上 下
7 / 30

7

しおりを挟む
 悲鳴を上げると、腕が少し緩んだ。その隙に腕に力を込め、目の前の人を押しクルリと向きを変え、元来た道へと走る。逃げなきゃ。変態だわっ!王宮に変質者がいるなんてっ!

 さっき走ったばかりだから、足がもつれそうになるが、逃げなきゃ!

 「待って!!」

 うわっ、変質者が追いかけてくる。

 「話を聞いてくれっ!!」

 いやいや、変質者の話は聞かないよっ!

 「待って!君はっ、君は番いなんだ!」

 番の話しは聞かないよっ!ん?番?

 「俺の番は君なんだっ!待ってくれっ!」

 ピタリを足を止め、振り返る。

 「番?」

 「そう、君は俺の番なんだ」

 にっこりと微笑んだ男性は、いきなり右手を取り手の甲にキスした。

 「マイ スィート。もう、逃げないでくれ」

 手を握られたまま、じっと目を見つめられる。甘い匂いが身体を包み込む。どうしたんだろう、胸がドキドキする。

 「一緒に来てくれないか」

 返事はまだしてないが、手を引かれそのまま一緒に歩き出す。歩きながら、ふと気づいてしまった。

 「あ、あのっ!王太子様っ!」

 「俺の事はフレッドと呼んでくれ、ミーシャ。いや、ミー?」

 家族や親しい親友のみが呼ぶ愛称を呼ぶ。

 「いえ、そんなっ。お呼び出来ません。手も離してください」

 「ミー、ダメだよ。離さない。ほら、フレッドって、その可愛い唇で呼んでごらんよ?」

 歩いていた通路で足を止め、手を繋いでない手で頬を撫でられる。

 「ほら、ミー?フレッドだよ?」

 「ふ、フレッド・・・んっ!」

 恐る恐る名前を呼ぶと、頬にあった手が後頭部に移動し、頭を固定されキスされる。

 「んんっ、あっ」

 すぐに舌がくちびるを割り、口腔内にヌルリと入ってきて、中を舐めつくす。甘い、キスが甘いだなんて・・・。頭がボ~ッとして、立っていられなくなる。カクッと身体から力が抜けた瞬間、広い胸板に抱きしめられる。

 「ああっ、ミー!可愛い。もう離せない。ミー、ミーっ!」

 フワリと身体が浮き、抱き上げられ歩き出す。頭はフワフワしたままだが、この甘い匂いはとても安心する。抱き上げられたまま、またキスされる。すると、濃いピンク色の大輪の薔薇が舞い降りてくる。その薔薇を手に取る。

 「ふふっ。俺とミーの愛の花はピンクの薔薇だね?薔薇の花まで可愛いな」

 フレッドはある部屋の前で止まり、扉を開け中に入る。そしてソファーに座る。私は抱き上げられた時のまま、膝の上に座らされる。

 「ミー、やっと君に会う事が出来た」

 チュッ、チュッと何度もキスされてしまう。甘いキスに溺れてしまいそうになる。

 「あ、あのっ。離して下さいっ」

 「ん?ミー、しばらくは無理だよ?」

 そしてしばらくキスされていると、

 「フレッドっ!!いくら番でも、こんな夜に女の子を部屋に連れ込んじゃダメよっ!!」

 ババ~ンと扉を開いた女性、王妃様(!!)が叫びながら現れた。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貴方との運命

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:244

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:96,737pt お気に入り:3,167

ある公爵令嬢の生涯

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:5,468pt お気に入り:16,126

悪役令嬢の中身が私になった。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:617pt お気に入り:2,628

もういらない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:266

好きになって貰う努力、やめました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,475pt お気に入り:2,187

処理中です...