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第24話『心の光とは、他者を思いやる心に生まれる』
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アーサーという男はおよそ俺の知り限り、敗北という言葉を一度だって持ったことのない男だ。
それは魔王やら邪神やら化け物やらを相手にしている時もそうだし。どこかの世界に行って女の子たちに囲まれている時もそうだ。
誰よりも強く。誰よりも格好いい。それがアーサーである。
しかし、そんなアーサーでも勝てない物が存在している。それが俺にはそれなりに衝撃であった。
「くっ!? こいつ、また」
アーサーが切り払った闇は、すぐ何事も無かった様に元の姿に戻ってしまう。
ラナ様が聖女でしか倒せない的な事を言っていた意味は、こういう事だったのだ。
どれだけの力を持っていたとしても、この世界の聖女でなければ闇を滅ぼすことは出来ない。
そういう事なのだろう。
ラナ様は曇らせできゃっきゃしているだけでは無かったんだな。
……。
というか今気づいたが、ラナ様教会の中に居たけど、潰れてしまったんだろうか。
「ようやく思い出してくれましたか? タツヤさん」
「ご無事でしたか。ラナ様」
「これでもそれなりに修羅場はいくつも経験していますからね」
何でもない事の様に笑うラナ様に、俺はため息をこぼしながら語りかけた。
「ラナ様。ラナ様の計画を崩してしまい申し訳ないですが、協力していただけますか?」
「……」
「ラナ様?」
「どうやらタツヤさんの中で私は酷い悪女の様な扱いになっている様ですが、誤解を解くのは会社に戻ってからにしましょう」
「……?」
「何度も繰り返したこの世界で、ようやく光が見えたのです。私はこのチャンスを逃すつもりはありません」
ラナ様は強い意志の込められた瞳で俺を射抜くと、俺の周りにうごめいていた闇を切り離して、俺を導きながらアンちゃんたちの所へと降りるのだった。
切り離されたとしても、闇は変わらず俺の周りで蠢いている。
俺はとにかくこれ以上闇の影響を受けない様にとエリスお嬢様を地面に降ろして、少し離れた場所に動くのだった。
「エリスさん!」
「良かった。無事だったんですね!? 流石は私の旦那様です!」
「アンさん。今はふざけている場合じゃないですから」
「……アン、ミティア。ごめんなさい。わたし」
「良いんですよ。誰にだってどうしようもなく気持ちが抑えられない時はあります」
「そうそう。あんまり気にしちゃだめですよ! それに私の結婚式で悔しい思いをして、泣くことになるんですから。良い予行演習になったじゃないですか!」
「少し黙ってなさいな。アンさん」
「二人とも……」
笑い合う女の子たちを見ながら、俺は大きく息を吐いた。
そして、近づいてきた爺さんとライアン殿下に視線を向ける。
「タツヤ!」
「殿下。それ以上近づかないでください。心に闇があれば、こいつに取りつかれます」
「っ! じ、爺! どうにか出来ないのか?」
「申し訳ございません。私もこの闇なる存在には詳しくなく」
「そんな、何か手段はないのか?」
殿下のすがりつく様な言葉に反応したのはラナ様だった。
いつもの温和な笑顔ではなく、勇者の様な頼りがいのある表情で応える。
「方法はあります。闇の力には聖女の力です。聖女の力であれば闇を消し去る事ができます」
「でも! それじゃあタツヤさんも死んでしまうんですよね?」
「えぇ」
「では何か他の方法は無いのですか?」
「……一つだけ。とても危険な方法ですが、あります」
「なんですか!? 教えてください!」
「闇にとって、タツヤさんの体は住み心地の良い場所ではありません。それはタツヤさんがこの世界の人間では無いからです。今は聖女から逃げる為に仕方なく入り込んでいるだけ。なら、もしタツヤさんの前に闇にとって住み心地の良い体が現れたらどうでしょうか?」
「飛び移ろうとするって事ですか? でも、それじゃあ結局誰かが死んでしまうって事じゃないですか!」
「話はまだ終わりではありませんよ。聖女アン」
「っ!」
「闇が乗り移れるのは心に闇を抱えた人間。しかし、タツヤさんの体を出て、乗り移ろうとした闇が乗り移る前に、消えてしまったらどうでしょうか?」
「……誰にも乗り移る事が出来なくなる」
「そういう事です」
ラナ様の言葉に、全員が無言のまま互いを見つめ合っていた。
迷っているのか。考え込んでいるのか。
分からないが、そうなる理由は分かる。
当然だろう。心に闇を描いて、それを消す? どういう状態だそれは。
「そう難しく考えなくても良いですよ。ただ、皆さんが心の底から嫌だった思い出を思い出し、乗り移られる直前にそれを幸せな思い出で塗り替えるんです」
「ラナ様。言うのは簡単ですけど、そう簡単じゃないですよ。それなら、俺を殺して出てきた闇を消し去る方が良い」
「駄目!!」
「……エリスお嬢様」
「私は、もう二度と、タツヤを傷つけたくない。だから、囮には私がなるわ」
「エリスさん! なら私が!」
「何言ってるのよ。アン。貴女は闇を消す係でしょ? タツヤから出てきた闇を消す事に集中しなさい」
「ふむ。ではようやく私の出番が来たようだな! この王の背中! よく見ているがいい!」
「いえ。殿下にその様な危険な真似はさせられません。危険な役であれば、この老体が相応しいでしょう」
「殿下も、リベハント卿も、エレルニア王国にとってなくてはならないお方。下がっていてください」
「それならば、私が適任かと。これでも感情のコントロールはこの場に居る誰よりも上手い自信がありますわ」
「ミティア。良いから。私に譲りなさい。私は一度闇に乗っ取られてる。アイツの好みは良く分かるわ。それに、何を嫌がるのかもね」
「……エリスさん」
「だから、ミティア。私と手を繋いでいて」
「分かりました! 何があろうと、私は絶対にこの手を離しませんよ!」
「じゃあ私も! みんなで乗り越えましょう! あんなの! 全部全部綺麗にしちゃいますから!」
「ミティア。アン。ありがとう……! じゃあ、やる!」
エリスお嬢様は両手をアンちゃんとミティア様に繋ぎながら、俺の前に立った。
そして、目を閉じて、息を吐く。
次の瞬間俺の中から闇が飛び出して、アーサーの所で戦っていた闇も空から降ってきて巨大な闇の塊になるのだった。
蠢くその体はおぞましく、エリスお嬢様の闇を映しているのか、エリスお嬢様の両親や、エリスお嬢様を虐げる人間の声で鳴いているのだった。
しかし、闇がエリスお嬢様に近づこうとした瞬間、エリスお嬢様は目を見開き、真っすぐに闇を見つめ、その姿を拒絶する!
「もう私は、友達の想いを裏切らない!!」
『おぉおおお……ぉぉおぉおおお!?』
「アンさん! 今です!!」
「てやぁあああ!! 聖女ぱわー!!」
それは様々な世界で、世界を救う者たちが見せた光と同じ、希望と奇跡で作られた人の心の光だった。
闇はたまらず、のたうち回りながらその体を光に焼かれ、欠片も残さず、この世界から消えてゆく。
残されたのは、右手を前に向けながら息を荒くしている聖女アンと。
彼女を支える為に抱き着いていたエリスお嬢様と同じくエリスお嬢様ごと二人を抱きしめていたミティア様であった。
「……終わりましたね」
「えぇ、そうですね」
俺はラナ様の言葉に頷きながら、地面に仰向けで倒れた。
生きている。
大いなる闇の力を振り払って、俺たちは勝利したのだった。
「ミッションコンプリート……!」
それは魔王やら邪神やら化け物やらを相手にしている時もそうだし。どこかの世界に行って女の子たちに囲まれている時もそうだ。
誰よりも強く。誰よりも格好いい。それがアーサーである。
しかし、そんなアーサーでも勝てない物が存在している。それが俺にはそれなりに衝撃であった。
「くっ!? こいつ、また」
アーサーが切り払った闇は、すぐ何事も無かった様に元の姿に戻ってしまう。
ラナ様が聖女でしか倒せない的な事を言っていた意味は、こういう事だったのだ。
どれだけの力を持っていたとしても、この世界の聖女でなければ闇を滅ぼすことは出来ない。
そういう事なのだろう。
ラナ様は曇らせできゃっきゃしているだけでは無かったんだな。
……。
というか今気づいたが、ラナ様教会の中に居たけど、潰れてしまったんだろうか。
「ようやく思い出してくれましたか? タツヤさん」
「ご無事でしたか。ラナ様」
「これでもそれなりに修羅場はいくつも経験していますからね」
何でもない事の様に笑うラナ様に、俺はため息をこぼしながら語りかけた。
「ラナ様。ラナ様の計画を崩してしまい申し訳ないですが、協力していただけますか?」
「……」
「ラナ様?」
「どうやらタツヤさんの中で私は酷い悪女の様な扱いになっている様ですが、誤解を解くのは会社に戻ってからにしましょう」
「……?」
「何度も繰り返したこの世界で、ようやく光が見えたのです。私はこのチャンスを逃すつもりはありません」
ラナ様は強い意志の込められた瞳で俺を射抜くと、俺の周りにうごめいていた闇を切り離して、俺を導きながらアンちゃんたちの所へと降りるのだった。
切り離されたとしても、闇は変わらず俺の周りで蠢いている。
俺はとにかくこれ以上闇の影響を受けない様にとエリスお嬢様を地面に降ろして、少し離れた場所に動くのだった。
「エリスさん!」
「良かった。無事だったんですね!? 流石は私の旦那様です!」
「アンさん。今はふざけている場合じゃないですから」
「……アン、ミティア。ごめんなさい。わたし」
「良いんですよ。誰にだってどうしようもなく気持ちが抑えられない時はあります」
「そうそう。あんまり気にしちゃだめですよ! それに私の結婚式で悔しい思いをして、泣くことになるんですから。良い予行演習になったじゃないですか!」
「少し黙ってなさいな。アンさん」
「二人とも……」
笑い合う女の子たちを見ながら、俺は大きく息を吐いた。
そして、近づいてきた爺さんとライアン殿下に視線を向ける。
「タツヤ!」
「殿下。それ以上近づかないでください。心に闇があれば、こいつに取りつかれます」
「っ! じ、爺! どうにか出来ないのか?」
「申し訳ございません。私もこの闇なる存在には詳しくなく」
「そんな、何か手段はないのか?」
殿下のすがりつく様な言葉に反応したのはラナ様だった。
いつもの温和な笑顔ではなく、勇者の様な頼りがいのある表情で応える。
「方法はあります。闇の力には聖女の力です。聖女の力であれば闇を消し去る事ができます」
「でも! それじゃあタツヤさんも死んでしまうんですよね?」
「えぇ」
「では何か他の方法は無いのですか?」
「……一つだけ。とても危険な方法ですが、あります」
「なんですか!? 教えてください!」
「闇にとって、タツヤさんの体は住み心地の良い場所ではありません。それはタツヤさんがこの世界の人間では無いからです。今は聖女から逃げる為に仕方なく入り込んでいるだけ。なら、もしタツヤさんの前に闇にとって住み心地の良い体が現れたらどうでしょうか?」
「飛び移ろうとするって事ですか? でも、それじゃあ結局誰かが死んでしまうって事じゃないですか!」
「話はまだ終わりではありませんよ。聖女アン」
「っ!」
「闇が乗り移れるのは心に闇を抱えた人間。しかし、タツヤさんの体を出て、乗り移ろうとした闇が乗り移る前に、消えてしまったらどうでしょうか?」
「……誰にも乗り移る事が出来なくなる」
「そういう事です」
ラナ様の言葉に、全員が無言のまま互いを見つめ合っていた。
迷っているのか。考え込んでいるのか。
分からないが、そうなる理由は分かる。
当然だろう。心に闇を描いて、それを消す? どういう状態だそれは。
「そう難しく考えなくても良いですよ。ただ、皆さんが心の底から嫌だった思い出を思い出し、乗り移られる直前にそれを幸せな思い出で塗り替えるんです」
「ラナ様。言うのは簡単ですけど、そう簡単じゃないですよ。それなら、俺を殺して出てきた闇を消し去る方が良い」
「駄目!!」
「……エリスお嬢様」
「私は、もう二度と、タツヤを傷つけたくない。だから、囮には私がなるわ」
「エリスさん! なら私が!」
「何言ってるのよ。アン。貴女は闇を消す係でしょ? タツヤから出てきた闇を消す事に集中しなさい」
「ふむ。ではようやく私の出番が来たようだな! この王の背中! よく見ているがいい!」
「いえ。殿下にその様な危険な真似はさせられません。危険な役であれば、この老体が相応しいでしょう」
「殿下も、リベハント卿も、エレルニア王国にとってなくてはならないお方。下がっていてください」
「それならば、私が適任かと。これでも感情のコントロールはこの場に居る誰よりも上手い自信がありますわ」
「ミティア。良いから。私に譲りなさい。私は一度闇に乗っ取られてる。アイツの好みは良く分かるわ。それに、何を嫌がるのかもね」
「……エリスさん」
「だから、ミティア。私と手を繋いでいて」
「分かりました! 何があろうと、私は絶対にこの手を離しませんよ!」
「じゃあ私も! みんなで乗り越えましょう! あんなの! 全部全部綺麗にしちゃいますから!」
「ミティア。アン。ありがとう……! じゃあ、やる!」
エリスお嬢様は両手をアンちゃんとミティア様に繋ぎながら、俺の前に立った。
そして、目を閉じて、息を吐く。
次の瞬間俺の中から闇が飛び出して、アーサーの所で戦っていた闇も空から降ってきて巨大な闇の塊になるのだった。
蠢くその体はおぞましく、エリスお嬢様の闇を映しているのか、エリスお嬢様の両親や、エリスお嬢様を虐げる人間の声で鳴いているのだった。
しかし、闇がエリスお嬢様に近づこうとした瞬間、エリスお嬢様は目を見開き、真っすぐに闇を見つめ、その姿を拒絶する!
「もう私は、友達の想いを裏切らない!!」
『おぉおおお……ぉぉおぉおおお!?』
「アンさん! 今です!!」
「てやぁあああ!! 聖女ぱわー!!」
それは様々な世界で、世界を救う者たちが見せた光と同じ、希望と奇跡で作られた人の心の光だった。
闇はたまらず、のたうち回りながらその体を光に焼かれ、欠片も残さず、この世界から消えてゆく。
残されたのは、右手を前に向けながら息を荒くしている聖女アンと。
彼女を支える為に抱き着いていたエリスお嬢様と同じくエリスお嬢様ごと二人を抱きしめていたミティア様であった。
「……終わりましたね」
「えぇ、そうですね」
俺はラナ様の言葉に頷きながら、地面に仰向けで倒れた。
生きている。
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