聖女の証

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
163 / 198

第65話『無理なんかしてないよ。ちゃんと頑張れる! だから、嫌いにならないで』

しおりを挟む
キャロンさんも仲間に加わり、私たちは商業都市ダキンを出て、聖都を目指してまた旅を再開した。

のだけけれど……リアムさん達は聖都に行く事にあまり乗り気では無いようだった。

「聖都はそんなに危ない場所なのですか?」

「いや、アルマの聖剣がある以上どこよりも場所としては安全だよ。ただ……なぁ」

「そうね。問題は大司教よね」

「そうだなぁ」

「リアム兄ちゃん。アイツと知り合いなんだろ? 何とかならないのか?」

「何とかならん事もない。が、それをすると聖都に二度と近づけなくなるな」

リアムさんは腰に差していた剣を手に取って、神妙な顔で頷く。

その行動はつまり、その剣でその大司教という人をアレしてしまうという事だろうか。

なんと恐ろしい!

「え? え? その様な危険な人が聖都には居るのですか? リアムさんが手を下さねばならないほどの人が!」

「あぁ」

「そ、そんな。世界で一番安全な場所なんですよね?」

「リリィちゃんの言う通りだ。間違いないね」

「あの伝説のアルマが居た場所なんですよね?」

「そうね。ついでに言うなら、シャーラペトラが居た場所でもあるわ」

「そんな場所に、そんな怖い人が居るんですか!?」

「うん。そうだよ。リリィ」

「……」

まさかまさかの事態である。

その様な人がいるのでは、お姉ちゃんが帰ってきてからも何かと危ないのではないだろうか。

いや、待て。

危ない危ないとは言っても、私やお姉ちゃんが関係ない可能性もある。

「あの。一応確認なんですけど。何がどの様に危ないのでしょうか? 私やお姉ちゃん。それに皆さんが関係あったりはしますか?」

「関係か。いや、俺たちは無いな」

「あっ、そうなんですね」

良かったと言おうとして、それよりも早くリアムさんが残酷な事実を告げる。

「関係しているのはお前とアメリアだけだ」

「えぇ!? 私と、お姉ちゃん!!?」

「あぁ。そうだ。お前たちが聖都に近づいた場合、とてもよくない事が起きる。その原因は大司教という奴だ」

「そ、そんな……」

まさかそんな事になっていたとは。

でも、なんで私とお姉ちゃんが危険なのだろう?

狙われているという事?

でも、そんな覚えは……いや、まさか。

まさか!! お姉ちゃんが可愛すぎて、大司教とかいう人に目を付けられたのでは!?

いや、あり得ないか。

偉い人がそんな事する訳無いよね。

いやでも、それなら偉い人と私たちに何の関係があるんだって話で……。

「むむむ」

「あー。リリィ? あまり深く考えなくても良いわよ? 大司教にはリアムだけで会う事になったから。リリィに何も怖い事は無いからね」

「そうですか?」

「えぇ。報告だけ終わったら、もう聖都に近づかなければ良いし。何かあっても私たちが居るから。貴女もアメリアも絶対に大丈夫」

「そういう事でしたら……考えるのは止めておきます」

「そうね。それが良いわ」

キャロンさんの話を聞き、私は小さく頷いた。

怖いものには近づかない。それはお姉ちゃんもよく言っていた事だ。

なら、私もそうしよう。



そして、聖都での行動を話し終わり、私たちは夕食の準備を始めていた。

今日は森の途中で野宿だ。

という訳で、リアムさんとフィンさんとカーネリアン君は寝床の準備やたき火用の枝やら何やらを拾いに行っている。

そして私はキャロンさんと一緒に食事の準備だ。

しかし……。

「キャロンさん。料理上手なんですね。お姉ちゃんみたいです」

「そう? まぁ、沢山練習したからね」

「そうなんですね! じゃあ私も練習しないとなぁ」

「あら。リリィも料理が上手になりたいの?」

「はい! お姉ちゃんみたいに!」

「……そう。それは素敵な目標だわ」

キャロンさんは穏やかに笑って、私の夢を褒めてくれる。

お姉ちゃんもそうだったが、やはり褒める人というのは偉大だ。

私のやる気を無限大に増やしてくれる。

「むふー。いよーし。頑張るぞー!」

「ふふ」

そして私は、キャロンさんと一緒に料理の練習をしつつ、今日の夕食を完成させた。

昨日まではとりあえず肉を焼いて、食べる! という様な物だったのに、今日の夕食はなんとシチューだ。

驚きである。

「んー! おいしい!! まるでお姉ちゃんが作ったみたいな味です!」

「練習したからね」

「……そうか」

「何よ。リアム」

「いや、何でも無いさ。ただ、何となくこの場所に居ると思い出してな」

「あー。激辛の肉と激甘のシチューか? あれは酷かった」

「なんですか? その激辛のお肉と激甘のシチューというのは」

私はふとお皿を見ながら気になる言葉を投げたリアムさん達に問うた。

そして、そんな私の問いにリアムさんは酷く懐かしい事を思い出す様にお皿を見ながら呟く。

「アメリアと一緒に旅をしていた時の事だ。俺たちが飯の味で喧嘩になってな。それに怒ったアメリアが極端な味の飯を出してきたのさ」

「あー。なるほど。お姉ちゃんならやりそうですね」

「家でもやった事あるの?」

「はい。似たような話ですが、ありますよ。あ、いや。似てないのかな。んー。でも、料理でお姉ちゃんが怒った話だから同じ話ですかね」

私は昔の話をゆっくりと思い出しながら口にする。

「昔は私、好き嫌いが結構ありまして。しかもそれがその日の気分とかで変わっていたんですね。まぁ、今思えば、お姉ちゃんに構って貰いたくて、我儘を言っていただけだったんですが、それである日お姉ちゃんが酷く怒ってしまったんです」

目を閉じて、頭の中でお姉ちゃんとの会話を思い出す。

『リリィ。ご飯はちゃんと食べないとだめですよ』

『やだー! リリィ。苦いの嫌いだもん! これ食べてると、口の中、ずっとずっと苦いんだもん。もう食べたくない!!』

『……そうですか。じゃあ分かりました。リリィはもう食べなくて良いです』

『え? お姉ちゃん?』

「私が我儘を言うと、お姉ちゃんは大抵しっかりと食べなさいとか。お姉ちゃんも一緒に食べてあげるからね。と言ってくれるんですが、その日は、もう食べなくて良いと食器を下げてしまったんです。私、何だかそれが怖くて、このままお姉ちゃんに見捨てられてしまうと怖くて、必死に食べると言っていました」

『食べる! 食べるから!!』

『本当ですか? 無理はしなくても良いんですよ?』

『無理なんかしてないよ。ちゃんと頑張れる! だから、嫌いにならないで。リリィ食べられるから! ほら……! お、いしいよ?』

『……リリィ。ありがとうございます。食べてくれて。でも、明日からはもっと美味しくなる様に料理しますね』

「結局、私はその出された物を全部食べたんですが、無理をしていたのが丸わかりだったからか、次の日からお肉に混ざったり、味が変わったりとしていきました。でも、あの日以来、私はお姉ちゃんのご飯を残そうと思った事は無いですね。何か怖くて」

「なんかアメリアらしい話ね。多分本人はそこまで深く考えてないんでしょうけど、周りがあの子の行動にあわあわしちゃうのよね」

「味付け問題もそんな感じだったしな」

「そう言えば、あの問題はどうやって解決したんだっけか」

「んー。どうだったっけ」

「あ、そうだよ。魚釣りだ! 魚釣りで解決したんだ!」

魚釣りとカーネリアン君が言った事で、私は思わず顔を上げてカーネリアン君を見た。

そして、憧れのソレに手を伸ばすのだった。

「魚釣りですか!? 私もやってみたいです!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」 ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。 ■あらすじ 聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。 実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。 そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。 だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。 儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。 そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。 「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」 追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。 しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。 「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」 「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」 刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。 果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...