461 / 554
第11章 恋と雨音
第433話 デートと最終手段
しおりを挟むゴールデンウィークが過ぎ去った頃。
あかりは、自宅でスマホを見つめながら、頭を悩ませていた。
ベッドの上で、壁に持たれかかりながら見ていたのは、引越や賃貸物件などが載った情報のサイトだ。
先日の大野の件で、さらに危機感を高めたあかりは、早く引っ越したいをばかりに、ネットの情報を読み漁っていた。
だが、やはり引っ越すとなると、それなりにお金がかかる。
アルバイトを始めたはいいが、まだ働き始めたばかりのため、引越し費用が貯めるには、まだしばらくかかりそうだった。
「うーん……シフトを増やせば、もう少し早く貯まるだろうけど、それで、勉強がおろそかになったら、まずいし……はぁ~~」
深~~~い溜息が漏れる。
今は、飛鳥が、彼氏のフリをしているから、大野も、あの程度で(それでもヤバいくらいが)済んでいる。
だが、だからと言って、いつまでも飛鳥に頼るわけにはいかない。
なぜなら──
(早くなんとかしなきゃ……これ以上、神木さんの傍にいたら、どうにかなっちゃいそう……っ)
頬を赤らめながら、あかりは、ここ最近の飛鳥の言動や行動を思い出した。
両思いだと気づかれてから、触れてくる指先も、囁かれる声も、何もかもが甘すぎるのだ。
しかも、顔面偏差値が、異常に高すぎるせいで、今となっては、目をあわせるだけで、ドキドキしてしまう。
昔は、あの顔をみても、なんの感情も抱かなかったのに、どうして、こうなってしまったのか!?
「はぁ……せめて、あの顔が、カボチャにでもなってくれたらいいのに……っ」
こんなことを言ったら、彼のファンに刺されそうだが、千年に一度の美男子と言われるほどの外見と、イケボの最強コンボ!
そして、そんな王子様のような煌びやかな美男子に、会う度に口説かれるのだ。
もう、首から上が、苦手なカボチャにでもなってくれなければ、身が持たない!
というか、普通は、フラれたら距離をおきたくなるものでは?
それなのに、フラれてからの立ち直りが早すぎた!
てか、イケメンて、あんなに立ち直りが早いの!?
もはや、見た目だけじゃなく、メンタルも最強なの!?
(あ……でも、メンタルは最強ではないか…ミサさんに、あんなに脅えてたし)
だが、ふと昔のことを思い出した。
初めて、飛鳥が、あかりの家にきた時のこと。
ミサを見て過呼吸を起こし倒れた飛鳥を、あかりは、家に招き入れ、介抱した。
あの時の彼は、すごく弱々しくて、見ていられなかった。それに──
『もう大丈夫……』
そう言って、笑った彼を見て、このまま帰してはいけないと思った。
ほっとけなかった。
なにより、怖くなった。
大丈夫じゃないのに『大丈夫』だと笑う彼を見て、あや姉のことを、思い出してしまった。
あの日、私に『大丈夫』といって
その日の夜に、命をたってしまった
あや姉を──…
──ピロン!
瞬間、スマホが音を立てた。
アプリを変え、受信したばかりのLIMEを見れば
【来週のデートだけど、待ち合わせは、10時に桜聖駅でいい?】
と、飛鳥のメッセージが表示されていて、あかりは、またもや頬を赤らめる。
「デ、デート……」
そして、その言葉に、酷く動揺する。
確かに、デートの約束をした。
先日、大野さんに粘着され、口裏をあわせるためにもデートをしておこうと、とりつけられた約束。
そして、ゴールデンウィークは人がごった返すためやめておこうと、連休開けに行くことなり、来週の木曜日に、隣町の映画館に二人で行くと話をまとめた。
そして、これが、その待ち合わせ場所を確認するメッセージなのだが……
「ほ、本当に、行くんだ……っ」
約束をしたのだから、今更、嫌とは言わないが、デートなどと言われると、否応なしに意識させられてしまう。
「っ……神木さん、あなたにとっては、デートなんてたいしたことじゃないでしょうけど……私にとっては、初めてのことなんですよ」
スマホを握りしめながら、小さく呟く。
何人も彼女がいた(らしい)神木さんにとっては、デートなんて、たいしたことではないかもしれない。
だけど、男性と付き合った経験がないあかりにとって、デートをするのは初めてのことだった。
いや、デートだけじゃない。
男の人を家にあげたのも
手を繋ないだのも
抱きしめられたのも
全部全部、初めてのことで
気がつけば、自分の初めてを、根こそぎ、彼が奪っていく。
その上、デートだなんて──
「どうしよう……っ」
本当に、デートなんてして大丈夫なのか?
飛鳥からのメッセージを見て、あかりは不安になる。
お互いに、両思いだと自覚したからか、飛鳥は、必要以上に、あかりを甘やかしてくる。
そして、甘やかさればされるほど、この気持ちが、どんどん大きくなっていくのが分かる。
だが、この気持ちを、受け入れてはいけないからこそ、あかりは苦悩していた。
(なんとかしなきゃ……このままじゃ、いつか流さるままに、OKしてしちゃいそう……!)
そう、気がつけば、言葉巧みに誘導されているのだ。
そのせいで、先日は、キスまでしそうになった!
何を血迷っていたのか!?
バカなのか、私は!!
しかも、それだけでなく、デートの約束までしてしまい、あかりは、完全に飛鳥に流されていた。
そう、このままでは、いつか『付き合う』とまで、いわされてしまいそうだ!!
「あーー、ダメダメ! それだけは、絶っっ対にダメ! もう、こうなったら、最終手段にでるしか……!」
すると、あかりは、それを回避すべく、新たな方法を考えついた。
このまま、流される訳にはいかない!
なにより、彼は『待つ』と言ったが、待たせるつもりすらないのだ!
だって、この先、雨が降ろうが、槍が降ろうが、私が神木さんと付き合うことは、一生ないのだから──!
***
そして、そうと決めたあかりは、次の日のバイト終わりに、また隆臣に泣きついていた。
「橘さん! 折り入って、ご相談があるのですが! 良かったら私に、神木さんの嫌いな女の子のタイプを教えていただけませんか!?」
「…………」
そして、そんなあかりと飛鳥の間に、板挟みになってしまった隆臣は、この先、更に悩まされることになるのだった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる