VRMMOで最弱の俺は魔王を仲間にした。

第2章 クエスト編

第15話 ハル死す！？

ドン。

大きな音を立てて三人は空から落ちていた。

「なんだ？ここ？おい、カタナ。俺たちはどこに飛ばされたんだ？」

「知らないわよ。無我夢中で何がなんやら…」

「家？なのか？まずい。誰かの家の上に落ちちまった」

 最初に魔王がそれに気づいた。

周りの通行人は目を丸くしてこちらを見ていた。

それも仕方がないことだが。

それにしても、どこかで見た風景のような…

目の前の標識には『スタートタウン センター街』という文字。

 その瞬間、冷や汗がどっと出た。

「お、おいこれ…」

ベルが恐る恐る一枚の大きな板を手に取っていた。

『千本桜 本店』

「ねぇ、ここってどこよ？あんた知ってんの？」

「あぁ。」

頭にポンプのごとく血が上った。

次の瞬間、ハルの視界は目の前の千本桜という文字からまだ明るい昼の青空へと移った。

「ハル！」
「しっかりしろ、ハル！」

HP不足か？いや違う。
外部からのアクセスか？いや違う。

これまでの疲れがどっと出た。

最後に聞いた二人の声は遥か遠くに遠のいていった。

 次に気づいたのはどこかの家だった。


「ハル？おい、カタナ。ハルが起きたぞ！」

最初に聞こえてきたのはベルの太い声。

「ハル？無事なの？よかった。クエストでの疲労が残っていたのかしら」

次はカタナの細い声。

そして、意識がパッと鮮明になった。

「千本桜は？あの店はどうなった？」

「あぁ、大破した。悪いな、ベル。俺の重さにあの店が耐えられなかったらしい」

「何？あれあんたの店だったの？」

 空気の読めないカタナはいつも通り。

「嘘だろ、じゃあ、あかさたが帰ったらなんていうんだよ。これじゃあ、あいつに顔向けできねぇよ」

「そこでいい知らせがある、ハル」

魔王は優しく言葉を返した。

「実は、カタナのフェニックスが漆黒龍のツノを持ってたんだ。これを売ってまた店を立てればいいさ」

「本当か？カタナ？」

 目の前に広がっていた闇の中に一筋の光が見えた様だった。

「本当よ。うちのフェニックスちゃんに感謝しなさい。あんたの店を立てるためには漆黒龍のツノなんか勿体無いくらいなんだから」

「そうか、ありがと」

「何よ、今日のあなたらしくないじゃない。これからは私を尊敬することねって、あんた泣いてるの？」

「え？」

 気づいた時には既に頬を涙が通過していた。

 トーナメント優勝の金で買った家にハルの鳴き声が静かに響き渡った。