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日常の終わり
しおりを挟む「幸せな人生」とは何だろう。
何も特別なことなく平穏に過ごすことを指すのか。ネットで有名人になってもてはやされることを指すのか。友達をつくり最期の時まで多くの人に囲まれることを指すのか。
俺、橘 雷也はいつからかそんな幸せな人生の形を想像するようになった。
将来が不安になったのか、それとも周りでバカ騒ぎする人を見てうらやましく思ったのか。多分両方だ。
「おはよう、橘」
「おはよ康太」
この男は友達…といえるのか分からない。会ったら声をかける程度の仲だ。苗字も何だったか忘れてしまった。
俺は今日も機械のように教室の決められた席に座り、授業を受ける。
・
・
・
「ただいまー…誰もいないけど」
俺は高校生2年、1人暮らしをしている。地方から都会に出たからだ。何かを変えたくて高校に来たのに中学から何も変わっていない。一緒に遊ぶ友達もいなければ、部活にも入っていない。上達したのは家事だけだった。
「宿題はー…まぁ後でいいだろ、もう6時だ、飯飯」
「今日はオムライスするか、簡単だしな」
俺は台所に立つと適当に玉ねぎを切り、ご飯を【黒い雷】で火を付けたコンロで炒めた。
ケチャップもよく考えずに玉ねぎと一緒に入れ、卵を焼いてその上に乗せた。
「いただきます」
さらっと使った【黒い雷】
これは俺が中学生のころにいきなり目覚めた力だ。
これは雷みたいだ、しかしこの雷は【真っ黒】なのだ。この力について俺もよくわからないし、だれにも話していない。話せば俺がどんな目で見られるかわかったものじゃないからだ。
せいぜい今使ったようにコンロの火の節約ぐらいにしか使っていない。
「でもこの雷の力の調整すげぇ大変だったなぁ…」
この力が発現した時、誰にも見られない場所でイキイキと使ってみたことがある。その時試しに木に向かって撃ってみたのだが、黒い雷が当たった個所は抉れしかも燃え始めた。怖くなって逃げだしてしまったが、幸い大事に至らない原因不明の火災として事件は終わった。
それから俺はこの雷の恐ろしさを認識した。チマチマとそれこそ一指し指と親指の間でだけ雷を起こすよう手加減を覚えたのだ。
この力はすごいし、他の誰も持ってない俺だけのものだろう。
だが生活に変化はなかった。俺が起こさなかっただけかもしれないが、少なくとも今俺は有名人でも何でもない、ただの一般の高校生だ。
「ごちそうさまでした、ご飯炒めすぎたな…焦げてた」
今日も変わらない1日が終わりそうだ。こんな1日で幸せと感じられるわけがない。俺は変化を起こす気はなくても何かしら変化を求めていた。何か、こんな無気力な生活に変化を。
「…そんなの自分で何とかしろって話だよな。…あほらし、寝よ」
今の俺にはやる気という感情が全くなかった。
今日が終わりを迎えた。
・
・
・
「この辺にいるはずなんだが…魔法の適正を持った奴が」
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