神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

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第16章 コスプレと橘家

第226話 スカートと太もも

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「んっ……た、隆ちゃん…待って…ッ、あまり…動かないで…っ」

「え?」

 どこか痛みに耐えるような声。
 その珍しく弱々しい声を聞いて、隆臣は首を傾げる。

「飛鳥、どうし」
「髪、絡まってる……っ」

 すると、どうやらシャツのボタンに、飛鳥の髪が絡んでしまったらしい。

 隆臣が動くと、同時に髪もひっぱられるからか、飛鳥はそのせいで、痛みを感じているようだった。

「お前、ホント何やってんだよ! つーか、マジでいつ切るんだ、その髪!!」

「煩いなぁー! 絡まったものは仕方ないだろ! いいから、じっとしてて、今ほどくから」

「ほ、ほどくからって……ッ」

 ──このまま動くなってことか?

 早くこの体勢をなんとかしたいのに、動くことを静止され、隆臣は眉をしかめた。

 不可抗力的に組み敷いてしまった身体は、相変わず華奢だ。そして、今は髪を下ろし、メイド服を着ている。

 だからなのか、本当に、女の子を押し倒しているような、そんな錯覚すら覚える。

(っ……いつまで、この体勢でいればいいんだ)

 飛鳥とは長い付き合いだし、こいつが『男』だということは重々承知だ。

 だが、床に転がったまま真面目な顔で、自分のシャツに手を伸ばす飛鳥の姿は、流石に目に毒だった。

「隆ちゃん、もうちょっと近づいて」

「は?」

「なんか変な絡まり方してるんだよ。近づかなきゃ、うまくほどけない」

(何言ってんだ、コイツ)

 ただでさえ、30センチくらいの距離しかないのに、これ以上近づけと!?

「嫌だ。このまま、なんとかしろ」

「嫌だって……」

「神木くんッ!」

 すると、そんな二人を見ていた大河が、しどろもどろしながら声を上げた。

「あ、あの! スカートが! かなり肌けてるので! なんとかしたほうがいいかなと……!」

「え?  あぁ……」

 大河の言葉に、飛鳥は、改めて自分の服を確認する。すると、確かにスカートが太ももまで捲れ上がり、あられもない姿になっていた。

 オマケに、黒いストッキングから透ける肌が、やたらと色っぽく……

「ていうか、神木くん。すっごくエロい太ももしてますね?」

「は?」

「だって、細さが丁度いいというか、やわらかそうというか……今の神木くん、ホントに女の子にしか見えなくて……どうしよう」

「なにが、どうしようなの?」

「大河、惑わされるな! あと飛鳥、お前は早く髪をほどけ!!」

「そんなこと言われても」

 隆臣に再び急かされ、飛鳥は怪訝な顔を浮かべた。

 こちらだって、いつまでも友人に組み敷かれたままでいたくない。だが、思ったより複雑に絡んでいて、簡単にははずれなかった。

「はぁ~……」

 すると、隆臣がより一層深いため息をついて

「大河。そこの引き出しから、持ってきて」

「!?」

 そして、予想だにしていなかった言葉を告られ、飛鳥は瞠目する。

「ちょ、まさか切る気!?」

「あぁ、もうほどけないから、切るしかかないだろ」

「お前、人の髪なんだと思ってんの!? てか、毛先ならまだしも、けっこう中途半端なところから絡まってるんだけど!?」

「じゃぁ、あと3分でほどけ! 3分経ったら切る」

「鬼か!?」

「なら、早くなんとかしろ!!」

「なんとかしてほしいなら『もっと近づけ』って言ってるだろ!!」

 そう叫べば、怒りまかせに隆臣のシャツを掴んだ飛鳥は、グイッと自分の方へ引き寄せた。

 より距離が近づくと、飛鳥のその綺麗な顔が、眼前まで迫る。だが、その時だった──

「ただいまー。隆臣、お友達きてるの?」

 と、買い物から帰宅した隆臣の母・美里みさとが、突然、扉を開けてリビングに入ってきた。
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