2 / 20
二人に捧げる福音を-Side:くらら-
△01▽ 今忙しいから話しかけんな
しおりを挟む
くららはお風呂から上がった後、自室で新曲の曲作りをしていた。そこに同じく風呂上りの血の繋がらない兄、灰時が部屋にやって来て──。
「くーららっ!」
「うわっ!」
いきなり兄である灰時が、机に向かっているくららに、後ろから抱き着いてきた。
「ちょっ、いきなり何すんだよ! 危ないだろ!」
「くらら、今何やってるの?」
灰時が人の話を全く聞かずに話を進める。まぁ、いつものことなのでくららも普通に返事をすることにした。
「何って、次の新曲の曲作りだよ。今忙しいから、話しかけんな」
昨日、くららの所属している四人組バンド『QUIET GARDEN』のボーカルである丹羽静雅こと『シズ』に、くららは作曲を依頼されていた。普段はシズが自分で歌詞を考えた場合、作曲も自分でしていることが多いのだが、今回は歌詞だけ渡され、『今回の作曲はよろしくねっ♪』と、何故か満面の笑みで頼まれたのだ。
くららはドラム担当だが、作曲は今までに何回かやっていた。くらら自身、作曲をするのは結構好きなので、二つ返事で依頼を引き受けたのだが……。
「ふーん。でもその割には、全然進んで無いように見えるけど」
そう言って、灰時は机の上の、真っ白な譜面を見やる。
「うっ……!」
ずばり、図星を指され、くららは思わず口ごもった。その通り、実は今回の作曲は全く進んでいなかったのだ。
その原因は、この渡された歌詞にあった。歌詞を読むとそれは明らかにラブ・ソングで、さらにその内容が問題だった。
よくよく歌詞を読んでみると、どうやら二人の男性を好きになってしまった女性の、複雑な恋心を歌っているらしかったのだ。
(この歌詞……。何かすごく共感できてしまうんだよな……)
この歌詞を読んでいると今の自分と重なって仕方がない。何故なら、くららも現在、好きな人が二人いるからだ。……というかさらに正確に言うと、実は今、その二人と付き合っているからだ。もちろん、男女交際という意味で。
いろいろあって、三人で付き合うことになったのだが、これがいけないことだということは重々承知している。三人で、というのももちろんなのだが、他にももっと重大な問題があるため、そのことがいつもくららを悩ませていた。
もちろん、どちらかを選べないくらい、本当に二人のことが好きだし、この想いはそう簡単に消せるようなものではないのだが。
そんなこんなで、いつも悩んでいるくららの想いと、この歌詞がリンクし過ぎているような気がして、なかなか作曲に集中できずにいた。
(シズには、何も話してないはずなんだけどなぁ……)
そう思いながら頭を抱えていると、
「ねぇ。とりあえず、それ、後にしたら? ずっと根詰めてても、いいものは出来ないんじゃない?」
灰時がくららの顔を覗き込みながら話しかけてきた。そのあまりの近さに、思わず心臓が飛び出そうになる。
「う、うるさいっ! もうちょっと、考えたいんだよ……!」
そう言って、灰時の顔を押し戻しながら、再び譜面に視線を戻した。平静を装ったつもりだが、まだ心臓はうるさいくらい音を奏でている。
そう、くららの付き合っている二人のうちの一人は、この血の繋がらない兄、灰時だった。灰時とは両親の再婚で兄妹になったのだが、割と小さい頃から一緒に育ってきたので、最初は普通に兄としてしか見ていなかった。しかし、なんやかんやで今は付き合っており、すっかり男性として意識してしまっていた。
くららも少しずつは慣れてきたつもりでいたが、灰時は元々スキンシップが多く、ふとした瞬間に迫ってくることもあるので、そういうときが未だに慣れない。
灰時の方を見ると、さっきの態度が気に食わなかったのか、少し不満気な顔をしていた。
「……そ。じゃあ、俺も勝手にしよっと」
そんな声が聞こえたと思った瞬間、灰時の唇がくららの首筋にキスを落とした。
「ひゃっ!? ちょ、何やって……!」
突然の出来事に驚き、思わず灰時を遠ざけようとすると、さらに強い力で後ろから抱きしめられてしまう。そして、身動きが取れないのをいいことに、灰時はそのままどんどんくららに触れてきた。
「っ! あっ……! だ、だめだって!!」
髪に、うなじに、耳に、頬に。ちゅっ、と音を立てながら灰時の唇が触れる。灰時に触れられた部分が異様に熱くなるのを感じた。
「~~っ!! 灰時っ!!」
その間にも灰時の手は優しく、くららの身体《からだ》を撫でていく。くららを抱きしめる灰時の熱い身体からは、お風呂上りだからか、仄かにシャンプーの香りがした。
「あっ……。ん……」
その熱く優しい手と、香りに包まれていると、不思議と心地よく感じてしまう。
それにしても、同じシャンプーを使っているはずなのに、灰時の方がいい匂いだと感じてしまうのは何故だろうか。
(はっ!? じゃなくて、灰時を止めないと!)
思わずぼうっとなりかけた頭を必死で振り払い、怒鳴りつけようと振り向くと──、
「灰っ……、ふッ……!? んっ……!」
そのまま優しく顎を掴まれ、包み込まれるようなキスをされてしまった。
「んっ、んん……! ッはぁ……。くらら……」
思った以上に深いキスで息が乱れる。ふと、視線を感じて灰時を見ると、熱っぽい瞳で見つめられていた。
(……どうしよう。これ以上は、本当にまずい気がする……!)
これまでの経験上、灰時がこうゆう目をするときは、決まって手が付けられないのだ。
「はっ、灰時……! ちょっ、もうっ……!」
身の危険を感じ、くららは必死に灰時を遠ざけよとするが、なかなか力が入らない。
「……作曲、するんでしょ? 俺のことは気にせずに、続きしなよ」
「っ……! ぁ、やッ……!」
灰時が耳元で囁きながら、服の中に手を滑り込ませ、ゆっくりとくららの体をなぞっていく。こんな状況で作曲なんて、できる訳がなかった。
「ふふっ。くららの肌すべすべだね。……お風呂上がりだからかな? 気持ちよくて、ずっと触っていたくなるよ」
「ばっ、ばかっ! 何言ってんだ、本当に‼」
自分でも、全身が熱くなっているのが分かる。でも、このまま流される訳には……!
「何って……。思ったことを言ってるだけだよ。くららのこの華奢な身体も、匂いも……。全部、大好き……」
そう言って、灰時はくららの肩口に顔を埋める。
「なッ! ……本当、ばか……」
甘えるようなその態度がなんだか可愛くて、つい強く言えなくなってしまう。
「……くらら、顔真っ赤。かわいいね……」
いつの間にか顔を上げていた灰時は、耳元で囁いた後、そのままくららの耳たぶを咥えた。
「ふぁッ!? えっ!? ちょっ……! ぁ、だめ……だって、ば……!」
耳元で直に、くちゅっ、くちゅっと、舐められる音が聞こえてくる。そのいやらしい音と、灰時の巧みな舌使いで、くららの息はあっと言う間に上がってしまった。
「はぁっ、あぁ……! も……、無理……」
とうとう、全身の力が入らなくなり、思わず目の前の机にしがみ付くような体勢になってしまう。おとなしくなったくららを心配したのか、灰時が動きを止め、くららの顔を覗き込んだ。
「くーららっ!」
「うわっ!」
いきなり兄である灰時が、机に向かっているくららに、後ろから抱き着いてきた。
「ちょっ、いきなり何すんだよ! 危ないだろ!」
「くらら、今何やってるの?」
灰時が人の話を全く聞かずに話を進める。まぁ、いつものことなのでくららも普通に返事をすることにした。
「何って、次の新曲の曲作りだよ。今忙しいから、話しかけんな」
昨日、くららの所属している四人組バンド『QUIET GARDEN』のボーカルである丹羽静雅こと『シズ』に、くららは作曲を依頼されていた。普段はシズが自分で歌詞を考えた場合、作曲も自分でしていることが多いのだが、今回は歌詞だけ渡され、『今回の作曲はよろしくねっ♪』と、何故か満面の笑みで頼まれたのだ。
くららはドラム担当だが、作曲は今までに何回かやっていた。くらら自身、作曲をするのは結構好きなので、二つ返事で依頼を引き受けたのだが……。
「ふーん。でもその割には、全然進んで無いように見えるけど」
そう言って、灰時は机の上の、真っ白な譜面を見やる。
「うっ……!」
ずばり、図星を指され、くららは思わず口ごもった。その通り、実は今回の作曲は全く進んでいなかったのだ。
その原因は、この渡された歌詞にあった。歌詞を読むとそれは明らかにラブ・ソングで、さらにその内容が問題だった。
よくよく歌詞を読んでみると、どうやら二人の男性を好きになってしまった女性の、複雑な恋心を歌っているらしかったのだ。
(この歌詞……。何かすごく共感できてしまうんだよな……)
この歌詞を読んでいると今の自分と重なって仕方がない。何故なら、くららも現在、好きな人が二人いるからだ。……というかさらに正確に言うと、実は今、その二人と付き合っているからだ。もちろん、男女交際という意味で。
いろいろあって、三人で付き合うことになったのだが、これがいけないことだということは重々承知している。三人で、というのももちろんなのだが、他にももっと重大な問題があるため、そのことがいつもくららを悩ませていた。
もちろん、どちらかを選べないくらい、本当に二人のことが好きだし、この想いはそう簡単に消せるようなものではないのだが。
そんなこんなで、いつも悩んでいるくららの想いと、この歌詞がリンクし過ぎているような気がして、なかなか作曲に集中できずにいた。
(シズには、何も話してないはずなんだけどなぁ……)
そう思いながら頭を抱えていると、
「ねぇ。とりあえず、それ、後にしたら? ずっと根詰めてても、いいものは出来ないんじゃない?」
灰時がくららの顔を覗き込みながら話しかけてきた。そのあまりの近さに、思わず心臓が飛び出そうになる。
「う、うるさいっ! もうちょっと、考えたいんだよ……!」
そう言って、灰時の顔を押し戻しながら、再び譜面に視線を戻した。平静を装ったつもりだが、まだ心臓はうるさいくらい音を奏でている。
そう、くららの付き合っている二人のうちの一人は、この血の繋がらない兄、灰時だった。灰時とは両親の再婚で兄妹になったのだが、割と小さい頃から一緒に育ってきたので、最初は普通に兄としてしか見ていなかった。しかし、なんやかんやで今は付き合っており、すっかり男性として意識してしまっていた。
くららも少しずつは慣れてきたつもりでいたが、灰時は元々スキンシップが多く、ふとした瞬間に迫ってくることもあるので、そういうときが未だに慣れない。
灰時の方を見ると、さっきの態度が気に食わなかったのか、少し不満気な顔をしていた。
「……そ。じゃあ、俺も勝手にしよっと」
そんな声が聞こえたと思った瞬間、灰時の唇がくららの首筋にキスを落とした。
「ひゃっ!? ちょ、何やって……!」
突然の出来事に驚き、思わず灰時を遠ざけようとすると、さらに強い力で後ろから抱きしめられてしまう。そして、身動きが取れないのをいいことに、灰時はそのままどんどんくららに触れてきた。
「っ! あっ……! だ、だめだって!!」
髪に、うなじに、耳に、頬に。ちゅっ、と音を立てながら灰時の唇が触れる。灰時に触れられた部分が異様に熱くなるのを感じた。
「~~っ!! 灰時っ!!」
その間にも灰時の手は優しく、くららの身体《からだ》を撫でていく。くららを抱きしめる灰時の熱い身体からは、お風呂上りだからか、仄かにシャンプーの香りがした。
「あっ……。ん……」
その熱く優しい手と、香りに包まれていると、不思議と心地よく感じてしまう。
それにしても、同じシャンプーを使っているはずなのに、灰時の方がいい匂いだと感じてしまうのは何故だろうか。
(はっ!? じゃなくて、灰時を止めないと!)
思わずぼうっとなりかけた頭を必死で振り払い、怒鳴りつけようと振り向くと──、
「灰っ……、ふッ……!? んっ……!」
そのまま優しく顎を掴まれ、包み込まれるようなキスをされてしまった。
「んっ、んん……! ッはぁ……。くらら……」
思った以上に深いキスで息が乱れる。ふと、視線を感じて灰時を見ると、熱っぽい瞳で見つめられていた。
(……どうしよう。これ以上は、本当にまずい気がする……!)
これまでの経験上、灰時がこうゆう目をするときは、決まって手が付けられないのだ。
「はっ、灰時……! ちょっ、もうっ……!」
身の危険を感じ、くららは必死に灰時を遠ざけよとするが、なかなか力が入らない。
「……作曲、するんでしょ? 俺のことは気にせずに、続きしなよ」
「っ……! ぁ、やッ……!」
灰時が耳元で囁きながら、服の中に手を滑り込ませ、ゆっくりとくららの体をなぞっていく。こんな状況で作曲なんて、できる訳がなかった。
「ふふっ。くららの肌すべすべだね。……お風呂上がりだからかな? 気持ちよくて、ずっと触っていたくなるよ」
「ばっ、ばかっ! 何言ってんだ、本当に‼」
自分でも、全身が熱くなっているのが分かる。でも、このまま流される訳には……!
「何って……。思ったことを言ってるだけだよ。くららのこの華奢な身体も、匂いも……。全部、大好き……」
そう言って、灰時はくららの肩口に顔を埋める。
「なッ! ……本当、ばか……」
甘えるようなその態度がなんだか可愛くて、つい強く言えなくなってしまう。
「……くらら、顔真っ赤。かわいいね……」
いつの間にか顔を上げていた灰時は、耳元で囁いた後、そのままくららの耳たぶを咥えた。
「ふぁッ!? えっ!? ちょっ……! ぁ、だめ……だって、ば……!」
耳元で直に、くちゅっ、くちゅっと、舐められる音が聞こえてくる。そのいやらしい音と、灰時の巧みな舌使いで、くららの息はあっと言う間に上がってしまった。
「はぁっ、あぁ……! も……、無理……」
とうとう、全身の力が入らなくなり、思わず目の前の机にしがみ付くような体勢になってしまう。おとなしくなったくららを心配したのか、灰時が動きを止め、くららの顔を覗き込んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる