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章1
幼馴染、襲来(1)
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「ファーストフード店、ですか」
ダンジョンでいつか開こうと話していた飲食店とはまた、別に?
「このゲームの攻略にあたって重要な鍵になる透くんを、なんの転生者対策もできてない場所に住まわせるわけにはいかないわ。
でもある程度の権力を持った人間との繋がりは、あるに越したことないじゃない」
「は、はい」
「そこで、聖女様が手渡しで販売してくれるファーストフード店よ。隣に護衛として勝宏くんをつけてね」
詩絵里に説明を受けながら、言われたことを整理してみる。
が、どうも飛躍しすぎているような気がしてならない。
「そうなると、移動手段が必要だわ。このあと私たちが調達に行く世界樹の種の数にもよるけど、モノさえそろえば転移アイテムは複数作れるのよね」
「あ……あの……」
「ひとつは、ダンジョン内部に転移してコアの登録を済ませたらもう用無しよ。
むしろ第三者の手に渡ってダンジョンに入ってこられても困るし、さっさと分解して作り直した方がいいわね。
予備の分は、ダンジョン前とフレグルシムの行き来に……フレグルシムに店を構えてそこに転移ポイントを設定しておけば、後々ダンジョンでお店を始めた時に配達もできるわ」
「わ、わかりました、やってみます。でもその……どうして転移ポイントまで設定するんでしょうか?」
詩絵里の計画に否やはないが、まるで第二の拠点として扱うかのような話だった。
彼女も言っていたとおり、コア未登録ダンジョンのように転生者をシャットアウトできるわけではない。
フレグルシムの領主と繋がりを持ちたいなら、それこそ恩を売ったことになっている今、現状維持で保留するのがベストのように思う。
透の問いかけに、ああ、と彼女が話を戻した。
「お店だけじゃないわ。教会も作ってもらうわよ、てきとうな神様でっちあげてね」
それはまあ、さっき冗談半分にウィルの名前を出したのでその方向で設定をでっちあげていけば問題ないだろう。
おおいにウィルが嫌がりそうな計画だが、自業自得だ。
「西に透くんのファーストフード店を作るじゃない? そこで人気を集めつつ、ダンジョンの方の飲食店を宣伝。あわせて教会も作ってもらう。それで何が見込めるかというと……」
テーブルの上に、詩絵里がアイテムボックスからノートパソコンを取り出した。
Sスキルに関するデータをまとめているファイルとはまた別のファイルが開かれる。
こちらは、プログラミング言語のような英数字の文字列が並んでいる。
「これの中身をパソコンに複製して、スキルも併用でデータそのものを解析したわ」
これ、と出されたのは例のガチャスキル転生者のスマホだ。
詩絵里はそのうち、このゲームを構成するシステムの方まで解析してしまうのではないだろうか。
「聞いた限りの噂と、解析で確認できた情報もあわせて考えると、今この世界で主力の宗教――陽光聖教会はたぶんアリアルがモチーフなのよ。
全く違う宗教を新しく立ち上げれば、あちらから接触してくる可能性もあるし、アリアルに関する情報が得られるかもしれない。
……神様ぶん殴るんでしょ? とりあえず陽光聖教会から攻めていきましょって話よ」
なるほど、それがフレグルシムに第二の拠点を置く目的か。
「まあ、そうはいってもギベオンと比べれば重要度はずっと低いわ。勝宏くんと二人でダンジョン料亭の予行練習するくらいのつもりで、気楽に構えていていいわよ」
「はい……あの、詩絵里さんは、大丈夫なんですか?」
「このスマホもあることだし、世界樹の種については私一人で行ってくるわ。ルイーザにダンジョン前の小屋で待機してもらって、勝宏くんはフレグルシムに……うーん、バイクで大陸横断はちょっと時間がかかるわね。クロにそのまま乗せた方がいいかしら」
つまり、詩絵里はこのまま世界樹の種を調達に行き、ルイーザはクロに乗って一度拠点ダンジョンまで帰ってくる。
その後、ルイーザが小屋で降りて代わりに勝宏がクロに乗り、フレグルシムに向かう……という流れになるわけだ。
クロは飛びっぱなしで大変だな。
フレグルシムに着いたらおいしいものを作っておいてあげよう。
「あ、あの、ところで何を売ればいいんでしょうか」
「ファーストフード店の方ね。あっちから買ってきたものそのまま転売しちゃっていいんじゃないかしら」
「えっと、それは自分で作ります。ただ、メニューをどうすればいいかなと……」
こういうのはできたてだからおいしく感じるのだ。
一緒に店をやるならきっと勝宏や詩絵里たちも一度は口にするだろう。
その時にちゃんとできたてを出せるようにしておきたい。
「透くん、ほんとにこれ気楽にやってくれていいんだからね。大量購入してきたハンバーガーとか、温かいうちにまとめて勝宏くんのアイテムボックスに突っ込んだら半永久的にあったかいままだからね」
言われて、思いとどまる。
そうか、アイテムボックスには時間経過や状態の変化がないんだった。
アイテムボックスになじみがないため、いまいち仕様が頭に入っていない。
「手作りはダンジョンの方の飲食店で出してくれればいいのよ。フレグルシムのお店はいつ乗り捨てるか分からない船なんだから」
「す、すみませんつい」
「ううん、手作りやりたかったらやっていいのよ? 勘違い男が出てこないか心配ではあるけど……勝宏くんが一緒ならまあ大丈夫ね。
メニューは……ハンバーガーとかポテトとかナゲットとか、そのへんにジュース各種揃えればいいんじゃない? 他に売りたいものがあったら好きにしていいわ」
「はい、頑張ります」
反射的にそう答えて背筋を伸ばした透に、頑張らなくていいんだけどね、と詩絵里が苦笑した。
ダンジョンでいつか開こうと話していた飲食店とはまた、別に?
「このゲームの攻略にあたって重要な鍵になる透くんを、なんの転生者対策もできてない場所に住まわせるわけにはいかないわ。
でもある程度の権力を持った人間との繋がりは、あるに越したことないじゃない」
「は、はい」
「そこで、聖女様が手渡しで販売してくれるファーストフード店よ。隣に護衛として勝宏くんをつけてね」
詩絵里に説明を受けながら、言われたことを整理してみる。
が、どうも飛躍しすぎているような気がしてならない。
「そうなると、移動手段が必要だわ。このあと私たちが調達に行く世界樹の種の数にもよるけど、モノさえそろえば転移アイテムは複数作れるのよね」
「あ……あの……」
「ひとつは、ダンジョン内部に転移してコアの登録を済ませたらもう用無しよ。
むしろ第三者の手に渡ってダンジョンに入ってこられても困るし、さっさと分解して作り直した方がいいわね。
予備の分は、ダンジョン前とフレグルシムの行き来に……フレグルシムに店を構えてそこに転移ポイントを設定しておけば、後々ダンジョンでお店を始めた時に配達もできるわ」
「わ、わかりました、やってみます。でもその……どうして転移ポイントまで設定するんでしょうか?」
詩絵里の計画に否やはないが、まるで第二の拠点として扱うかのような話だった。
彼女も言っていたとおり、コア未登録ダンジョンのように転生者をシャットアウトできるわけではない。
フレグルシムの領主と繋がりを持ちたいなら、それこそ恩を売ったことになっている今、現状維持で保留するのがベストのように思う。
透の問いかけに、ああ、と彼女が話を戻した。
「お店だけじゃないわ。教会も作ってもらうわよ、てきとうな神様でっちあげてね」
それはまあ、さっき冗談半分にウィルの名前を出したのでその方向で設定をでっちあげていけば問題ないだろう。
おおいにウィルが嫌がりそうな計画だが、自業自得だ。
「西に透くんのファーストフード店を作るじゃない? そこで人気を集めつつ、ダンジョンの方の飲食店を宣伝。あわせて教会も作ってもらう。それで何が見込めるかというと……」
テーブルの上に、詩絵里がアイテムボックスからノートパソコンを取り出した。
Sスキルに関するデータをまとめているファイルとはまた別のファイルが開かれる。
こちらは、プログラミング言語のような英数字の文字列が並んでいる。
「これの中身をパソコンに複製して、スキルも併用でデータそのものを解析したわ」
これ、と出されたのは例のガチャスキル転生者のスマホだ。
詩絵里はそのうち、このゲームを構成するシステムの方まで解析してしまうのではないだろうか。
「聞いた限りの噂と、解析で確認できた情報もあわせて考えると、今この世界で主力の宗教――陽光聖教会はたぶんアリアルがモチーフなのよ。
全く違う宗教を新しく立ち上げれば、あちらから接触してくる可能性もあるし、アリアルに関する情報が得られるかもしれない。
……神様ぶん殴るんでしょ? とりあえず陽光聖教会から攻めていきましょって話よ」
なるほど、それがフレグルシムに第二の拠点を置く目的か。
「まあ、そうはいってもギベオンと比べれば重要度はずっと低いわ。勝宏くんと二人でダンジョン料亭の予行練習するくらいのつもりで、気楽に構えていていいわよ」
「はい……あの、詩絵里さんは、大丈夫なんですか?」
「このスマホもあることだし、世界樹の種については私一人で行ってくるわ。ルイーザにダンジョン前の小屋で待機してもらって、勝宏くんはフレグルシムに……うーん、バイクで大陸横断はちょっと時間がかかるわね。クロにそのまま乗せた方がいいかしら」
つまり、詩絵里はこのまま世界樹の種を調達に行き、ルイーザはクロに乗って一度拠点ダンジョンまで帰ってくる。
その後、ルイーザが小屋で降りて代わりに勝宏がクロに乗り、フレグルシムに向かう……という流れになるわけだ。
クロは飛びっぱなしで大変だな。
フレグルシムに着いたらおいしいものを作っておいてあげよう。
「あ、あの、ところで何を売ればいいんでしょうか」
「ファーストフード店の方ね。あっちから買ってきたものそのまま転売しちゃっていいんじゃないかしら」
「えっと、それは自分で作ります。ただ、メニューをどうすればいいかなと……」
こういうのはできたてだからおいしく感じるのだ。
一緒に店をやるならきっと勝宏や詩絵里たちも一度は口にするだろう。
その時にちゃんとできたてを出せるようにしておきたい。
「透くん、ほんとにこれ気楽にやってくれていいんだからね。大量購入してきたハンバーガーとか、温かいうちにまとめて勝宏くんのアイテムボックスに突っ込んだら半永久的にあったかいままだからね」
言われて、思いとどまる。
そうか、アイテムボックスには時間経過や状態の変化がないんだった。
アイテムボックスになじみがないため、いまいち仕様が頭に入っていない。
「手作りはダンジョンの方の飲食店で出してくれればいいのよ。フレグルシムのお店はいつ乗り捨てるか分からない船なんだから」
「す、すみませんつい」
「ううん、手作りやりたかったらやっていいのよ? 勘違い男が出てこないか心配ではあるけど……勝宏くんが一緒ならまあ大丈夫ね。
メニューは……ハンバーガーとかポテトとかナゲットとか、そのへんにジュース各種揃えればいいんじゃない? 他に売りたいものがあったら好きにしていいわ」
「はい、頑張ります」
反射的にそう答えて背筋を伸ばした透に、頑張らなくていいんだけどね、と詩絵里が苦笑した。
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