みんな大好き、中華料理

佐山ぴよ吉

文字の大きさ
上 下
55 / 77

55

しおりを挟む
「私も協力するからね!でもあの高蔵君がね~。え~っ、全然そんな素振りじゃなかったのにな~?でも、もしかしてことが前に就活ダメになったり変な噂流れたりしたのって、それでなの?」
「……うん……その時は高蔵君は関係ないけど。会社の人事の人と佳奈が付き合ってたみたいで……それで色々あって」
「どこまで卑劣なんだ……!もしも就活の事で何かあっても頼ってくれてもいい。僕の所の上司が独立する事が決まって、研究補助員を募集しているんだ。大卒であれば入所資格はあるから取り次いであげることもできる」
「い、今はそこまでは……就職先も決まってますし」
「えっ!そうだったの!まぁ、今の話聞くまでは私も高蔵君に漏らしちゃってたかもしれないから、内緒にしてて正解だったよ~……こと、ごめんねぇぇ、わだじ、なんにもじらなぐでぇぇぇ」
「ちょっと、そんなに大声で泣かないでよ……こっちこそなんにも教えれなくて、ごめんね、由梨」
「今の内定先もいつどこで妨害に逢うか分からないだろう。選択肢を増やす事で君の心の負担を軽く出来ればいいんだが」
「……心の隅に置いておきます。できれば、頼る事が無いといいですけど……」



 結局先輩と一緒に由梨を担ぎ、由梨は私のアパートに泊めた。

「うう~ん、たかくるぁ~、ことを泣かせるんじゃないぞ~!」

 ベッドで横になり唸っている由梨のそばでスマホを見てみる。

『俺の奥さんは今どこにいるの?どうしてうちにいないの?お願いだから早く帰ってきて(TT)』

 そんな内容のメッセージと留守電がたくさん入っている。
 高蔵君は昨日は部活の打ち上げと主将の引継式だったため夜遅くに帰ってきたようだった。『ちゃんと婚約の事内緒にしてきたよ(^^)奥さんからまたご褒美が欲しいな♡♡♡今どこにいるの?』というメッセージが昨日入っていたが無視していた。
 今は真理恵さんに家に引き止められているようだからとりあえず暫くはうちに来る事は無いだろうけど、時間の問題だ。

『今由梨がうちに来て酔っ払ってるからそっちには行けない』

 へべれけになっている由梨と無理やりツーショットを撮って高蔵君に送り付ける。

『中沢先輩に荷造り手伝って貰ってたの?明日は俺も手伝いに行くよ』
『もう殆どできてるから大丈夫。それよりも来週から試験なんでしょ?そっちに集中した方がいいよ』

 そう。高蔵君は試験を来週に控えているのだ。大体の人は2年生までにはもう殆ど必修科目は取り終えているはずなので、それ程科目は多くないけれど。
 しかし少しでも時間ができるのは確かだ。
 その隙に逃げてしまおう。
しおりを挟む

処理中です...