ダメな君のそばには私

蓮水千夜

文字の大きさ
3 / 5

ダメな君のそばには私

しおりを挟む
「雪乃っ! 雪乃ってば!」

 後ろで叫んでいる陽奈を無視して、家の中に招き入れる。そのままその手を引き、陽奈をベッドの上に座らせた。

「ゆ、雪乃? 急にどうしたの?」

「……気持ちいいことなら、女の子同士でもできるから」

「えぇ?」
「だから、あんなダメたちじゃなくて、私と付き合えばいいじゃない!」

「な、何言って……」
「私なら陽奈のこと、もっと大事にしてあげられる。気持ちいいことだってしてあげられるから」

 陽奈の目を見ながら、精一杯思いを伝える。だてに今までたくさんの本を読んできたわけじゃない。物語の中には同性愛の話が出てくることもある。その中にはもちろん女性同士のことだって。

 ──だから、知識は、知識だけはあるのだ。

「雪乃……?」
 そっと、陽奈をベッドの上に押し倒す。

「えっ? 待っ──」
 陽奈が言い終わらないうちに、そっとその唇を塞いだ。

 ──もっと、抵抗があるものだと思っていた。自分がそんなことをするなんて考えられなかったはずなのに、他の男に触れられていたと思うだけで頭が沸騰しそうで、耐えられなくて。自分だけを見て欲しくて。

 初めての口づけは思った以上に、甘やかだった。

「陽奈……」
 陽奈の柔らかくほのかに甘い唇に酔いそうになる。薄く開いたその口に舌を滑り込ませると陽奈の体がわずかに震えた。

「んんっ……!? あっ、だ、だめ……」
「何がだめ……? 陽奈は気持ちいいこと好きなんでしょう?」

 少し唇を離し、至近距離から問いかける。
「だって、雪乃は友だちだから! だから、こんなこと……」

 少し頬を紅潮させた陽奈は、雪乃を押し返そうと手を押し付けてきたが、その手をぎゅっと掴み、また距離を詰め直した。

「……私も最初は友だちだって、思ってたよ? だけど、あんなダメ男たちの話聞かされて自分の気持ちに気づいちゃったの」

 言いながら、陽奈の腰に手を伸ばし、そっとその可憐な白い肌を撫で上げる。
「んぁっ! そ、そこ、だめ、だってば……」

「だから、私にしなよ」
 もう一度、その目を見て真剣に話す。気づいたのはついさっきかもしれないけれど、雪乃の気持ちは本物だった。

「私なら絶対、陽奈を幸せにしてあげられる」
「ゆ、きの……」

 陽奈の太陽のように輝く瞳が大きく揺れている。その目は決して拒絶じゃないと、そう思いたい。

「私のこと、受け入れて……」
「あ……」

 もう一度、その甘やかな唇に自分の唇を重ね合わせる。今度は陽奈の体から力が抜けていくのを感じ、そのまま二人溶け合うようにベッドに身を委ねた。


◇◆◇◉◇◆◇


「ごめんなさい!」

 開口一番、雪乃は陽奈の前で土下座で謝罪した。

 あのあと、まぁ、いろいろあってシャワーを浴びて、お互い冷静になったタイミングだった。

(い、いきなり手を出すとか、私他のダメ男たちと同じようなものじゃない!)

 ものすごい自己嫌悪に陥っていると、陽奈が雪乃のあごを人差し指で持ち上げて、上に向かせる。

「なーんで、謝るわけぇ~?」
「いや、だって冷静に考えるといきなり手を出すとか、ないなーって」

「ふ~~ん」
 訝しげにまじまじと雪乃の顔を凝視すると、意外なことを言い出した。

「あたしは、あんなに情熱的な雪乃、初めて見たから嬉しかったけど?」

「えっ!?」

「絶対、幸せにしてくれるんでしょ?」

 そう言って、笑う姿はまるで陽だまりのようで。
 初めて出会ったときに素敵だなと思ったその笑顔を見ると、何の理由もなくただただ好きだと改めて自覚してしまう。

「とりあえず、これからよろしくっ☆」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

秋の陽気(ようき)

転生新語
恋愛
 元夫(もとおっと)が先月、亡くなった。四十九日法要が終わって、私は妹の娘と再会する……  カクヨム、小説家になろうに投稿しています。  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/822139836259441399  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n1892ld/

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...