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第1章 異世界の軍略者
第4話 アビス軍
しおりを挟むあたりに目をやるとニケ、そして俺の周りを何人かの、いや何匹かの何かが囲んでいた。
「え、えーー。なんだよ、この状況は。転生後の美少女との出会いはどうなったんだ?」
「美少女はあんたの隣にいるとして、この状況はやばいわよ。こいつら恐らく“バンパイア”ね」
バンパイア!?
バンパイアってあの人の血を吸うやつじゃあ…
「其方たちは何者だ?アイリス軍の手中のものであればここで処刑しなければならないが…」
アイリス軍?恐らくこいつらの敵なのか。
バンパイア達は腰に付けている剣に手を伸ばしていた。
「いえ、私たちはアイリス軍じゃありません」
すかさずニケが言う。
「では、我ら『アビス軍』か?
見ない顔だな?一体どの様な要件だ?」
「私たち、新しくアビス軍に入ろうと思っていたんですけど道に迷ったんです」
ミナトは隣で淡々と会話を進めて行くニケを呆然と見ていることしかできなかった。
「そうか、今度行われる、入団式の参加者だな。よかろう、我らについてこい」
バンパイアの一人がそう言うとどこからか馬を呼び、その内の一体を俺とニケに貸してくれたが…
「なぁ、ニケ?」
「礼には及ばないわ。あなたを転生する上でこの世界のことはちょっと調べさせてもらっているから。とにかくここからは黙ってあいつらについて行くしかないわね。今のところは順調に異世界ライフを進めているわ」
「いや、そうじゃなくて。この馬おかしくね?」
「こんなの普通じゃない?ただ首から先がないだけじゃない?頭があるかないかの差でしょ?これからあんたどうやってこの世界生きて行くのよ?その調子じゃもたないわよ」
「あぁ、そうだなぁ…う、ゔぉぇ」
地面に排出物が滝の様に流れる。
「ん?どうかした?」
「う、うん。何でもない、大丈夫だよ」
パッとニケが振り返ったが、バレてはいけないと自分の心の声が聞こえたため平然を装った。
が、しかし、これは俺の異世界ライフの片鱗に過ぎなかった。
そうこうしているうちに建物が見えてきた。
「あれが我らのアジト、『アビス』だ」
バンパイアの一人が言った。
遠い距離からもはっきりとその輪郭がわかる建物はなんというか…城?魔城?とにかく雰囲気は最悪。
ニケの表情も少し歪んでいた。
門の前に到着すると自分には到底理解不能な言葉をバンパイアの一人が唱えた。
そして
「開門!」
という一声が城内から響いた。
「この度の遠征、お疲れ様でした。ブラック様」
門をくぐり、城内へ入ると一匹の緑色のモンスターが一人のバンパイアの黒いマントを取り、言った。
「あぁ」
そっけない返事をし、バンパイアの集団は馬を降りた。
「ここからが大事よ。何事も第一印象が大事だからね」
お前が言うかよ、と思わず声が出そうになったがなんとか喉の辺りで抑えられた。
「ついてこい、亞人達よ。これから其方達の部署を決定するために我らの“王”の間に行く」
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