【完結】疲れ果てた水の巫子、隣国王子のエモノになる

カシナシ

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本編

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クライヴ様の人気が高まっていっても、伴侶である僕への当たりが強くなることは無かった。どちらかと言うと、二人セットで応援してくれている人が多いようで嬉しい。

クライヴ様から僕を取り上げないで欲しいし、僕からも彼を奪わないで欲しい。
格好良い人だからモテるのは仕方ないと、覚悟はしているけれど、あわよくば誰にも邪魔されないといいな、なんて思っていた。












ある日、僕とクライヴ様は王城へ出向いた。王城と学園は近い。クライヴ様のご両親、つまり陛下夫妻にお呼ばれしていた。卒業したらなかなか帰ってこれないかもしれないこともあって、今のうちに交流を深めておきたかったのだ。



その団欒を楽しんだ、夜のことだった。


僕たち二人は夫婦なので、同じ部屋が当てがわれている。
夕食の最中からそわそわと手に触れられたり、腰を抱かれていたので、僕にも熱が伝染してしまっていた。


二人して寝室に雪崩なだれ込み、服のボタンが弾けて、素肌を弄られようとした時――。


「っ?!誰だ!」


ガバッと後ろ手に守られて、目を白黒とさせた。
ここはクライヴ様の寝室だ。許可なく入る事が出来る人なんて、いないはずなのに。

クライヴ様の寝室に、褐色の肌の、すらりとしたスタイルの良い女性騎士が突っ立っていた。

女性騎士はクライヴ様を見つけると、僕なんか見えなかったように――事実、背中で隠されてはいるけど存在は分かるはずなのに――駆け寄って、クライヴ様の足元に跪いた。その仕草はまさしく騎士のそれ。

僕は思い出した。僕を見て、薄ら笑いをした女性騎士だ。


「ミルドレッド。どんなつもりで侵入を?」

「クライヴ殿下。侵入ではありません、警護です。クライヴ殿下と言えど接合中は警戒が緩みますので、私が代わりに警戒します」

「不要だ。去れ」

「これは、王妃殿下の許可を得ております。さ、私はいないものとしてまぐわっていただいて構いません。さぁ」

「何だと……!?」


ミルドレッドは、クライヴ様の背中に隠された僕をチラリと見ると、またあの、目を細めた笑い方をした。それはまるで嘲笑されているようで、僕の口端は引き攣った。


「……ジタリヤ!ミルドレッドが寝室の警護に任命されたと言っているが、確認を取ってくれないか」

『は~い』


クライヴ様が扉の外に声をかけると、気の抜けた声が返ってきた。










すっかり興が削がれてしまったので、僕は食後の胃に優しい薬草茶を出すことにした。

ミルドレッドは今は壁と一体化したように微動だにせず、その表情は完全なる無。何も読めない。


「その……クライヴ様と、ミルドレッドは、お知り合いなのですか」


僕はとっても小さな声で聞いたのに、ミルドレッドは耳が良いのか、クッと口角を上げていた。


「昔部落の男を皆殺しにした話をしただろう。バルディカと言う部族の。あの時救出した女の一人だ。身体能力が高いから引き抜かれたと聞いている」

「引き抜いたのは……」

「騎士団長だ。俺では無い。」


クライヴ様の話では、バルディカ族の男性は戦闘能力に長けており、実は女性もそうだったらしい。
虐げられていたために本人らも気付いておらず、心身ともに回復した後判明したのだそう。

そして、良くも悪くも男たちの戦闘を数多く目にしてきたからか、戦闘センスも抜群なのだとか。


「全て騎士団長に聞いた話で、俺は関与していない。」

「そう……なのですね」


壁になっているミルドレッドは、女性でありながら、僕と同じくらいの身長を持っている。僕はちなみに170センチほど。クライヴ様は193……195くらいあるかな。身長が高い上に体格も良いのでとても大きく見える。

ミルドレッドは、エキゾチックな美人。甲冑でありながら、その胸の大きさは隠せていないし、手足も長く、引き締まっている。歳の頃は、多分20代後半くらいだろう。大人の色香を滲ませて、恍惚とした表情でクライヴ様を見ているのだ。

……むむむ。なんだか、とても、面白く無い。


「クライヴ殿下、失礼します!」


ジタリヤ様が入ってきた。チラリとミルドレッドを見やると、クライヴ様に向き直る。


「確かに王妃殿下より、ミルドレッドが警護に遣わされています。理由は不測の事態に備え、かつ、シュリエル様に危険のない者を選んだらしいです。ただ……」

「なんだ」

「部落出身故、礼儀が身についていない所もあり、気に入らなければ下げて良いと」

「そうか。ミルドレッド、退がって良い」

「……畏まりました」


途端に不機嫌そうな顔を隠そうともせず、ミルドレッドはすごすごと退散していく。彼女が部屋を出ると、僕はほっと肩を撫で下ろした。


「彼女、クライヴ殿下に憧れているらしいです。ここへ遣わされたのも彼女の強い要望があったとか。彼女たちにとって殿下は恩人でもありますしね。腕はありますが、まだまだ騎士としては新人の部類らしいので、シュリエル様も何かあればすぐに仰ってくださいね」

「分かりました。ジタリヤ様、ありがとうございます」


僕はなんとなく喉に何か引っかかったような心地だった。それでも彼女が退出すると、ようやくクライヴ様の腕の中で、安心して眠りにつけた。

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