最強ショタ魔王の家出録〜ショタ化した元おっさん、偶然出会った勇者と共に世界平和を目指します〜

青王(あおきんぐ)

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5章 第三、第四の街 ブリジア・ギガンテス

66話 汚染

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 翌日、俺は誰よりも早く目を覚ました。
 それは前日の無念を晴らす為だ。

 他のみんなを起こさないようにそーっと部屋を出ると早足で廊下を奥まで駆け抜けた。
 そして青と赤に色分けされた暖簾が掛かった入口の前に立ち俺は不敵な笑みを浮かべる。

「くっくっく……。こんな朝早くにショタが一人で女湯に入っているとは誰も思うまい。そして、そのショタの中身が四十歳のおっさんであるという事もなァ……!!」

 そして俺は意気揚々と赤の暖簾をくぐり聖域へと足を踏み入れた。

 ※日本では七歳以上の男の子供は女湯に入ってはいけないと条例で定められています。
 

 ◇


 俺は秘密の花園《脱衣所》の中を目を血走らせながらぐるりと見回した。
 しかしそこには俺が期待したようなものは何も無く、人っ子一人いなかった。

「なんだ……誰もいないのか。まぁいい。中に入ればきっと……!」

 そして俺は目にも止まらぬ速さで衣服を脱ぎロッカーへ放り込むと、鼻息を荒くしながら楽園《浴場》への扉を開いた。

 しかしそこにも誰もおらず、ただただ無機質にジョボジョボと温泉が湧き出る音だけが響いていた。

「ふん……。まぁまだ早朝だしな。待っていれば誰かしら入ってくるだろう。まだ慌てるような時間じゃない」

 俺はそう独り言を呟くと、身を清め、聖なる泉《湯船》に浸かった。


 ◇


 それから暫く、時間にして三十分は経過した頃だろうか。
 湯船に浸かり続けるのにも体力がいる。
 俺は身体に熱がこもりすぎて流石に限界が来そうだった。

「暑っつい……。それにしても誰も来ないな? 温泉旅館といえば起き抜け早々に朝風呂は鉄板だろ?」

 そんな独り言を呟きながら俺は水風呂から手ですくいとった水を身体にかける。

「ひぇーーっ、気持ちいぃー……」

 そんな事をしていると脱衣所の方から何やら話し声が聞こえて来る。

「お? 漸くお客さんがおいでなすったか? こうしちゃいられない……! 無垢なショタを演じて湯船に浸かり直さねば……!」

 そうして俺は再度、この浴場で一番大きな湯船に浸かり入口に背を向けた状態でその声の主達を待った。

 ◇

 待ち続けること数分。
 漸く声の主達は浴場へと入って来た。

「あら……? 一人男の子がいるわね?」

「あらほんと! 可愛いわぁ?」

 声の主達は早速俺に気が付くと、ヒソヒソと何やら話し始めた。
 
 ――ふっふっふっ。
 俺はこの時を待っていたのだ……!
 さぁ、声を掛けてこい!
 そして存分に俺をチヤホヤするがよい!!

「ぼくぅー? 一人なのかなぁー?」

「よかったらー、ワタシの背中、流してくれないかしらぁん?」

 ――待ってました……!!
 前世で四十年間も童貞を貫いた俺が大人の女性の背中を流す日が来るなんてな。
 凄く暑かったけど待っててよかった。
 少し声が低い気もするが気にしないさ。
 きっと綺麗なお姉さんで間違いないのだから……!

「はいっ! 喜んで!!」
 
 そして俺は満面の笑みで振り返る。
 その後、驚愕した。

 立っていたのは綺麗なブロンドを靡かせ、パッチリと開いた目に――――青髭を生やしたガチムチのおっさん二人だった。

「あ……あががっ……!」

「あら、固まっちゃったわねぇん?」

「ちょっとぉーん……! アンタの顔が恐いから男の子が怯えちゃったじゃないのぉ!」

「何でワタシのせいなのぉ!? そういうアンタも大概でしょうん!?」

 俺は空いた口が塞がらなかった。
 入って来たのはまさかの男、いや漢。――だが恐らく心は女性。
 しかも俺の目の前で大きなアレを揺らしながら不毛な言い争いをしている。

「あ、あなた達は……一体……?」

「あら? 目が覚めたのね? ワタシはミギヒーよ?」

「ワタシはダリーよぉん!」

 俺が意識を朦朧とさせながら問うと、彼らは自分の名を口にした。
 
 ――右側の漢がダリーで左側の漢がミギヒーか。
 紛らわしいな……。
 ……えぇい!! 今はそんな事はどうでもいい!
 それよりもここは女湯のはずだろう!?
 何でここにコイツらがいるんだ!?

 俺はおもむろに湯船から上がると、浴場を出ようと走り出した。

「コラっ! お風呂場で走ったら危ないわようっ!」
 
「うるさいっ!!」

「あらあら、照れちゃって……! 可愛い……ポッ」

 ――ポッじゃねーよ! ポッじゃ!!
 クソっふざけやがって……!!

 俺は浴場から出ると、そのまま脱衣所も駆け抜けた。
 そして入り口に掛かっている暖簾の色を確認する。

「う、嘘……だろ……?」

 しかしそこに掛かっていたのは赤ではなく、青の暖簾だった。
 俺は慌てて隣の暖簾を確認する。
 するとそこにはしっかりと赤い暖簾が掛かっていた。
 
「な、何で……!?」

 俺はすぐさま辺りを見回した。すると一枚の貼り紙を発見する。
 そこにはこう書かれていた。

『当館をご利用頂き誠にありがとうございます。当館は老若男女問わず、全てのお客様が平等に当館自慢のお湯を楽しんで頂きたいという想いから毎朝一度、男湯と女湯の入れ替えを行います。予めご了承下さい』

「なん……だと……?」

 俺は生まれたままの姿でその場に突っ伏した。

 ◇
 
 暫くそうしているとユーリ達がやって来た。

「ん……? エルっ!? どうした!? しっかりしろ!?」

「エルきゅん!? 可愛いおしりが丸見えよ!?」

「セリーヌ……同感です。何とも可愛らしい双丘でしょうか」

 俺を見つけるやいなや、駆け寄って声を掛けて来るユーリ。
 そして俺のプリティーな尻に興奮するセリーヌとスカーレット。

「そんな事言ってる場合じゃないよ……!」

「お、オイラ服を取ってきます……!!」

 リリィは俺を心配し、持っていたタオルで身体を軽く拭いてくれた。
 ボンズは慌てて脱衣所へ俺の服を取りに行った。

「あ……あっ……」

「どうした、エル!? 何があったんだ!?」

「何か伝えようとしているみたいね……?」

「エル様……? 何を仰っているのですか?」

 俺はショックのあまり上手く声を発せられず、みんなは聞き取れなかったようだった。
 そして俺は再度、大切な事を伝える。

「お、温泉に……おっさんが……! き、危険だ……」

「何!? "おんせん"が"おせん"!?」

 ――まあコイツはアホな事を……。
 
「くだらない事言ってんじゃないわよ!」

 ――よく言ったセリーヌ……。

「えぇ……今のはエルが言ったんじゃん……」

「とにかくエル様のお召し物を……!」

「エル君の服取ってきましたー!」

「早く着せてあげよう……。エル、大丈夫……?」

 こんな俺を心配してくれるみんなに服を着せられて、ひとまず俺達は部屋へと戻った。


 ◇


 その後、俺はそのまま気を失ってしまい、次に目を覚ましたのは昼過ぎだった。


「ん……。み、みんな……?」

 俺が目を擦りながら起き上がると、途端に俺の周りにみんなが集まって来た。

「エルー! 心配したんだぞー!?」
 
「エルきゅん……!」

「エル様、よくぞご無事で……」

「エル……大丈夫なの……?」

「エル君、よかった……。本当によかった……!」

 みんなはとても心配してくれていたのか、涙を浮かべている者もいた。

「うん! もう大丈夫! 心配かけてごめんね?」

「いいのよ、そんなの!」

「エル様を心配するのが私の仕事です!」

 セリーヌとスカーレットはそう言うと俺を強く抱きしめた。

「でもエルは何であんな所で倒れてたんだ?」

 ――言えない……。
 女湯でキャッキャウフフな時間を過ごそうと考えていたなんて、口が裂けても言えない。

「朝、一人で温泉に入ってて……。そしたら…………!!」

 そう話していると俺の頭の中にミギーとヒダリーの顔が浮かんだ。
 俺は辛い事を思い出し言葉を詰まらせた。

「温泉が汚染されていたって事だね……」

「はぇ……?」

 するとボンズがよくわからない事を口にした。

「可哀想なエル様……。もう大丈夫ですからね」

「私達がずっと傍にいるからね」

 そう言いながらスカーレットとセリーヌは俺の頭を撫で回す。

 ――ちょっと待て。温泉が汚染させているってどういう事だ?
 それは単なるユーリの聞き間違いじゃないのか?
 俺、普通に湯船に浸かってたんだけど!?

「ね、ねぇ……? 温泉が汚染されているって……?」

「実は温泉に有毒な物質が混ざってたんだって……。それも街中の温泉全てに……」

「その事で今、街は大騒ぎなんだ」

「え!?」

 俺はリリィとボンズの話を聞き飛び起きると、部屋の窓を開け街の様子を確認した。
 するとそこには、苦しそうに倒れている人や担架で運ばれている人、バタバタと走り回っている人でごった返していた。

「何だこれ……」

 あれだけ平和で賑わっていた温泉街〈ブリジア〉はものの数時間の内に地獄と化していた――
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