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第3章 お兄ちゃんの高校時代
【番外編】お兄ちゃんと生徒会
しおりを挟む肩口まで伸びた金色の髪を一重に結い
ネクタイを締めると
高校指定の深緑色のブレザーに袖を通す。
鏡に映るのは、青く澄んだ瞳をした
少女のように線が細い
──男子高校生の姿。
時は今から三年半前
これは飛鳥が
高校2年の秋の出来事である。
◇お兄ちゃんと生徒会◇
***
「飛鳥、もう身体は大丈夫なのか?」
季節は秋、9月末日
制服姿の飛鳥が、いつものように教室に入ると、久しぶりに顔を合わせた友人の橘 隆臣から声をかけられた。
何故「久しぶり」なのかというと、ここ一週間ほど、飛鳥は体調を崩し学校を欠席していたからなのだが……
『大丈夫なわけないだろ。熱は下がらないし、体は痛いし……!』
「それは大変だたっな? インフルエンザ……」
飛鳥が体調を崩し始めたのは、先週の水曜日。
体がダルいなと思っていたら、熱まで出てきたため、早退し病院に行くと、インフルエンザだということが判明し、飛鳥はそれから一週間の出席停止を申し付けられた。
そもそも、その原因は、双子が通う小学校で、季節外れのインフルエンザが流行り始めたのがきっかけであり、そして先日まで、蓮がしっかりインフルエンザにかかり伏せっていたため、言うなれば飛鳥は、その蓮に見事にうつされ、体調が悪化したというわけだ。
『今、小学校で流行ってるみたいなんだよね、季節外れのインフルエンザ……なに、あの破壊力、マジで死ぬかと思った』
飛鳥は自分の席につき頬杖をつくと、深くため息をつきながら、寝込んでいた頃の自分を思い返す。
そして、教科書をしまうため、自分の机の中を確認すると、これまた休んでいた間のプリント類が山のように入っており、飛鳥はうんざりしたように息をつくと、中のプリントを取りだし、机の上に広げ始めた。
「そーいや、飛鳥……」
『んー……?』
すると隆臣が、なにげなしに問いかける。
「お前さ、生徒会選挙……立候補した?」
『はぁ? そんなめんどくさいの、わざわざ立候補するわけないだろ』
机の中に入っていたプリントに一枚一枚目を通しながら、飛鳥は隆臣からの質問に答える。
”生徒会選挙”
桜聖高校は、9月に生徒会選挙が行われ、新しい生徒会役員を選抜する。
任期は2年生の10月から、3年生の9月までの1年間。
主に生徒会役員は、生徒自身の立候補から成り立ち、9月に入ると、まず立候補者の募集を開始し、その後、9月末に行われる生徒総会で、立候補者は全校生徒の前で演説をする機会がもうけられる。
そして、生徒総会後の一週間で、生徒達は一番よいと思われる立候補者に投票し、一番票を獲得した生徒が生徒会長となるのだが
「だよな。やっぱり、立候補……してないよな?」
『なに、いきなり?』
どこか歯切れの悪い隆臣の声に、飛鳥はプリントを手にしたまま首をひねる。
「……飛鳥。お前の名前、貼りだされてるぞ?」
『何に?』
「だから……生徒会役員の立候補者名の中に」
『………』
生徒会役員の………立候補者???
『はぁ!!!?』
瞬間、飛鳥は慌てて声をあげた。
また最悪にも、生徒総会が行われたのは、なんと今週の月曜日。
飛鳥は先週の木曜日から、昨日の水曜日まで欠席しており、生徒総会はまさに、その間に行われ、今は投票期間の真っ只中ということになる。
しかも、その投票期間も――明日には終わる!!
『ちょっとまって!? 人が欠席してる間には、なんでそんなことになってんの!?』
「いやー……誰か"勝手"に、お前の名前を申請しにいった奴がいるってことだろうなー、怖……っ」
『言ってる場合か!?』
***
「あー、確か女子が数人一緒にきて『これ神木くんから頼まれました』って、渡してったぞ?」
『……』
その後、飛鳥と隆臣は、ことの顛末を知るべく、生徒会選挙を取り仕切っている、藤本先生の元に訪れていた。
藤本先生は、職員室の机の中から、生徒会役員の立候補者にまつわる名簿を取りだし確認すると、その中から「神木 飛鳥」とかかれた用紙を選び出す。
「え? 神木……立候補、してないの?」
『してません』
藤本先生は、書類と飛鳥の顔を交互に見ながら冷や汗混じりに言葉をかけると、飛鳥がにっこりと笑って言葉を返す。
『藤さん、しっかりしてよ! なんで本人じゃない書類、受理してんの?』
「いや、だって、日直の時とか、神木の変わりに、よく別の奴が持ってくるから、またそんな感じかなーとか思ったんだよ!」
「……く…っ」
『隆ちゃん、なに笑ってんの?』
「いや、お前っ……日頃の行いが見事に裏目に出てて……腹、痛いっ」
『殴っていいかな?』
藤本先生の話を聞いて、急に肩を震わせ笑いをこらえだした隆臣を見て、飛鳥はこの野郎とばかりに、拳を構える。
「それで、どうすんだ、飛鳥」
『どうするもなにも……俺、立候補してないんだから、無効に決まってるだろ』
「……」
そう言って飛鳥が藤本先生を見ると、藤本先生は一瞬黙り込む、その後、急に立ち上がった!!
「アハハ、神木!!大丈夫!!お前ならやれる!!一緒に学校を盛り上げようじゃないか、生徒会長!!」
『なに言ってんの!?』
突然、飛鳥の肩をガシリと掴み、まるで青春ドラマの様に熱く語りかけ始めた藤本先生。もはや、その返答は「今更、遅いよ」とでも言うかのようだ。
「いや、もうさ。明日、投票期間も終わるんだけど、事前に開票した分みただけでも、そのほとんどが神木に入ってるんだよね? いやーさすが人気者!演説も一切せずに生徒会長になれるなんて、本校始まって以来だぞ!伝説になれるぞ!」
『ふざけないでよ、先生。俺、生徒会長とか絶対ヤダ』
「まーまーそういわずに。だって、今更、生徒会選挙やり直すの!?どんだけ労力食うと思ってんの!?」
『そこ!? 確実に藤さんの私情はさんでるじゃん!』
「だって、神木部活も入ってないし、1年くらいいいだろ!俺もちゃんと支えるからさー!なぁ、頼むよ神木ぃぃぃ!!」
『ちょ、痛い!……ねぇ隆ちゃん!隆ちゃんも、なんか言ってよ!?』
すると、飛鳥の細い肩を掴み力任せに揺さぶる藤本先生を前に、自分ではどうにもできないと思ったのか、飛鳥は何とかしてと言わんばかりに隆臣を見つめた。
すると隆臣は
「先生……飛鳥は、生徒会長には向いてないですよ」
熱くなる藤本先生の腕を飛鳥から引き剥がし、落ち着いた口調で仲裁に入った隆臣は、救いを求めてきた飛鳥に助け船をだす。
そんな隆臣の言葉に、飛鳥は「なんて頼りになるやつなんだろう」と、一瞬、胸をときめかせたが
「でも、コイツが生徒会にいないと先生たちの信用問題にも関わると思うんで、副会長で手を打ちませんか?」
「さすがだ橘!! その案のったぁぁ!!」
『いや待て、どうしてそうなった』
こうして飛鳥は、立候補すらしていないのに、それから一年間、生徒会の副会長を任されることになったのでした。
番外編②につづく☆
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