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 こちらに駆けてきた馬に向かいサリナは声をかけた。

 「ヒンヒーン、こっちこっち!!」

 その馬がサリナにピッタリと引っ付き、顔を擦りつけている。

 「ヒンヒン、よしよし。久しぶりね、でもね、ちょっと急いでいるの。私達を乗せてね?ミーシャ馬には乗れる?」

 馬に話しかけた後、ミーシャにたずねてくる。

 「乗った事無いわ」

 「わかった、私の後ろに乗って?」

 サリナが先に馬の背に跨り、ミーシャを引き上げた。

 「しっかり掴まっててね?追いかけて来る可能性もあるから急ぐわ」

 ミーシャが掴まったのを確認し、サリナは馬を走らせた。しばらく走ると、遠目に屋敷が見えてきた。

 「ああ、とりあえずは安心だわ」

 サリナは屋敷の入り口に向かい独特な扉の叩き方をした。

 トントンではなく、ドドドドンっ!!だ。

 すぐに中から人が出て来た。

 「サリナお嬢様っ!どうされたのですか!?」

 サリナを確認する事なく、扉を開いている途中で声がかかる。

 「説明は後っ!中に入れてっ!外にヒンヒンがいるから厩舎に戻して」

 どうやらサリナの屋敷のようだ。

 メイドに連れられティールームに入ると、サリナはミーシャに上座に座る様に促した。メイドは急いでお茶の用意をした。2人でお茶に口を付け、『ふ~っ』と一息ついた所でティールームの扉が開けられた。

 「サリーが帰ってるんですって!?」

 「お母様、突然すみません。しばらく匿って下さいっ!」

 サリナの様子で緊急なのを察知したサリナ母(コクーン夫人)は説明を促した。

 サリナがミーシャを紹介したので挨拶をし、その後はサリナの説明に任せた。途中、サリナ母の顔つきが厳しくなっていった。

 「ミーシャ様、サリーも大変だったわね。しかし、運がいいわ。自分の領地で逃げ出せるなんて」

 「ええ、三叉路を見て確信出来たからヒンヒンを呼んだのよ。さすがヒンヒンだわ」

 「あの馬、逃げ出すのが上手いのよね。サリーに似て」

 「もうっ!!で、私達がいる事を外には知られないようにして欲しいのよ」

 「わかったわ、とりあえずは食事をしなさい」

 ダイニングに移動し、夕食を頂いた。半分ほど食べ終わった頃にコクーン男爵が帰って来た。

 「大変だぞ!?フレデリック王太子の番様が誘拐されたらしいっ!!」

 ダイニングに飛び込んで来た男爵の一言目がソレだった。



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