神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

文字の大きさ
487 / 554
最終章 愛と泡沫のアヴニール

第455話 正解ときっかけ

しおりを挟む

 すると、エレナは、つらつらと同伴者を並べ始める。

「華さんに、蓮さんに、あとは、飛鳥さんとあかりお姉ちゃん! それと、侑斗さんも行くかもって!」

「え、侑斗も?」

 そのメンバーを聞いて、ミサは、じっと考え込む。

 確かに、侑斗と飛鳥がいるなら、エレナを預ける相手としては申し分ない。

 だって、20歳以上の男が、二人もついてるのだから──

「というか、お母さんは、一緒に行けないの?」

「え?」

 瞬間、エレナが伺うような瞳で、ミサを見つめた。

 その表情は、期待と不安が入り混じるような、そんな、複雑な色をしていて

「あのね。私、できるなら、お母さんと一緒に夏祭りに行きたい」

「エレナ……っ」

 そして、その言葉を聞いて、ミサの胸は締め付けられる。

 確かに、これまで母娘で、夏祭りになど行ったことはなかった。

 夏祭りどころか、海も遊園地も行ったことがない。

 家から連れ出すのが、怖かったのだ。

 万が一、怪我でもしたら、モデルの仕事にも差し支える。

 だから、怖い思いをしないように、怪我をさせないように、家に閉じ込めていた。

 でも、エレナにとって、それは、あまりにも窮屈で、苦痛にすら感じることで……

(そうよね……普通は、家族で夏祭りに行ったりするわよね?)

 ミサだって、幼い頃は、両親と夏祭りに行っていた。

 楽しかった。
 夜に出かけるのは、なんだか特別で。

 だけど、そんな楽しい経験をしておきながら、エレナには与えなかった。

 臆病な自分は、ただ自分のためだけに、子供たちを閉じ込めていた。

 でも、それは間違いだった。

 閉じ込めて、危険を排除すればいいわけじゃない。
 
 子供を守るということは、そんなに単純なものじゃない。

 溺れるのが怖いからと言って、プールにも海にも連れて行かない。

 そんなのは、ただ親が楽をしたいだけで、本当は、溺れないように、泳ぎ方を教えてあげなきゃいけない。

 一緒に、海や夏祭りにいって、この子が自分から、危険を回避できるように──

「そうね。確かに、一緒に夏祭りにいったことはなかったものね」

「うん。華さんが、花火も上がるって言ってたよ!」

「そうなの? じゃぁ、私も行こうかしら?  あ。でも、私が一緒にいったら、飛鳥が嫌がるんじゃ……っ」

 だが、ふと気になったのは、もう一人の我が子のことだった。

 前に会社まで、お弁当を届けにきてくれた。

 とても、嬉しかったし、飛鳥と話ができて、ほっとした。

 でも、飛鳥にとって、自分は凄く酷い親で……

(楽しい夏祭りに、私が一緒にいたら、きっと、嫌がるわ)

 息子への接し方に迷っていた。
 どれが正解か、未だにわからない。

 でも……

「大丈夫だよ!」

「え?」

 その瞬間、エレナが叫ぶ。

「飛鳥さんは、そんなこと思うような人じゃないよ! 確かに、昔は色々あったけど、今のお母さんは、昔のお母さんと違うし。だから、飛鳥さんも、きっとお母さんが頑張ってるのは、わかってくれてるよ。だから、絶対大丈夫だと思う!」

「……っ」

 そういったエレナに、ミサは、じわりと涙をうかべた。

 正解なんて、わからない。

 それでも、エレナが、こうして笑っているすがたをみると、少しはマシな大人になれたのかもしれないと思う。

 大人だって、完璧じゃない。
 子供から、学ぶこともいっぱいある。

 我が子の成長を通して、気づかされることもいっぱいある。

 それに、嫌われるのが怖いからと、逃げてばかりいたら、何も変わらない。

 花見の時も、私は逃げた。
 飛鳥の反応が、怖かったから。

 でも、その後に飛鳥は、きっかけを与えてくれた。
 歩み寄るきっかけを。

 なら、それを無駄にしちゃいけない。

「そうね。私も行くわ。夏祭りに」

「ホント! やったー! じゃぁ私、あかりお姉ちゃんにも電話してくる!」

「え、あかりさんに? 今から?」

「うん! お姉ちゃんは、まだ誘ってないの。だから、これから」

「………」

 だが、その言葉に、ミサは、ふと思い出した。

「夏祭りって、確か月末だったわよね?」

「うん、8月の最後の土曜日」

「そう……じゃぁ、あかりさん、来れないかもしれないわ。月末に、ご家族が遊びに来るって言ったから」

「え?」

 瞬間、エレナは目を見開く。

「家族?」

「えぇ、この前、スーパーで、たまたま会った時に『夏休みは、実家に帰省したりしないの?』って聞いたら『今年は、母と弟が、こっちに泊まりに来るってる』って。ちょうど、夏祭りの日だったわ」

「えぇ!!?」

 夏祭りの日に、家族が泊まりに来る!?
 ということは──

(あかりお姉ちゃんを誘っても、来てくれないかもしれないってこと!?)
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...