VRMMOで最弱の俺は魔王を仲間にした。

第2章 クエスト編

第13話 漆黒龍爆誕

重い足音が神殿中に響き渡る。

「来たぞ、ハル、カタナ！武器を構えろ」

「えー、魔王がやれば一撃じゃん」
 すかさずカタナが吠える。

「すまん、まだ大会中の疲れが残ってて力が出ない。
あとはお前ら二人に任せるぞ」

 「えーーーーーーー」

 二人同時に放った「えー」がこれまた神殿中に響いた。

 「ちょっと待って、もう漆黒龍来てるんですけど？
ていうか、このクエストお前が受けようって言ったんじゃんないか？どういうつもりで受けようって言ったんだよ？ベル？」

 魔王は一瞬困った顔をしたがそのあと何かを思いついたのか口を開いた。

 「これは試練だ！お前たちは少々私に頼りすぎている部分がある。これではいつになっても強くはなれないだろ？だから、ここは二人で倒すんだ！」

 上手く言いくるめられた気がしたが、ベルの言葉にも一番納得せざるを得ないところがあった。

「ふん、私はいいわよ全然。ハル、あなたは後ろで援護。そして私はその後ろであなたを援護するわ」

「いや、意味分かんねぇよ。援護の援護ってなんだよ」

「女の子を守るのは男の仕事でしょ？いいわね、あなたがフリーズで相手の動きを止めているすきに私の召喚獣で決めるわ」

 「わ、分かった」

もう男尊女卑の時代は終わったことを今確信した。

女尊男卑の世界はすでに構築されつつあるのだ。

そう確信したハルだった。

「おい、漆黒龍のお出ましだぞ」

体長30メートルはあろうかという龍、要するにドラゴンが鋭い牙をむき出しにして、こちらに赤い眼をむけていた。

グウァァァァァ

地が揺れた。

「い、行くぞ。カタナ。オレにつづケェー」

死んでもいい。
セーブはしておいた。
あとはフリーズという文字を言えばいいだけ。

「喰らえ、漆黒龍。『フリーーーズ』」

次の瞬間、漆黒龍は止まった…

かのように思えたが口に目一杯の炎を貯めて
攻撃態勢に入った。

「え、なんで出ないの？おかしいな、あれ？」

「もう役立たずね！もういい私の召喚獣で相手してあげるわ。いでよ！『フェニックス』!」

地面に突如現れた紋章から炎の鳥が姿を現した。

「あの漆黒龍を倒してちょうだい！」

カタナとの息のあったコンビプレーで
フェニックスは漆黒流の赤い眼に向かって急加速した。

「やれる！あんなすごいの出せるなんてすごいな！」

「当たり前でしょ？私を誰だと思ってるの？リアルでは運動もできて、容姿も良くて、勉強だって楽勝。こんな仮想世界でも私は輝くことなんて容易いのよ。」

フラグ炸裂。

結果は誰もが思った通り。

勢いよく突っ込んだフェニックスは
漆黒龍のとてつもない破壊力の炎の渦に消沈した。

「やれやれ。」

魔王はぼそりと呟いた。