61 / 72
本編
59
しおりを挟む
僕は、目下のところ、マリー嬢をどうにかするべきではないかと考えていた。
二回目のモデルをする場所は、花々の美しい中庭のベンチだった。
それはいい。いいのだけれど。
「これは……悪戯しがいのある……」
クライヴ様のお膝に乗せて頂いている僕は、後ろから抱き締められている。モデルとしては笑顔を要求されているが、赤面しておろおろしている状況。
マリー嬢はものすごくいい笑顔で監督をしていた。僕らの周りをちょこまかと動いて服や髪を整えたり、僕の熱った顔を仰いだり。
「あっ、その潤んだ瞳も最高です!」
「真っ赤なお顔……可愛い……」
「殿下のお顔が良すぎて……ああんっ……!」
時折ぼそぼそと聞こえる声は、少し距離を離して、集まっている生徒たちから。全然隠しきれていない草の中から僕らを覗いているのだ。
マリー嬢とクラリッサ嬢は『信者です!』と言うけれど……少しばかり、扇動していないだろうか?
「クライヴ様……、その、人数が多すぎやしませんか?僕、落ち着きません……!」
「……この姿を描かせたら、すぐに終了しよう。君がそれほど恥じらうとは。ただ、座っているだけなのに」
「だっ、だって……、~~が!」
そう。ピッタリと密着した腰に、硬く大きな異物が当たって……否、当てられている。
「想像したのか?これを、ここに、挿れられているのを」
クライヴ様は、わざと耳元で囁きながら、僕の下腹を撫でる。
もう、ぞわぞわして……っ!
「……っ!前回、適切な距離を取ると仰っていたではないですか……!」
くつくつと笑うクライヴ様が、格好良すぎて直視できない。
耳を擽るように際どい言葉を囁かれたり、匂いを嗅がれたり、首筋にささやかすぎる愛撫をされたり。
後ろの人がやりたい放題なのですが、マリー嬢!
やっと解放された時には、僕はくたくたになっていた。
「暫く休んでいくか」
「は、はい……ジタリヤ様……」
「ええ、人払いですね。おまかせを」
瞬く間に人が散っていき、ふうと息を吐く。
薬草茶を淹れて回復を図る。ふと気がつけば、隣に座っていたクライヴ様のお手が髪に触れていた。
「……?」
「君の茶は漲るようだな。味も好みだ。俺を考えながら淹れてくれたのか?」
「あっ……はい!あ、ありがとうございます!」
「礼を言うのは俺の方だろう。感謝する」
クライヴ様はとてもお優しい目をして、頭を撫でつつ、額に口付けを落としてくれる。はあ、幸せ。
捧げた愛情に見返りを要求している訳ではないけれど、こうして気付いてくれて、労わってくれると報われるような気がする。
豊穣の水を与えられた緑や大地のように。
クライヴ様から、心の栄養を頂いている心地だ。
満ち足りた気分で喉を潤していると、クラリッサ嬢が風のようにささっとやって来て、先程描きあげたものの下絵を僕たちに見せてくれた。
前回のものも素晴らしかったけれど、たった数ヶ月で見違えるほど腕を上げていっている。途中にも関わらず、完成度の高さを期待してしまう程。
「素晴らしい絵になりそうですね、クラリッサ嬢。ありがとうございます。完成するのが待ち遠しいです。どんどん思い出が増えて嬉しいですし……!」
「不肖クラリッサ、シュリエル様のそのお言葉のために生きているようなものですから……!」
「……?クラリッサ嬢はもっと多くの人に認められていいはずですよ。貴女の手にかかれば、こんな素敵な光景だったのかと驚きます」
そこには、後ろから抱きしめられて嬉しそうに照れる僕と、優しく穏やかそうなクライヴ様がいた。
本当は下半身のものを押し付けられていたなんて一ミリも匂わせないような、爽やかな絵。
……。うん、周りからはこのように見えていたのなら、いい。良かった、いかがわしい絵にならなそうで。
「ところでシュリエル様、次はこう、シーツの上で迫られているシュリエル様をテーマにしようと思うのですが」
「……それは……辞めておきましょう、マリー嬢。あまりに危険です」
「ええっ……、そこを何とか……!で、では、水に濡れたシュリエル様は……」
マリー嬢の頭の中の構想を現実にすると、また僕の頭が爆発しかねない。僕はもう少し穏やかな構図にするよう粘るのだが、何故かこの時ばかりはクライヴ様がマリー嬢の味方につくのだ。
そんな攻防は卒業まで続いた。
クライヴ様は僕と一緒に描かれているのを部屋に飾り、満足そうに眺めておられるのだが、たまに小さな紙片を覗いているのも知っている。クライヴ様もまた、いつかの誰かのようにミニシュリエルを持ち歩いているようだ。
本物が常に側にいるのに、と口を尖らせると、ちゅっと口付けをされるので、僕はもう許す選択肢しか持てないのだ。
二回目のモデルをする場所は、花々の美しい中庭のベンチだった。
それはいい。いいのだけれど。
「これは……悪戯しがいのある……」
クライヴ様のお膝に乗せて頂いている僕は、後ろから抱き締められている。モデルとしては笑顔を要求されているが、赤面しておろおろしている状況。
マリー嬢はものすごくいい笑顔で監督をしていた。僕らの周りをちょこまかと動いて服や髪を整えたり、僕の熱った顔を仰いだり。
「あっ、その潤んだ瞳も最高です!」
「真っ赤なお顔……可愛い……」
「殿下のお顔が良すぎて……ああんっ……!」
時折ぼそぼそと聞こえる声は、少し距離を離して、集まっている生徒たちから。全然隠しきれていない草の中から僕らを覗いているのだ。
マリー嬢とクラリッサ嬢は『信者です!』と言うけれど……少しばかり、扇動していないだろうか?
「クライヴ様……、その、人数が多すぎやしませんか?僕、落ち着きません……!」
「……この姿を描かせたら、すぐに終了しよう。君がそれほど恥じらうとは。ただ、座っているだけなのに」
「だっ、だって……、~~が!」
そう。ピッタリと密着した腰に、硬く大きな異物が当たって……否、当てられている。
「想像したのか?これを、ここに、挿れられているのを」
クライヴ様は、わざと耳元で囁きながら、僕の下腹を撫でる。
もう、ぞわぞわして……っ!
「……っ!前回、適切な距離を取ると仰っていたではないですか……!」
くつくつと笑うクライヴ様が、格好良すぎて直視できない。
耳を擽るように際どい言葉を囁かれたり、匂いを嗅がれたり、首筋にささやかすぎる愛撫をされたり。
後ろの人がやりたい放題なのですが、マリー嬢!
やっと解放された時には、僕はくたくたになっていた。
「暫く休んでいくか」
「は、はい……ジタリヤ様……」
「ええ、人払いですね。おまかせを」
瞬く間に人が散っていき、ふうと息を吐く。
薬草茶を淹れて回復を図る。ふと気がつけば、隣に座っていたクライヴ様のお手が髪に触れていた。
「……?」
「君の茶は漲るようだな。味も好みだ。俺を考えながら淹れてくれたのか?」
「あっ……はい!あ、ありがとうございます!」
「礼を言うのは俺の方だろう。感謝する」
クライヴ様はとてもお優しい目をして、頭を撫でつつ、額に口付けを落としてくれる。はあ、幸せ。
捧げた愛情に見返りを要求している訳ではないけれど、こうして気付いてくれて、労わってくれると報われるような気がする。
豊穣の水を与えられた緑や大地のように。
クライヴ様から、心の栄養を頂いている心地だ。
満ち足りた気分で喉を潤していると、クラリッサ嬢が風のようにささっとやって来て、先程描きあげたものの下絵を僕たちに見せてくれた。
前回のものも素晴らしかったけれど、たった数ヶ月で見違えるほど腕を上げていっている。途中にも関わらず、完成度の高さを期待してしまう程。
「素晴らしい絵になりそうですね、クラリッサ嬢。ありがとうございます。完成するのが待ち遠しいです。どんどん思い出が増えて嬉しいですし……!」
「不肖クラリッサ、シュリエル様のそのお言葉のために生きているようなものですから……!」
「……?クラリッサ嬢はもっと多くの人に認められていいはずですよ。貴女の手にかかれば、こんな素敵な光景だったのかと驚きます」
そこには、後ろから抱きしめられて嬉しそうに照れる僕と、優しく穏やかそうなクライヴ様がいた。
本当は下半身のものを押し付けられていたなんて一ミリも匂わせないような、爽やかな絵。
……。うん、周りからはこのように見えていたのなら、いい。良かった、いかがわしい絵にならなそうで。
「ところでシュリエル様、次はこう、シーツの上で迫られているシュリエル様をテーマにしようと思うのですが」
「……それは……辞めておきましょう、マリー嬢。あまりに危険です」
「ええっ……、そこを何とか……!で、では、水に濡れたシュリエル様は……」
マリー嬢の頭の中の構想を現実にすると、また僕の頭が爆発しかねない。僕はもう少し穏やかな構図にするよう粘るのだが、何故かこの時ばかりはクライヴ様がマリー嬢の味方につくのだ。
そんな攻防は卒業まで続いた。
クライヴ様は僕と一緒に描かれているのを部屋に飾り、満足そうに眺めておられるのだが、たまに小さな紙片を覗いているのも知っている。クライヴ様もまた、いつかの誰かのようにミニシュリエルを持ち歩いているようだ。
本物が常に側にいるのに、と口を尖らせると、ちゅっと口付けをされるので、僕はもう許す選択肢しか持てないのだ。
457
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる