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最終章 愛と泡沫のアヴニール
第488話 距離とアピール
しおりを挟む「なんか、一気に増えたなぁ」
若者たちが合流し、賑やかな光景をみつめながら、狭山が、しみじみと呟いた。
エレナたちと別れ、5人で行動を始めた飛鳥たち。
だが、その後、葉月と航太が合流し、あかりと理久も加わった。
そして、一気に9人という大所帯になり、狭山は思う。
さすが、神木くん!
目立たないようにしようと、二手に分かれたのに、吸い寄せられるように、人が集まってしまった!
「やっぱり、天性の人気者って、何もしなくても人が寄ってくるんだなー。目立ちまくってる」
「まぁ、飛鳥は華がありますからね。でも、あいつは、どちらかというと、目立つの嫌いなんですけど」
当の本人は、目立つのが嫌いだし、できるなら、普通に穏やかに生きたいと願っている。
だが、あの美貌と笑顔のせいか、周りが、それをさせてくれない。
(これまでもそうだったが、きっとこれからも、そうなのだろうな……)
狭山と会話をしながら、隆臣は目を細めた。
飛鳥は、普通には生きられない。
だからこそ、普通の恋もできない。
せっかく好きな女の子と、奇跡的に再会できたというのに、肝心のあかりは、飛鳥と距離をとっていた。
同じ空間にいても、先頭と最後尾くらいの距離が離れている。
きっと、このまま近づかないつもりなのだろう。
大学の人たちに見つかったら、ちょっと厄介なことになるかもしれないから……
(飛鳥のやつ、あかりさんの本心の聞き出すって言ってたけど、どうするつもりなんだ?)
人けの少ない本殿の前ならともかく、ここは祭りの会場内で、人が多すぎる。
きっと、会話をするのですら、一苦労だ。
「ちょっと、飛鳥兄ぃ。なんで、話しかけないの?」
すると、一向に攻めない兄に、華が痺れを切らしたらしい。少し、心配そうに問いかけた。
タイムリミットは、あかりの母親が合流するまで。
あまり、モタモタはしてられない。
「早く攻めなきゃ、あかりさんのお母さんが来ちゃうよ」
「わかってるよ。でも、あいつ、俺と話す気ないみたいだし」
ちらりと、あかりを見れば、かなり距離をとり、一向に目を合わせようとはしなかった。
きっと、このまま逃げ切るつもりなのだろう。
「まさか、もう嫌われちゃってるとかじゃないよね?」
「え?」
「だって、映画ドタキャンしたんだよ! その後の埋め合わせも、全くしてないし。振って正解の男だったとか思われてるんじゃ……っ」
「…………」
我が妹ながら、なかなかエグいことを言ってくる。
ちなみの双子は、飛鳥とあかりが両思いだとは知らない。
兄は、あかりさんに振られて、それでも諦められなくて、今も、しぶとく頑張ってると思っている。
(……埋め合わせしたくても、完全無視で、連絡取ろうにもできなかったんだけどな)
そして、そんな華の言葉を聞いて、飛鳥は心の中で、ぼやいた。
とはいえ、既読スルーされていたなんて、双子には口が裂けても言えない。
しかし、あかりのあの態度のせいか『お兄ちゃんは、あかりさんに嫌われてしまったのでは!?』と双子は、不安になり始めていた。
「ねぇ、もしかして、もう見込みないんじゃ?」
「まぁ、三ヶ月も放置されたら、怒って当然だよな」
(いやいや、放置してないし! 懲りずにラインは送ってたし!)
双子の言葉にツッコミたいのを、必死に堪える。
例え、返事はなくても、飛鳥は、あかりにメッセージを送り届けていた。
だが、それを知らない華と蓮は、飛鳥の方が、あかりさんを放置していたと思っていた。
まさに、兄の心、双子知らず!
まぁ、あのあと、一切、会っていないのだから、そう思われても仕方ないが……
「大丈夫だよ。確かに、三ヶ月会ってないけど、嫌われてはいないよ」
「ほんとに?」
「ホント」
そう、きっと、嫌われてはいない。
それは、さっき再会した時に確信した。
目を見れば、すぐにわかった。
あかりの視線は、今も優しかったから。
少なくとも、嫌いな相手を見る目じゃなかった。
だから、自分たちの指には、まだ赤い糸は繋がってる。
でも、あかりは、その糸を解こうとしてる。
ほどいて、『独《ひと》り』になろうとしてる──…
「飛鳥兄ぃ! まだ、見込みがあるなら、もう、あの手段しかないよ!」
「え?」
すると、華が、最後の手段だと言わんばかりに、真剣な顔をした。
どうやら、あかりを口説くための手段らしい。
華は、ぐっと拳を握り締めると
「こうなったら、もうお金だよ! 今日は、あかりさんがほしいものを、なんでも買ってあげるの! 顔もダメで、性格もダメなら、あとは、財力でアピールするしかない!」
「!?」
財力!?
もはや、なりふり構っていられないのか、マジな究極手段に出てきて、飛鳥は驚愕する。
「お前、それ本気で言ってるの!?」
「言ってるよ! いい、なんだかんだ女の子は、お金持ってる男の人に弱いんだよ! そう、本に書いてあった!」
「どんな本だよ!?」
確かに財力は、ひとつのアピール手段だろう。
だが、あかりが、それで釣れるとは思えなかった。
とはいえ、せっかく会えたのだし、ご飯を奢ろうとは思っていた。
映画館に行く時も、そのつもりだったから……
「姉ちゃん、唐揚げあった」
「あ、ホントだ。すみません、一つ、いただけますか?」
すると、ちょうどあかりたちが、出店の前で立ち止まった。
先に夕飯にしようと、今は、みんなで出店を巡りながら、移動していた。
すると、これは丁度いいと、飛鳥は、あかりの横に立つと
「すみません。それ、あと3パック追加してください」
そう言って、店員に、自分たちの分も注文すると、飛鳥は、あかりたちの分と合わせて、全員分のお金を支払った。
「はい。どうぞ」
「え?」
そして、その内の一つを、あかりに手渡せば、あかりは、目を丸くする。
あまりにもスマートに、奢られてしまった。
断るスキすら、与えられないほどに──…
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