力を排除し、君達の心が望んだ革命により国家権力を国民的指導部に取り戻した。投票の日は、ドイツ民族がボク達の心の繋がりに現実の同意を与えた日だったのだ!」
「ボク達にはかつてないほど強固な絆、決然たる同意、厳しい団結、無条件の結びつき、互いの責任と権威の尊重がある。そうした精神の絆が経済的その他の生活がもたらす想像上・現実上のあらゆる相違をも越え、ボク達の民族共同体を強化することができる。 これによってのみ、市民や農民や労働者やその他すべての階級から再び一つの民族を育成することができるのだ!」
【調停者】は人造超人であり、民族社会主義人民党の基となった科学結社【メトロポリス】が作り出した存在です。
第一次世界大戦に敗北した後の独逸は協商国に課せられた賠償金の苛斂誅求と領土割譲、恐慌、政治的混乱、【吸血鬼】や【人狼】や【屠殺者】といった怪人達が跳梁跋扈し、第一次世界大戦における戦況の転換点になった英米による火星人兵器の使用による屈辱から来る英米並びに国際資本家は火星人に操られているとする火星人陰謀論も加わって混乱と貧困の極みにありました。
【メトロポリス】の指導者カリガリ博士は【調停者】に【吸血鬼】ら怪人を一掃させ、【調停者】は政治を立て直せるのは超人だけだと語り、超人的な頭脳と魅力と弁論とカリスマ性と読心や予知などの超能力で瞬く間に民衆・民兵を掌握しました。
(人肉食者だった殺人鬼が変異した怪物、現代で言う所の先天変異超人か幽妖超人だったと思しき【人狼】【吸血鬼】【屠殺者】達のうち、【人狼】を打倒する【調停者の映像。たまたま近所で映画を撮影中だったレイ・リーフェンシュタイン監督が撮影。民族社会主義独逸人民党のプロパガンダに広く用いられたものだが、希少な戦前の超人戦の記録でもある)
【調停者】はその超能力で国民全てと繋がる事が出来、国民全ての心を汲み、その望み・欲望を遍く反映した政治を行い、国民一人一人に語りかける事が出来ました。究極の民意であり、究極の理解者である存在に、独逸国民は熱狂せずにはいられませんでした。これこそ新しい時代の政治だと信じられたのです。
また【メトロポリス】は【調停者】の元に集められた民兵集団【突撃隊】を実験台として超人の生産に乗り出し、それとは別系統の人造人間【山椒魚】を量産、再軍備に乗り出します。
(武装し行進する、のっぺりした黒い皮膚の上から軍服を纏う奇怪な半人半両生類の兵士達の姿)
……国民一人一人の願いを叶えるという事は、無制限の欲望の肯定であり、それを叶える為には限界を超えた経済政策が必要であり、急激に立ち直りゆくと見えていた独逸経済は実質上綱渡りの自転車経営で、それと独逸国民の先の敗戦という屈辱に対する報復感情を思えば、その行く先は必然的に戦争でした。国民が【調停者】にそれを望み、【調停者】と民族社会主義人民党・【メトロポリス】は、それに超人英雄の力で答えようとしました。
そして風雲急を告げる1938年、アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランドにおいて、現地住民ジョー・シーゲル、宇宙人としての本名ディ・シィが異星超人としての力を使い、火星人事件の際にテスラ博士が製造するも起動せずに眠っていた人造超人ヒューマンライトが落雷で暴走したのを止めた事を契機にスーパーヒーロー【アメイジングマン】として活動を開始。
(デイリー・スター紙が報じる、鳥よりも飛行機よりも速く高く空を飛ぶ、青いマント・グローブ・ブーツに赤いボディスーツ姿の屈強なで善良そうで端正な青年の姿。胸元には下に切れ込みが入った細長い白色の二等辺三角形、Aの字に近く見えるシィ家の家紋)
……後に、独裁者として語るを憚る存在となった【調停者】を除いて「最初に活動した【金鵄髑髏】と最初にスーパーヒーローと呼ばれたアメイジングマン、どちらが最初の超人英雄か」と日米間で論争になり、自らをスーパーヒーローの本場と自認し金鵄髑髏を認めないアメリカヒーロー業界と日本正義の味方業界の間で戦前から戦後も続く文化的摩擦を生み出しますが、それは兎も角各国で、最初の世代の英雄超人達が動き始めます。
「差別と侵略に抗したいなら正道を行くべきだったね、【犯罪皇帝】」
「「最も、我々の同類は今後も現れるだろうな」」
(残された経緯が不明の、【犯罪王】と【犯罪皇帝】の対話を録音したエディソン式蓄音筒の記録)
スーパーヒーロー、正義の味方、即ち超人英雄。それは、文明化・産業化された現代に蘇った神話や伝説の英雄のような存在です。近代化によってその存在が露になりやすくなったのか、あるいは近代化によって阻害されつつある人間個人そのものがそれに抗い進化した結果なのか、陰謀によるものか、それらの複合か。
そんな超人英雄達と、それに敵対する者の呼称としてのスーパーヴィランや怪人に彩られた、英雄の世紀と呼ばれる二十世紀以前にも、あたかも近代化による人間の矮小化を拒むように、しかし同時に近代的な知識を駆使した幾人かの近代英雄が存在していました。
代表的な人物は数々の難事件を解決したイギリスの【名探偵】、逆に様々な状況で不可能と思われた盗みを成功させたフランスの【怪盗】、支配者の横暴に剣で立ち向かったメキシコの仮面剣士【剣傑】、北米の仮面ガンマン【孤警】、そして日本において維新の英傑を助けた黒覆面の【天狗】です。
(白黒写真の中でパイプを吹かす鹿打ち帽を被った男)
(【怪盗】の被害を告げる当時の新聞記事)
(今に残される当時彼等が使用した武器や仮面、覆面)
(新撰組隊士の日記の中にある【天狗】に関する記述)
【怪盗】はどちらかと言えばヴィラン的でしたが、愛国心から時に国家の為に働き、義侠心から時に民衆に奉仕した故に、言わば後の非合法ヒーローのように民衆からは受け止められていました。
これは反政府的であった【剣傑】や、古い政府と戦い新しい政府を作る側に立っていた【天狗】も類似した所があり、法に触れてはいたものの法に超越する道義や倫理には従っている、政府の腐敗と闘っていると見なされ、【怪盗】よりも更に強く正義の側の存在として認知されていました。
法と秩序を守る【名探偵】と悪政悪法を覆す【剣傑】、そしてその狭間に立つ【天狗】と更に際どい位置に居る【怪盗】、後の世においてヒーローの合法と非合法二つの潮流は、この時既に生まれていたのです。
この時代の完全なヴィランと言えたのは、【名探偵】のライバルだった欧州犯罪組織のドン【犯罪王】、そして西欧諸国による侵略と植民地化に対する抵抗としての側面を持って生まれた、反西欧と反撃としての西欧社会に対する犯罪を説いた【犯罪皇帝】でした。
【犯罪王】と【犯罪皇帝】は激しく争い、そしてまた独自の犯罪コネクションを持っていた【怪盗】もその争いに介入。その中で【犯罪王】が【名探偵】の手により打倒され……最終的には【怪盗】の組織はフランスにとっての良き時代の終わりに、【犯罪皇帝】の組織はアジアにおける独立運動と戦争の中へ、それぞれ埋没していきました。
それを更に後押ししたのが、第一次世界大戦とその前に起きた【火星人】襲来事件です。
(当時の慌ただしく印刷された新聞に書かれた数々のおどろおどろしい五本腕の蛸のような火星人とそれを象った巨大な火星人型機動兵器、そしてその尖兵として戦う緑の皮膚を持つ四本腕の獣人達の絵、そして戦後に撮影された火星人、火星獣人戦奴の死体や宇宙船・火星人型機動兵器の写真達)
火星からの宇宙船落着と内部に入っていた光波熱線兵器と毒ガスで武装した五肢軟体生物並びにそれを象った巨大火星人型機動兵器、そして緑色四腕巨獣人戦奴による侵略。
(火星人型機動兵器を挽き潰すようにして擱座し諸共に残骸となった軍艦の写真)
戦中における英軍艦サンダークラップの抗戦と米旧南軍大尉ジョナサン・カーター氏の火星人緑色四腕巨獣人戦奴を扇動しての反乱抵抗運動などもありましたが、アメリカ合衆国と大英帝国を主に襲ったこの災害で両国は一方的に打撃を受け、結果的に病による【火星人】全滅が無ければ地球全土が侵略を許していた可能性は大だったでしょう。
戦後、米国二大発明家テスラー氏による火星兵器研究が行われ、米国二大発明家エディソン氏による火星宇宙船の自動機能解析と細菌を満載した宇宙船を逆送する攻撃によってか、現代においても詳細は定かではありませんがその後【火星人】は出現しませんでしたが、力及ばずという意識は強く。
(火星目がけて自動操縦で飛翔していく火星人宇宙船の記録映像。画面端にエディソン氏の姿)
【天狗】はあくまで維新期限定の英雄でしたし、【名探偵】や【怪傑】の英雄性も、機関銃と大砲と塹壕と泥濘、そして米英が操作法をある程度解析し戦争に投入した残存した火星人型機動兵器が人間的な英雄性を否定する第一次世界大戦の後は、何時しか忘れ去られていきます。
そして圧倒的な科学文明による破壊は人間性・英雄性を、僅かに戦闘機パイロットの騎士道一騎打ちじみた空中戦を残して否定していきました。
(塹壕を悠々と跨ぎ越え、跨ぎ御越えた塹壕を光波熱線兵器と毒ガスで蹂躙する火星人型機動兵器)
殊に火星人型機動兵器は、メンテナンスが出来なかった事もありこの第一次世界大戦のみの使用に留まり大戦末期は戦車に道を譲りましたが、一方的な迄に同盟国軍側を蹂躙しました。更に、操縦マニュアルが有る訳でもなく手探りの勘と経験で運転されていた火星人型機動兵器はしばしば暴走し、民間人の住む集落を光波熱線兵器や毒ガスで蹂躙殺戮する事もしばしばでした。
「恐怖だ、恐怖しかない。あれが、火星人か」
「火星人の兵器を人間が人間に使うなんて。前線は総崩れだ。どころか、私達が避難した村すら、火星人型機動兵器の攻撃で焼け落ちていた」
「英米の連中は火星人に魂を売った悪魔だ。いいや、火星人に乗っ取られ、火星人に操られているのかもしれない」
「故郷の村が、火星人兵器の毒ガスで全滅した。英米の火星人達を、必ずや殺してやると誓った」
(同盟軍、主に独逸軍の将兵の手記)
時代はより強力な、超人を必要としていたのです。
「彼等は正義を為した。為したと、我々は思った。そして、我々はそれを天意だと信じてしまった」
(第二次世界大戦後、この時代を後から振り返った兵士の証言)
超人英雄の世紀の事実上の始まりは、第二次世界大戦が迫り来る1930年代に始まります。
時に1930年。かつて欧州を席巻した【怪盗】を思わせる大盗賊【変装怪人】と【少年少女探偵団】が相争っていた日本に怪人【蝙蝠髑髏】が姿を現します。
(当時のニュース映画。蝙蝠の羽と黒い髑髏の貌を持つ超人が列車を覆し警官隊を蹴散らし破壊活動に及び、百貨店の屋上から空に飛び立つ)
【蝙蝠髑髏】はそれまでの怪盗と探偵の知恵の争い等とは比べ物にならない、軍隊でも阻止出来ない力を持って暴れ回りました。連続して大火を起こすだけでは無く超能力で火山噴火すら起こした【蝙蝠髑髏】。
辛うじて【蝙蝠髑髏】が発掘中だった孤島の遺跡から現れた事を突き止めた【変装怪人】が倒れ遺跡の謎を解き明かした【少年少女探偵団】も犠牲にならんとした正にその時、超人【金鵄髑髏】が現れ、伊豆大地震を引き越そうとした【蝙蝠髑髏】を打倒したのです。
(当時のニュース映画。民衆の歓呼を受ける、鵄の翼を象ったマントを羽織り鳶の頭を象った兜を被り黄金髑髏の貌を持つ超人の姿)
当時高天原遺跡と呼称されたレ・ムー・リア遺跡から出現したこの古代超人【金鵄髑髏】は、大日本帝国を自己が所属していたレ・ムー・リアの後継国家であると判断。大日本帝国に帰属しその守護者たる事を宣言し、英雄として全国民の歓呼と信頼を受け、それによる大日本帝国での超古代遺跡研究の一大流行を巻き起こします。
次いでドイツにて、1927年から活動を開始していた民族社会主義独逸人民党の超人党首【調停者】が1933年総統授権法を樹立する事で独裁体制を確立、ヴァイマル共和国体制の終焉と独逸総統帝国の樹立を宣言しました。
(民族社会主義独逸人民党の記録映像。黒いボディスーツの上から黒いマントを纏った金髪碧眼で十字星型の特徴的な瞳孔を持つ類い希な美少年が、自身の瞳孔を象った星十字の紋章を刻んだ垂れ幕を背景に演説をしている)
「ボク達とボク達の党によって、荒廃から国民の団結を取り戻すのだ! 君達の心はボクの心に聞こえている。ボク達は一つだ。一つの民族。一つの国家。ドイツ! ボク達を分断する貧困と敗戦と混乱と犯罪と腐敗と暴力の中から、それを強いる世界から! 破壊された社会を、政治的混乱と退廃への沈滞から、取り戻す! 君達が、ボク達が、皆が、本来祖先達が護り続けてきた伝統あるしかるべき地位と真っ当な生活を! 抑圧と略奪を破壊する事を皆が望んでいる事をボクは知っている!」
「今や、この数週間の内に他国と結んで敗戦以来ドイツを支配してきた勢力を排除し、君達の心が望んだ革命により国家権力を国民的指導部に取り戻した。投票の日は、ドイツ民族がボク達の心の繋がりに現実の同意を与えた日だったのだ!」
「ボク達にはかつてないほど強固な絆、決然たる同意、厳しい団結、無条件の結びつき、互いの責任と権威の尊重がある。そうした精神の絆が経済的その他の生活がもたらす想像上・現実上のあらゆる相違をも越え、ボク達の民族共同体を強化することができる。 これによってのみ、市民や農民や労働者やその他すべての階級から再び一つの民族を育成することができるのだ!」
【調停者】は人造超人であり、民族社会主義人民党の基となった科学結社【メトロポリス】が作り出した存在です。
第一次世界大戦に敗北した後の独逸は協商国に課せられた賠償金の苛斂誅求と領土割譲、恐慌、政治的混乱、【吸血鬼】や【人狼】や【屠殺者】といった怪人達が跳梁跋扈し、第一次世界大戦における戦況の転換点になった英米による火星人兵器の使用による屈辱から来る英米並びに国際資本家は火星人に操られているとする火星人陰謀論も加わって混乱と貧困の極みにありました。
【メトロポリス】の指導者カリガリ博士は【調停者】に【吸血鬼】ら怪人を一掃させ、【調停者】は政治を立て直せるのは超人だけだと語り、超人的な頭脳と魅力と弁論とカリスマ性と読心や予知などの超能力で瞬く間に民衆・民兵を掌握しました。
(人肉食者だった殺人鬼が変異した怪物、現代で言う所の先天変異超人か幽妖超人だったと思しき【人狼】【吸血鬼】【屠殺者】達のうち、【人狼】を打倒する【調停者の映像。たまたま近所で映画を撮影中だったレイ・リーフェンシュタイン監督が撮影。民族社会主義独逸人民党のプロパガンダに広く用いられたものだが、希少な戦前の超人戦の記録でもある)
【調停者】はその超能力で国民全てと繋がる事が出来、国民全ての心を汲み、その望み・欲望を遍く反映した政治を行い、国民一人一人に語りかける事が出来ました。究極の民意であり、究極の理解者である存在に、独逸国民は熱狂せずにはいられませんでした。これこそ新しい時代の政治だと信じられたのです。
また【メトロポリス】は【調停者】の元に集められた民兵集団【突撃隊】を実験台として超人の生産に乗り出し、それとは別系統の人造人間【山椒魚】を量産、再軍備に乗り出します。
(武装し行進する、のっぺりした黒い皮膚の上から軍服を纏う奇怪な半人半両生類の兵士達の姿)
……国民一人一人の願いを叶えるという事は、無制限の欲望の肯定であり、それを叶える為には限界を超えた経済政策が必要であり、急激に立ち直りゆくと見えていた独逸経済は実質上綱渡りの自転車経営で、それと独逸国民の先の敗戦という屈辱に対する報復感情を思えば、その行く先は必然的に戦争でした。国民が【調停者】にそれを望み、【調停者】と民族社会主義人民党・【メトロポリス】は、それに超人英雄の力で答えようとしました。
そして風雲急を告げる1938年、アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランドにおいて、現地住民ジョー・シーゲル、宇宙人としての本名ディ・シィが異星超人としての力を使い、火星人事件の際にテスラ博士が製造するも起動せずに眠っていた人造超人ヒューマンライトが落雷で暴走したのを止めた事を契機にスーパーヒーロー【アメイジングマン】として活動を開始。
(デイリー・スター紙が報じる、鳥よりも飛行機よりも速く高く空を飛ぶ、青いマント・グローブ・ブーツに赤いボディスーツ姿の屈強なで善良そうで端正な青年の姿。胸元には下に切れ込みが入った細長い白色の二等辺三角形、Aの字に近く見えるシィ家の家紋)
……後に、独裁者として語るを憚る存在となった【調停者】を除いて「最初に活動した【金鵄髑髏】と最初にスーパーヒーローと呼ばれたアメイジングマン、どちらが最初の超人英雄か」と日米間で論争になり、自らをスーパーヒーローの本場と自認し金鵄髑髏を認めないアメリカヒーロー業界と日本正義の味方業界の間で戦前から戦後も続く文化的摩擦を生み出しますが、それは兎も角各国で、最初の世代の英雄超人達が動き始めます。
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そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
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