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・断章⑮【“水を見る者”と戦い、“虚空の声”は語り】
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怪獣と人類を巡り激しく闘う、恒星人ハイパーマンと恒星別星人ハイパーマン・ネガは、空中戦の末遂に大気圏上に至った。
「何故邪魔をする、“水を見る者”」
「それは此方の問いだ、“虚空の声”。何故地球人類を憎む」
ハイパーマン……彼が本来属する恒星で“有水惑星を観察する事に拘る変わり者”と呼ばれる存在は、ハイパーマン・ネガ……彼が本来属する恒星で“星々の間に知らせを宣べ伝う者”という意味の称号を持つ高位者と言葉を交わした。
「人類自身すら危惧し、人類自身を憎む者すら居るように。怪獣達は生態を狂わされ、住処を奪われ、故に人を襲う。侵略者は人類だ。被害者は怪獣だ。彼等の小さな惑星世界においてすら、それは明らかだ。まして星間種族化にまで至ったと仮定した場合、より危険なのは既に同等の宇宙怪獣が複数存在する怪獣達ではない。彼等は宇宙の秩序の一つだ。危険なのは、知的生命体として異常なこの星の人類種の方だ」
“水を見る者”に、“虚空の声”は伝える。その称号と役職としての裁定を。
「彼等の本質は変わらない。異種を、異思考を排除する。彼等はそれを克服したと称してきたが、異なる宗教を排斥する事を“克服”して異なる人種を奴隷化するようになり、異なる人種を奴隷化する事を“克服”して異なる思想を排斥するようになっただけだ。本質は何も変わっていない。差異渦巻く宇宙に彼等が進出すれば、必ず争いを起こす。尤も、その程度の問題種ならば、銀河には数多いる。だが、数と排他性と、恒星間航行すらままならない程度の文明段階で獲得している戦闘能力のバランスが明らかに異常だ。惑星世界で例えるなら、最悪の病原体より更に酷い。これ程の危険性を持つ種族は、滅んだジェリシャ星の種族ジェシリャニアン、地球人の言うアメイジングマンの同族以来だ」
「……」
“虚空の声”の言葉を、“水を見る者”は沈黙し聞いた。
「彼等は銀河系宇宙における平均的な文明の発展基準の内幾つかの要素を欠き、また過去に問題を起こし他者を滅ぼし自らも滅んだ文明に存在した特異要素を複数有している。彼等は家畜・農作物の品種改良から自己の品種改良という発想に至らず、文明獲得以後石器時代と大差の無い大脳で原子力を弄んでいる。彼等は自然死の克服という発想に至らず、宗教や思想で死が消滅ではないと自己欺瞞するという麻薬的陶酔で自他の命を蔑み狂奔するが故に、宇宙水準からすれば異常に恐れ知らずで獰猛で蛮勇で殺戮を厭わない。あれほどの獰猛性は、この惑星では別星人と呼ばれるような通常の惑星では一惑星に幾体かいる希少な超常能力個体しかいない。そしてそうでありながら、彼等は宇宙の存在を知り尚自然宇宙に自分達の天敵が存在するかもしれないという発想にすら実際の襲撃を受けるまで至らない程愚鈍だ。彼等は精神進化や非言語直結相互理解手段の開発を行わず、言語的・社会的・武力的闘争でのみ集団意思を決定する。出生個体を選別する事すらせずに自らの人口を野放しにし通常の知的生命体ではありえない程のパンデミック的繁殖を行い、たかが惑星程度ですら資源管理を行えず、正義や公正という危険な感情を持ち、本来この程度の知性ならば自星系を出る事無く文明として寿命を迎えるはずが、外界からの技術を盗む事で変化し始めている。まるで文明における奇形と病巣の集合体だ」
唾棄の感情を込めて“虚空の声”は吐き捨てた。動物や怪獣の純粋さと比べれば、人類は、何たる危険奇形細菌の如き汚染遺伝子の吹き溜まりか、と。
「……“水を見る者”、何故この星の人類に固執する。何より、あれらは世界外存在ブウイヌムルの危険な道具だ。複数の模造次元を混淆し、破綻をもたらす因子だ」
そして、“虚空の声”は重ねて問うた。……その情報の一部を、危険なものであるとして傍受の可能性に対し特に厳重に秘匿しながら。
「ハイパーマンよ、“水を見る者”よ。私こそお前に問う。汝があの、私からすれば如何なる価値をも認めがたい者を保護せんとするのは何故か、と」
と。
「『虚空の声』。だから怪獣を救い、人を滅ぼし、この地球を破壊するのか」
「そうだ。我々の恒星の為でもある。あれらは余りにも雑然とした断絶と矛盾の混淆だ。怪獣の方が、まだ我々に近い。彼等とならば共存が可能だ」
ハイパーマンは、ハイパーマン・ネガに問い返した。ハイパーマン、ハイパーマン・ネガ共に、危険な情報に特に念入りな傍受に対する秘匿を行って。
ハイパーマンはその言葉を吟味し、そして答える。
地球惑星世界の命運を担う答えを。
「何故邪魔をする、“水を見る者”」
「それは此方の問いだ、“虚空の声”。何故地球人類を憎む」
ハイパーマン……彼が本来属する恒星で“有水惑星を観察する事に拘る変わり者”と呼ばれる存在は、ハイパーマン・ネガ……彼が本来属する恒星で“星々の間に知らせを宣べ伝う者”という意味の称号を持つ高位者と言葉を交わした。
「人類自身すら危惧し、人類自身を憎む者すら居るように。怪獣達は生態を狂わされ、住処を奪われ、故に人を襲う。侵略者は人類だ。被害者は怪獣だ。彼等の小さな惑星世界においてすら、それは明らかだ。まして星間種族化にまで至ったと仮定した場合、より危険なのは既に同等の宇宙怪獣が複数存在する怪獣達ではない。彼等は宇宙の秩序の一つだ。危険なのは、知的生命体として異常なこの星の人類種の方だ」
“水を見る者”に、“虚空の声”は伝える。その称号と役職としての裁定を。
「彼等の本質は変わらない。異種を、異思考を排除する。彼等はそれを克服したと称してきたが、異なる宗教を排斥する事を“克服”して異なる人種を奴隷化するようになり、異なる人種を奴隷化する事を“克服”して異なる思想を排斥するようになっただけだ。本質は何も変わっていない。差異渦巻く宇宙に彼等が進出すれば、必ず争いを起こす。尤も、その程度の問題種ならば、銀河には数多いる。だが、数と排他性と、恒星間航行すらままならない程度の文明段階で獲得している戦闘能力のバランスが明らかに異常だ。惑星世界で例えるなら、最悪の病原体より更に酷い。これ程の危険性を持つ種族は、滅んだジェリシャ星の種族ジェシリャニアン、地球人の言うアメイジングマンの同族以来だ」
「……」
“虚空の声”の言葉を、“水を見る者”は沈黙し聞いた。
「彼等は銀河系宇宙における平均的な文明の発展基準の内幾つかの要素を欠き、また過去に問題を起こし他者を滅ぼし自らも滅んだ文明に存在した特異要素を複数有している。彼等は家畜・農作物の品種改良から自己の品種改良という発想に至らず、文明獲得以後石器時代と大差の無い大脳で原子力を弄んでいる。彼等は自然死の克服という発想に至らず、宗教や思想で死が消滅ではないと自己欺瞞するという麻薬的陶酔で自他の命を蔑み狂奔するが故に、宇宙水準からすれば異常に恐れ知らずで獰猛で蛮勇で殺戮を厭わない。あれほどの獰猛性は、この惑星では別星人と呼ばれるような通常の惑星では一惑星に幾体かいる希少な超常能力個体しかいない。そしてそうでありながら、彼等は宇宙の存在を知り尚自然宇宙に自分達の天敵が存在するかもしれないという発想にすら実際の襲撃を受けるまで至らない程愚鈍だ。彼等は精神進化や非言語直結相互理解手段の開発を行わず、言語的・社会的・武力的闘争でのみ集団意思を決定する。出生個体を選別する事すらせずに自らの人口を野放しにし通常の知的生命体ではありえない程のパンデミック的繁殖を行い、たかが惑星程度ですら資源管理を行えず、正義や公正という危険な感情を持ち、本来この程度の知性ならば自星系を出る事無く文明として寿命を迎えるはずが、外界からの技術を盗む事で変化し始めている。まるで文明における奇形と病巣の集合体だ」
唾棄の感情を込めて“虚空の声”は吐き捨てた。動物や怪獣の純粋さと比べれば、人類は、何たる危険奇形細菌の如き汚染遺伝子の吹き溜まりか、と。
「……“水を見る者”、何故この星の人類に固執する。何より、あれらは世界外存在ブウイヌムルの危険な道具だ。複数の模造次元を混淆し、破綻をもたらす因子だ」
そして、“虚空の声”は重ねて問うた。……その情報の一部を、危険なものであるとして傍受の可能性に対し特に厳重に秘匿しながら。
「ハイパーマンよ、“水を見る者”よ。私こそお前に問う。汝があの、私からすれば如何なる価値をも認めがたい者を保護せんとするのは何故か、と」
と。
「『虚空の声』。だから怪獣を救い、人を滅ぼし、この地球を破壊するのか」
「そうだ。我々の恒星の為でもある。あれらは余りにも雑然とした断絶と矛盾の混淆だ。怪獣の方が、まだ我々に近い。彼等とならば共存が可能だ」
ハイパーマンは、ハイパーマン・ネガに問い返した。ハイパーマン、ハイパーマン・ネガ共に、危険な情報に特に念入りな傍受に対する秘匿を行って。
ハイパーマンはその言葉を吟味し、そして答える。
地球惑星世界の命運を担う答えを。
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