4 / 7
3.初期のアプローチとその失敗
しおりを挟む
最初に月へのアプローチを仕掛けたのは魔法皇国であった。
元々本来魔法研究の総本山でありながら、実用本位の航空魔法兵器の開発においては軍事力に長け国名にまで航空魔法に関わる名を掲げた天空帝国に脅かされていた。
危機感と魔法学知識の両輪が、魔法皇国を月へ突き動かしたのである。
魔法皇国が選んだ手段は転移魔法であった。
月が砂漠に近い環境の大地からなる事、大地からは19万大隊王尺の距離である事はそもそも魔法皇国が主となって作った天文台からの観測で確認されていた。
他諸国の魔法学では不可能だが、魔法皇国の魔法学であればこれだけの条件で十分目標までの転移魔法を構築する事が出来るとされ、事実計画の主導者ジェルズ・ウィヴァー大司教は、ウィヴァーライトと呼ばれる巨大魔方陣を書き上げた。
実験場である第三魔法図書館中央ホール、大闘技場にも勝る空間一面に巨大にして複雑な複合重層立体魔方陣が構築され、そして。
……第三魔法図書館は完全に壊滅した。後に第三魔法図書館航宙惨事と呼ばれるこの事件は、月の空間と接触した魔方陣が周囲の空気を魔方陣崩壊まで強風を発生させ各種物資諸共強烈に吸い込み続けた事と、儀式に使われたものと第三魔法図書館の収蔵品の幾つかからなる複数の魔法巻物と魔法具がそれにより損壊して誤作動した事が原因であった。
同時期、山人親方連邦国の親方の一人である“魔砲親方”インピール・バービケルヌは、彼が戦時中に作り上げ大いに活躍させた、魔方陣を刻み込んだ筒に魔炭など複数の秘薬を詰め鉛の殻たる砲弾に収めた魔法巻物をその上から装填する事で凡人並の魔法操作能力しか持たない複数人で手間こそかかるが大魔法使いに匹敵する攻撃魔法を筒から発射出来るようになる“魔砲”の構造を応用。
砲弾に人類が入るくらい巨大化させた大魔砲マウントヤードで月に山人を撃ち込もうと画策し、実行に移した。
これは結果としては強化魔法で守られた山人の非常な頑丈さと、月着陸を想定した衝撃吸収装置などの安全装置や密閉構造の為死者こそ出なかったが、月に届く事無く地上に落下し、着弾点が酷い事になった。
また、なまじ密閉構造で後の問題に耐えてしまい、強い衝撃を受けるが故に大した観測機器を詰めなかったことから、続く宇宙開発の事故を阻止出来なかった不運でも知られている。
そう、これに続き、そして再びの悲劇となったのは、天空帝国の新型箒と組合共和国の大型絨毯であった。何れも初期の牧歌的なものから大戦の技術で磨き上げられ、箒は結界と強化により音の壁に耐え絨毯は飛行する基地とでも言うべきものであったが、航空に至る程の飛翔力・結界維持魔力の消費の激甚化が発生。更には疲弊した防御の限界を超えて操縦者を蝕む低温と酸欠。魔力消耗と環境の複合的ダメージによる操縦者の意識喪失で箒と絨毯は相次いで墜落した。
また、同時期にそれぞれ魔法天馬や魔獣馴致法などを主とし航空魔法でやや出遅れていた森林連合王国と大草海単于国は、前者は品種改良した自身の魔力を全てより高い成長へと品種改良し硬度化した中空の幹に吊籠を通せるようにした魔法樹木で、後者は“空見の”フィエの技術の発展系である魔法飛行船の人形機関を可能な限り省魔力化し、それらで一先ず登れる所まで昇りそこから魔法天馬や魔獣を飛ばそうとしたが、こちらも同様の理由で一定以上の高度には到達出来なかった。
先の魔法大戦で人類と魔類が空中戦を行ったのは、地上を視認し対地攻撃を行える程度の高さ。
この時人類はまだ、空の上がどうなっているのかを知らなかったのである。
元々本来魔法研究の総本山でありながら、実用本位の航空魔法兵器の開発においては軍事力に長け国名にまで航空魔法に関わる名を掲げた天空帝国に脅かされていた。
危機感と魔法学知識の両輪が、魔法皇国を月へ突き動かしたのである。
魔法皇国が選んだ手段は転移魔法であった。
月が砂漠に近い環境の大地からなる事、大地からは19万大隊王尺の距離である事はそもそも魔法皇国が主となって作った天文台からの観測で確認されていた。
他諸国の魔法学では不可能だが、魔法皇国の魔法学であればこれだけの条件で十分目標までの転移魔法を構築する事が出来るとされ、事実計画の主導者ジェルズ・ウィヴァー大司教は、ウィヴァーライトと呼ばれる巨大魔方陣を書き上げた。
実験場である第三魔法図書館中央ホール、大闘技場にも勝る空間一面に巨大にして複雑な複合重層立体魔方陣が構築され、そして。
……第三魔法図書館は完全に壊滅した。後に第三魔法図書館航宙惨事と呼ばれるこの事件は、月の空間と接触した魔方陣が周囲の空気を魔方陣崩壊まで強風を発生させ各種物資諸共強烈に吸い込み続けた事と、儀式に使われたものと第三魔法図書館の収蔵品の幾つかからなる複数の魔法巻物と魔法具がそれにより損壊して誤作動した事が原因であった。
同時期、山人親方連邦国の親方の一人である“魔砲親方”インピール・バービケルヌは、彼が戦時中に作り上げ大いに活躍させた、魔方陣を刻み込んだ筒に魔炭など複数の秘薬を詰め鉛の殻たる砲弾に収めた魔法巻物をその上から装填する事で凡人並の魔法操作能力しか持たない複数人で手間こそかかるが大魔法使いに匹敵する攻撃魔法を筒から発射出来るようになる“魔砲”の構造を応用。
砲弾に人類が入るくらい巨大化させた大魔砲マウントヤードで月に山人を撃ち込もうと画策し、実行に移した。
これは結果としては強化魔法で守られた山人の非常な頑丈さと、月着陸を想定した衝撃吸収装置などの安全装置や密閉構造の為死者こそ出なかったが、月に届く事無く地上に落下し、着弾点が酷い事になった。
また、なまじ密閉構造で後の問題に耐えてしまい、強い衝撃を受けるが故に大した観測機器を詰めなかったことから、続く宇宙開発の事故を阻止出来なかった不運でも知られている。
そう、これに続き、そして再びの悲劇となったのは、天空帝国の新型箒と組合共和国の大型絨毯であった。何れも初期の牧歌的なものから大戦の技術で磨き上げられ、箒は結界と強化により音の壁に耐え絨毯は飛行する基地とでも言うべきものであったが、航空に至る程の飛翔力・結界維持魔力の消費の激甚化が発生。更には疲弊した防御の限界を超えて操縦者を蝕む低温と酸欠。魔力消耗と環境の複合的ダメージによる操縦者の意識喪失で箒と絨毯は相次いで墜落した。
また、同時期にそれぞれ魔法天馬や魔獣馴致法などを主とし航空魔法でやや出遅れていた森林連合王国と大草海単于国は、前者は品種改良した自身の魔力を全てより高い成長へと品種改良し硬度化した中空の幹に吊籠を通せるようにした魔法樹木で、後者は“空見の”フィエの技術の発展系である魔法飛行船の人形機関を可能な限り省魔力化し、それらで一先ず登れる所まで昇りそこから魔法天馬や魔獣を飛ばそうとしたが、こちらも同様の理由で一定以上の高度には到達出来なかった。
先の魔法大戦で人類と魔類が空中戦を行ったのは、地上を視認し対地攻撃を行える程度の高さ。
この時人類はまだ、空の上がどうなっているのかを知らなかったのである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
無限在庫チートで異世界を買い占める〜窓際おじさんが廃棄予定のカップ麺で廃村エルフと腹ペコ魔王を救済したら最強商会ができました〜
黒崎隼人
ファンタジー
物流倉庫で不良在庫の管理に追われるだけの42歳、窓際サラリーマンのタケシ。
ある日突然、彼は見知らぬ森の中へと転移してしまう。
彼に与えられたのは、地球で廃棄される運命にあったあらゆる物資を無尽蔵に引き出せる規格外のスキル「無限在庫処分」だった。
賞味期限間近のカップ麺、パッケージ変更で捨てられるレトルトカレー、そして型落ちの電動工具。
地球ではゴミとされるこれらの品々が、異世界では最強のチートアイテムと化す!
森で倒れていたエルフの少女リリアをカップ麺で救ったタケシは、領主の搾取によって滅亡寸前だった彼女の村を拠点とし、現代の物資と物流ノウハウを駆使して商会を立ち上げる。
美味しいご飯と圧倒的な利便性で異世界の人々の胃袋と生活を掴み、村は急速に発展。
さらには、深刻な食糧難で破綻寸前だった美少女魔王ルビア率いる魔王軍と「業務提携」を結び、最強の武力を物流の護衛として手に入れる!
剣も魔法も使わない。武器は段ボールと現代の知識だけ。
窓際おじさんが圧倒的な物量で悪徳領主の経済基盤をすり潰し、異世界の常識を塗り替えていく、痛快・異世界経営スローライフ、開幕!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる