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第1章 異世界の軍略者
第6話 入団式
しおりを挟む「ちょっと、起きなさいよ。ねぇ、ミナト!」
その朝は今まで生きてきた中で最悪の朝だった。
まだ夜の如く空は暗く、とてつもない疲労感が未だに体に残ったままだった。
「んー?母さん?」
母さんという単語は出たものの徐々に頭の中が整理され始め、今自分はバンパイアの城にいることを理解した。
「あー、ニケか。なんだよ、こんな朝早く」
「あんた、忘れたの?今日の朝6時から広場で入団式が行われるって言われてたじゃない。」
「え、えーっと。そうだっけ」
未だに視界ははっきりしない。
段々と視界が晴れてきて、最初に見えたのはニケの服の隙間から見えるほとんど崖に近い胸元だった。
「もう。あんたしっかりしなさいよ!」
パチンっと綺麗な音を立ててニケの手のひらがミナトの頬を打った。
「あ、やばいじゃん。
あのバンパイアが絶対遅れるなって…
どうすんだよ、ニケ。」
「取り敢えず、広場に向かうわよ」
ニケに言われるまま部屋を出て、広場に向かうため階段を降りた。
やはり入団式に出席しているのか城の中には全く人の気配がしなかった。
しかし、ズカズカと歩くニケは何故か心強く感じた。
「見なさい、ミナト。あそこ」
階段の隙間から見える広場では既に入団式らしきものが行われていた。
「もう、ダメだ。手遅れだ」
「まだ諦めるのは早いわ。今、ノーライフ・キングのジジイが話しているから未だ始まったばっかよ」
「でも、あの中にこっそりバレずに行くなんて不可能じゃないか…いや、行けるか。ちょっと時間をくれ。」
「えぇ」
ミナトは目を閉じた。
数秒の後、ミナトの目がパチリと開き、ニケの方を向いた。
「何か思いついたようね」
「まぁな、久しぶりに頭使ったぜ。ニートで学校は行かなかったけど、『軍師オンライン』はやってたからな」
そう言って、ニケに耳打ちをした。
「ふん、なるほどね。あなたにしてはやるじゃない」
「まぁな、とにかくこの作戦を実行するにはお前の力が不可欠だ。やってくれるな?」
「今回はしょうがないわね。でも、常にあんたを助けるなんて思わないでよね」
「はいはい」
ミナトは適当に返事を済ませ、ニケに作戦の開始を告げた。
「えー、そういうことでこのアビス軍に加入してくれたことを心より感謝する。以上」
「ありがとうございました」
ノーライフ・キングじじいの話が終わり、司会らしきバンパイアが式を進行する。
「作戦開始だ」
ミナトは一人呟いた。
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