異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-少女たちの冒険譚-

とーふ(代理カナタ)

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第19話『さぁ、始めよう。闇の時代を!』 3/3

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これが外れれば異常を感知した国連議会が、ここに来る。

そうすれば、どんな野望だって無意味だ。

無意味、なのに!

「は、外れない……? どうして」

「クハハハ。外れる訳が無いだろう。それは首輪だぞ? 君を闇の聖女とする為に、私が作った特別な首輪だ」

「私が、作った?」

「そうさ。国連議会を通してな。今日まで世界の為に聖女として生きると、悲壮な覚悟で生きてきた君は実に滑稽だったよ。君自身の祈りが今ある世界を滅ぼし、新たなる闇の世界を創世するというのにな! さぁ、始めよう。闇の時代を!」

「い、いや……」

私は深すぎる雪の上を転がる様な勢いで逃げようとした。

しかし、その先でシュンさんと戦っていた人にぶつかってしまう。

「何処へ行く? 逃げ場は無いぞ。闇の巫女。分かっているのだろう? アダラードは既に国家連合議会を掌握済みだ」

「っ! せ、世界が闇に包まれても、貴方の理想とする光の道を作る事は出来ないハズです! 天霧宗謙さん! だって島風は、天斬りは、シュンさんが」

「あぁ。あの出来損ないの事か。アレならもはや要らぬ。私は始まりの刀を手に入れた。天霧家初代当主が天霧家へ残した物ではない! 真なる天斬りの刀! 『峯風型第四刀 島風』を!」

「しま、かぜ……」

「そうだ。瞬の持つ島風は初代様の島風を模倣して造られた物。所詮はまがい物よ。故に!! 『天斬り』」

天霧宗謙は私の前で神刀に手を掛けて、何かをした。

その何かは私には分からなかったけれど、着ていた服の前が斬られてペンダントが露出し、空に浮かんでいた雲を真っ二つに切り裂いた。

それはいつかの時、シュンさんが話していた物と同じ物であった。

そして、雪の上に仰向けで倒れながら、たった一人、どうしようもない状況に呆然としていた私は、胸から発する痛みに、その痛みの元を取り除こうとペンダントを握った。

しかし、外れない。

「始まったか」

「さぁ、君の力を使ってこの世界を終わらせよう。さぁ祈れ、幸せを。願え、世界中に生きる人々の幸福を、それが世界を破滅させる為の力となる」

「あぁぁあああ!!!」

痛みが、頭の中をかき回す様な吐き気が、私の体を襲い、私は叫んだ。

そして、薄れてゆく意識の中で見た物は、まさに世界を破壊し、絶望させる為の力。

「おぉ……素晴らしい。まさかここまで巨大な物が出来るとは」

「まさに創世に相応しい姿だ」

「……ドラ、ゴン」

私はソレに向かって手を伸ばすが、空を飛んでいるドラゴンに手が届く訳もなく、私の手は雪の上に落ちるのだった。

どうか、どうか。お願いします。

誰かあのドラゴンを止めて下さい。

お願いします。

誰か……。

オーロさん。シュンさん。

……セオ殿下。
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