貴方だけを見つめたい

ゆきりん(安室 雪)

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 通常使うエレベーターとは違う場所にあるエレベーターを使い上のフロアーに上がっていく。『チンッ』と目的のフロアーに到着し廊下に出る。まるでホテルの様に綺麗な廊下だ。樹は美優の肩を抱いたままゆっくり歩く。

「あ、あのっ!樹さん、離してもらえませんか?」

 肩を抱かれている意味がわからない。しかも初対面なのだ。

「ん~、無理だねぇ。だって、美優俺のモノだし」

「私っ、モノじゃないし。樹さんのじゃ無いですっ」

「ふふっ、照れちゃって。可愛いね、美優。ここが俺と美優の部屋だよ」

 カードキーをかざして、鍵を解錠する。

 玄関内に入ると、白いもふもふしたものが飛び付いてくる。

「きゃっ!?うさぎ?」

 とりあえず、うさぎを抱きしめたままリビングのソファーに座らされ紅茶を勧められる。

「美味しいっ」

 ほんわりとバラの香りがして優雅お茶だ。

 美優の言葉に樹が嬉しそうに微笑む。その嬉しそうな顔を見るとドキドキしてしまう。

「美優に喜んでもらえて嬉しいよ」

 樹も紅茶を飲みながら美優の髪を撫でる。

「あのっ、樹さん。お仕事の内容って何ですか?早く慣れないと」

「ああ、内容はそうだなぁ~。普通だったらハウスキーパー兼お世話係なんだろうけど。美優には、俺の恋人になって貰おうかな?」

「ええと、ハウスキーパー兼お世話係で」

 しどろもどろに答える。

「それじゃダメだよ。だって、こんな事、出来ないでしょ?」

 優しくソファーに押し倒され薔薇の香りの唇が押し付けられる。啄む様なキスをされ、ゆっくりと舌が入ってくる。

「いつ・き・・・さんっ!」

 押し退けようとするがビクともしない。

 樹はしばらく美優の唇を楽しんだ後、解放してくれた。

「美優、俺、思い出さない?」

「えっ!?」

「丁度、2年くらい前かな?雨の日の夕方、うずくまってる少年をタオルで拭いてくれて、暖かいレモンティー買ってくれたでしょ?ソレ俺」

「!?」

「まだ、売れる前で今よりガリガリで髪も黒に染めてた。眼はそのままだったけど。あの時、何個目かのオーディション落ちて、会社の下で今後どうしたらいいか、途方にくれてたんだ。そしたら、美優がスマホで音楽聴かせてくれんだ。『私がいつも元気もらってる曲なの』て、スノスタの『祈り』。あと、『貴方に相応しい仕事はまだまだこれからいっぱいあるよ。自分らしく頑張ってみてよ。有名になったら自慢するから』って。覚えてない?」

 じっと目を見つめられる。

「覚えてるっ!あの時のっ!うわ~っ、すごいねっ頑張ったね。別人みたいだよ、わからなかった!」

 思わず美優から抱きついてしまった。

 「あれから髪は元の色に戻して、ヘラヘラ笑いのオーディションをやめて、素の寡黙でいたら仕事が入る様になって来たんだ。ジムで体鍛えたりもしたけど。あの時の美優のお陰だと思ってる。ありがとう」

「違うよ。頑張った樹さん自身の力だよ」

 ふふっと笑う。

「あれ以来、ずっと探してたんだ。やっと先週見つけて。お願いだ、美優、俺だけを見つめてくれないか。愛してる」

「はい。私も貴方だけを見つめたい」

 そして、甘い甘いキスを交わすのだった。



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