『実は毒トマトはSFを知らない』

雨だれ

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実は毒トマトはSFを知らない

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 私の名前は毒トマト。
 むろん本名ではなく作家名だ、実名は控える。
 私の描く小説は常に落書きのようなもので、適当な文章を組み合わせただけの、なんちゃってなものである……のはずなのに、何故かいつの間にか家族によって出版社に持ち込まれ、いつの間にか幾つも賞を取ってしまった。
 相も変わらず適当に書いているのにうまいこと言ってしまうこのジレンマは、私に成功の喜びも与えぬまま、時間だけを浪費させていった。
 つまるところ『本気で書いた物は見向きもされなかった』ということである。
 微塵も見向きもされず、評価されず、ネットに挙げても酷評の嵐で、泣きそうになった。
 とりあえず適当に書けば売れるから、もはや物を書くということに対する情熱は氷山の如く冷え切っていた。
 あー、はいはい、こういう話書くからね~、みたいな作業感の酷いアレだ。
 私は決してクズでもなければ、カスでもない。
 ただ私には一生懸命をすれば上手くいかない星の元に生まれただけである。
 面もあれだし。
 いや実名も実態も必要のないこと。
 今の私は毒トマト。
 しかし。
 なんだって私の名前は毒トマトなのだろうか。
 これは家族が勝手に決めたのだから、私には一切わからない。
 まあ、それはいいとして。
 次回作。
 久しぶりに腰を据えて書きたいと思っている。
 むろん、これは売れないと理解している。
 だが、私には久々に情熱が戻り、こう書きたい欲というものが湧いて出てるのだ。
 本当に数年ぶりにである。
 で。
 今まで書いたことのないものを書こうと思っていて、それが丁度、SとFなものであった。
 つまり、SFである。
 ここで一つ問題があった。
 私は微塵もSFを知らなかったのだ。
 いや、知っている、知っているとも。
 わかるともわかるとも。
 ガ〇ダムとか、ス〇ーウォーズ、ってことだろ?
 わかるわかる。
 なんかこう、機械が、ウィーンって、ガキーンって、で、レーザーとかがピュピュピュン、って感じの。
 そういうあれだろ?
 変な液体ゴクゴク飲んで、変な生き物がいて、地球の出来事を宇宙規模にしてるだけだろ?
 書ける書ける。
 だって私だし。
 毒トマト、なんだぜ?
 書ける書ける。
 本気本気。
 ……。
 …………。
 書けるよな?

   〇

 毒トマト先生の新作、なんちゃってSF(作者自称)『ガンウォーズ』は世界的ベストセラーとなった。
 壮大なストーリーと散りばめられた伏線、そして怒涛の回収。
 わずか三巻の内に描かれた壮大なスペースオペラは多くの読者を魅了させた。

 なお作者は『本気で書けなかった』とコメントを残していて、これを上回るSF作品に意欲的である。
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