人生初の友達ができたので一緒に世界救ってきます (せかます)

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章1

幕間 【希望の業界への就職に失敗したのでヤドカリ女神と一緒に世界作ってきます】 (2)

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 アリアルという謎の神様もどきと出会って、俺はとんとん拍子にリアル世界で成り上がっていった。

 異世界系のラノベでよく見かける、「現地人に百円ショップで購入した品を高額で売り付けて金銀宝石を手に入れ、それらを日本で転売する」という手法に近いが、それよりももっとシンプルだ。

 PCを使ってオブジェクトを配置して、アリアルのスキルでゲームの世界に行き、配置したアイテムを回収して日本に戻る。

 それだけで済む。

 なにも金塊に限った話ではなく、食料――たとえば高級牛肉を配置して回収しに行くこともできる。

 俺はゲームの世界を通して、錬金術を手に入れたようなものなのである。

 まあ、あまりたくさんの金塊を同じ店に売りにいくと怪しまれるから、そのうち国外に口座を作って、ネットショップみたいなことでもやろうかな。

 俺を落としたゲーム会社などもうどうでもいい。

 ゲームを世に出したければ、企画案を持って金を積めばいいだけの話。
 金は無限にあるのだから、俺がゲーム会社を興したっていいのだ。

 でも、世に出したい、といえば今俺が出入りして楽しんでいるこのゲーム。

 できることなら、これを誰かに遊んでもらいたい。

「アリアル。このゲーム、もう一回exeに書き出してしまっても大丈夫か?」

 ゲーム世界への出入りはアリアルの力だ。
 彼女は出会ってすぐのころ、exeファイルは好きじゃない、と言っていたので念のため確認する。

『……、……、……、……』

 拒否されてしまった。
 俺が片っ端から削除しようとするあの暴挙がよほどトラウマになっているのかもしれない。

 どうしようか。どこかの企業に持っていくなら、exeに書き出してまとめてしまった方がいい。
 だが、彼女がそれを拒否するとなるとこちらとしても無理強いはしたくない。

 俺の方は別に、ゲーム会社経由でこのゲームを流通させたいわけではない。世に出さずとも、プレイしてくれる人がいればいいのだ。

『……、……、……』

 アリアルが、待ってましたとばかりにアイデアを出した。

 ゲーム世界に行けるという能力を貸し与えた時から、いつかこういう話になるのではないかと思っていたらしい。

 彼女のアイデアは、これまた興味深い内容だった。


 異世界転生に見せかけて、ゲームの世界に移住してもらうのである。


 やり方としては、こうだ。


 まず一つ目、誤ってexeに書き出されることのないように、0.1%だけ未完成のマップを作っておく。

 まあそれは、地中奥深くとか、絶対にたどり着けないダンジョンの隠し部屋とかにすればいいだけの話だ。


 次に二つ目、こういう話が好きそうな日本人と接触し、彼らをゲーム世界に移住させてしまう。

 これに関しては、俺が相当するスキルを一通り手に入れれば問題なく可能だ。
 あちらで手に入れたスキルは、こちらの世界でも行使することができるのだから。

 手に入れる手段なんて、それこそその辺のマップで、触れただけでスキルを獲得できるイベントオブジェクトを作っておけばいい。


 最後に三つ目。
 アリアルが力を貸している人間以外はゲーム世界から出入りすることができないという点は変わらない。

 なので――。

「なるほど。この方法なら問題ないな。それでいこう」



 いくつか追加で手に入れたスキルを使って、俺は該当する人物に片っ端から当たっていった。

 適性のありそうなやつを探すのはアリアルの役目。

 俺はというと、神様っぽい格好で精神と時のなんちゃら空間を演出して「あなたはお亡くなりになりました……今からチートスキルとともに、別の世界に転生させます……」を淡々と語る役である。

 いいね、いいねこういう裏方ポジション。
 わくわくしてきた。

 アリアルが見つけてくるのは、事故だか病気だかで死にかけの連中ばかり。

 そこでいったん時間を停止して、異世界転生の旨を話す。
 もちろん、承諾を得られてから実行に移すよ。

 死にかけの人間の承諾を得られれば、俺はスキルを使って彼らの記憶と意識をそのままゲーム内に移植する。

 グラフィックは基本こっちで用意したものを使ってもらうが、ご希望ならもとの見た目を再現してもいい。

 ここまでは無料で、個別に外見のリクエストがあるならポイントを使った有料制。

 見た目に関しては、スキルじゃなくて俺のキャラメイキング力が試されるところである。
 腕がなるな。

 しかし、アリアルはよく「トラック事故で死にかけ」だの、「過労で死にかけ」だの、ラノベにありがちな異世界転生のきっかけっぽい死因を見つけてくるものである。

 ひとまずは三十人ほど。
 彼らはいわゆる、ベータ版テストプレイヤーだ。


 シナリオとしてはこう。


「暇を持て余した神々の遊びで異世界転生競争が始まったので参加してくれ。

別に報酬はないが、スキルと転生特典はある。

無理に勝ち残る必要はないけど、僕担当のプレイヤーなんだからちょっとは生き残ってほしいな。

積極的に参加しなくてもいいよ、最初から隠居ごっこしててもいいし」


 そして、今日もまた一人、特に断られることなく俺の世界に招待された。



 何度も異世界転生の演出をしていると、中には転生の前に質問をしてくるやつもいる。


 たとえば、「死に戻りはないのか?」と聞いてきた学生くん。

 そもそも記憶を複製して異世界に住まわせただけ。
 現代での生死には一切関係しない。

 ……まあ一応、「このゲームが原因になって日本で死ぬようなことはない。でも状況によっては死ぬかも」とだけ言っておきますかね。

 事故1秒前にコンタクトを取った人間の本体が、データコピーでちょっと意識を拝借した後に、即死だったかどうか……なんていちいち確認してないし。


 他にも、「PCとかネットとか持ち込めないの?」と聞いてきた女性がいたな。

 俺の転移能力で持ち込んでもいいけど、電波入んないし。

 ……まあ、俺のスキル<電脳世界>をステータス画面から一部直結させるなら可能……か?
 じゃあ、「ポイントによってはオッケー」ってことにしますか。

 でもポイント貯めて「今俺の実家から遺品のスマホ持ってきて!」とか言われても、さすがに時間移動はできないしなあ……。

 あ、そうか。
 じゃあこうしよう。

 スマホとかネット電子機器系の遺品持ち込みを要求してきた人間は、とりあえず2017年の異世界ではなく、10年くらい過去の異世界に転生させる。

 その10年間でのポイントの貯まり具合を見つつ、要求されそうだったらスマホ類が処分される前に俺のアイテムボックスに回収しておく……って方向でいこう。

 俺はわりかしその場のノリで、できることとできないことを振り分けながら質問に答えていった。

 中には、「ゲームで人を殺すなんて俺には無理」とか言い出したやつもいたけども。

 いやだからね、これゲームだから。
 実際に君のせいで死ぬってわけじゃないから。もうとっくに死んでるだろうし。

 あれだな、義憤で突っ走るタイプの男だ。めんどくさいやつだ。

 じゃあ君については、この転生はなかったことに……と、そそくさと話をまとめようとしたら、さらに食らいつかれた。

 そんなゲームは今すぐやめろ、と今にも殴りかかってきそうな勢いだったので、もうさっさと移植してポイである。

 そんなわけで多少トラブルはあったが、全体的に見ると俺は今非常に楽しんでいる。

 MMO系ゲームの運営側、一回やってみたかったんだよな。
 そのうち、イベントクエストとかも発行しちゃおう。
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