159 / 554
【過去編】情愛と幸福のノスタルジア
第147話 情愛と幸福のノスタルジア⑱
しおりを挟む暫くして、唇が離れると、優しく微笑む侑斗と目が合って、ゆりは恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「っ……近いっ」
「え? 今更?」
「だって……なんだか急に、恥ずかしくなってきちゃって」
まるで、全身が火を噴くよう。ゆりは、先ほど重なった唇に指先だけでふれると、耳まで赤くし、その顔を俯かせた。
キスひとつで、ここまで顔を赤くするなんて、こういうところは、まだまだ子供だなと、侑斗は微笑ましく思う。
まぁ、また子供扱いなんてしたら、怒られそうだけど……。
「はは、そんなに恥ずかしがらなくても」
「っ……だって私、キス……初めて……なんだもの」
「!?」
だが、その後予想外の言葉が返ってきて、侑斗はめをみはった。
「は、初めてって、いやいや、嘘だろ!?」
「嘘じゃないし!」
「いや、だって……」
あんな、迫り方していて?
だが、キスもしたことがないということは……
「もしかして、そっちの経験も無いのか?」
「……っ」
多少、セクハラまがいなことを問いかければ、ゆりは再び顔を真っ赤にすると、その後、小さくコクッと頷いた。
「はぁ、マジか!? お前、経験もないのに、あんな誘い方してたの!? 今どきの女子高生どうなってんの!?」
「そんなに驚かなくても良いでしょ!! そこそこ経験豊富な友達は多くて、それなりに知識はあるんだけど、ただ、その……じ、実践となると……さすがに」
(っ、だからあの時、怖がって──)
前に抱きしめてしまった時、ほんの少し震えていたのを思いだして、侑斗は納得してしまった。
だが、ゆりは義父に酷いことされかけて、毎晩怯えて暮らしてきた。
だからこそ──
「そうか……だから、今まで大事に守ってきたんだな」
そういって、またゆりを抱きしめ、侑斗が優しく頭を撫でると、ゆりの瞳からは、大粒の涙が溢れだした。
怖かった。辛かった。苦しかった。
だけど、やっと解放された。
そして、こうして自身の初めてを、愛する人に捧げられることが、なによりも嬉しくて──
「ぅん、よかった……ッ」
小さく小さく声を震わせるゆりの瞳からは、涙がとめどなく流れていく。
それは、まるで、張りつめていたものが、すべて洗い流されていくようにも感じた。
(しかし、まさか、初めてとはな……)
だが、それから暫くゆりをなだめていると、侑斗はゆりを抱きしめながら、また別の思考に陥っていた。
キス一つしたことがない12歳も年下の女の子。
これは、全く男を知らない純な女の子を、30のバツイチ男が毒牙にかけたみたいな……そんな感じになるのだろうか?
あれ、なんか犯罪ぽい? 今更だけど。
だが、はっきりいって、ゆりはかなり可愛いし、彼氏がいたことくらいあるだろう思ってた。
それなのに、まさかキスすら、したことがないなんて…
(……本当に、いいんだろうか?)
こんなバツイチ男が相手で───
「侑斗さん」
「?」
すると、ゆりがまた花のような可愛らしい笑顔を浮かべて、侑斗をみあげた。
「私ね……今とっても幸せ!」
そういって、本当に幸せそうな笑みを浮かべゆりをみて、侑斗は──
「ふ……あははっ」
その瞬間、ゆりの肩に顔をうずめながら、まるで、腹を抱える勢いで笑い出した。
「え? なに、どうしたの?」
「あはは、いや、俺もう飛鳥の言った通りクズでいいや! 年の差とか、世間体とか気にしない!」
「???」
クスクスと笑いをこらえる侑斗をみて、ゆりが困惑する。
だが、そんな可愛らしいゆりの姿を見て、侑斗はまた小さく微笑むと、そのまま、ゆりの首筋に口づけた。
「ん、ちょっと……っ」
シャンプーの甘い香りが鼻孔をくすぐる。気を抜けば、このまま食らいつきそうになりそうだった。でも──
「なに、ビビってんの?」
「だ、だって」
「今日は何もしないよ」
そう言って、侑斗はまた首筋に口付けた。
ちゅっ……とリップ音を響かせて、まるで遊ぶように肌の上を移動する。
すると、ゆりは、侑斗に身体を預けたまま、暫く考え込むと
「……本当に、なにもしないの?」
「え?」
「いいよ、私なら」
その言葉に、さすがの侑斗も耳を疑った。
「ッ……お前、いきなりなに言って……だいたい俺が今、どれだけ我慢してると……!」
「だから、我慢しなくていいっていってるの!」
「いいわけないだろ!」
「いいの! さっきの言葉、侑斗さんと家族になってもいいってことだよね。なら、私──侑斗さんの子供がほしい!」
「……っ」
しがみついて、ハッキリとそう言われて、心臓がドクンと波打った。
ゆりの表情は真剣で、その言葉が冗談でないことが、強く伝わってくる。
「子供って……そんなに、欲しいのか?」
「うん。だって……妹弟がいたら、飛鳥も一人で寂しいなんて思ったりしないでしょ?」
「……え?」
──独りは、寂しい。
それは、ずっと部屋の中に一人閉じ込められていた飛鳥が、逃げ出したあの日、ゆりに言った言葉らしい。
「私もね、兄弟欲しかったの。叶わなかったけど」
「そういえば、俺も、そう思ってたことがあったな」
一人っ子が悪いわけではないけど
親に恵まれなかったからか、妙に憧れたたことがあった。
ただの「ないものねだり」だったのかもしれないけど──
「ねぇ、侑斗さん。私、この先ずっと、侑斗さんと飛鳥と、一緒にいてもいいんだよね?」
するとゆりは、またいつものような、ふわりした優しい笑みを浮かべて、侑斗に問いかけた。
侑斗は、その言葉を聞いて、再びゆりの頬に触れると
「あぁ……俺ももう、ゆりのいない生活は、考えられない。ゆり、俺と──」
──結婚しよう。
そう囁いて、互いにみつめ合えば、またどちらともなく口付けあった。
親には恵まれなかった。
家族には恵まれなかった。
でも、今度こそ
愛し合って
支えあって
家族を増やして
笑いの絶えない、幸せな家庭を築いていこう。
君と、あなたと
二人で───…
パタタタタ……
「「!?」」
だがその瞬間、部屋の外から小さな足音が駆け寄って来る音が聞こえた。
パタパタと可愛いその音は、部屋の前で止まると、その瞬間、突然部屋のドアが開かれた。
「お父さん!! ゆりさん、知ら……」
入ってきたのは、飛鳥。
だが、その目には、父がゆりさんを抱きしめている姿が見えて、飛鳥は見慣れない光景に首を傾げる。
「二人とも、なにしてるの?」
「飛鳥!? い、いや! まだなにもしてな」
「──侑斗さん! いいから離れて!!」
息子にとんでもない所を見られてしまい、ゆりが侑斗を慌てて引き剥がす!
だが、ある意味セーフだ。
よかった。ほんと、よかった!!
その後、侑斗がゆりから離れると、今度は飛鳥が勢いよくゆりに抱きついてきた。
「ゆりさん、勝手に帰っちゃったのかと思った!!」
瞳を潤ませ、見上げてくる飛鳥。きっと、ゆりがいないのに気づいて探しにきたのだろう。
「大丈夫。勝手にいなくなったりしないよ」
「本当? 絶対?」
そう言って、またきゅっとしがみついてきた、飛鳥をみて、ゆりは、目を細めると
「ねぇ飛鳥……私、飛鳥のお母さんになってもいい?」
「え?」
「……飛鳥が許してくれるなら、私これから先、ずっと一緒にいられるよ」
ずっと一緒──
その言葉の意味を理解したのか、飛鳥はその後嬉しそうな笑みを浮かべると
「うん……ずっとずっと俺たちと一緒にいて……!」
その言葉を聞いて、侑斗が飛鳥の頭を撫でると、ゆりもまた嬉しそうに笑った。
そして、幸せそうな二人の笑顔をみて、侑斗は願う。
どうかこの幸せが
永遠に続きますようにと──
◇
◇
◇
「あ! そうだ! 私が飛鳥のお母さんになるってことは、飛鳥を私好みのイケメンに育て上げることが可能ってことだよね♪」
「なんだ、そのエセ光源氏計画。やめてくれ」
「?」
だが、その後侑斗は、ゆりが飛鳥を育てたら、一体どう成長するのだろうか?と、ほんの少しだけ不安を感じたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる