花笑みの庭で

ゆきりん(安室 雪)

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「熱海っ?何故に熱海っ!?レコーディングはいいの?」

 温泉っ。

 しばらく行ってないけど、いいなぁ~。

 でもでも、今はレコーディングしなきゃなのに何で?

 「別荘にもスタジオ完備してあるし、まだ録音出来る段階じゃないしな。熱海で少しのんびりしながら彩音と曲、練るのも楽しみだしな」

「アヤトの部屋と変わらないじゃない」
 
 部屋で2人で曲練って歌ってって。

 その時、アヤトのスマホに着信がある。

「彩音、出てくれる?運転中だし」

「え、いいの?」

 じゃあ、失礼して・・・。

「はい?」

 まさか、アヤトのスマホです、とは出れない。

「え?彩音ちゃん?今何処?」

「え~と、もしかして等々力さんですか?」

 番号、登録されてないよ?等々力さん。

「そう、俺。で、アヤト一緒なんだよね?車無いけど、どこ?」

「熱海に向かい中みたいです?」

「何故に熱海?」

「温泉とスタジオらしいですけど」

「ダメダメ、スグに戻るようにアヤトに伝えてっ。高速だったら、帰りに和牛コロッケ買ってきて」

「わかりました」

 電話を切り、アヤトに伝える。

「無理だな、温泉の気分だ」

 しれっと答える。

「いやでも、等々力さんスグに帰るようにって。温泉の素でもいいじゃないですか」

「やだ、天然温泉」

「アヤト~、等々力さん困りますよ。歌ならアヤトの部屋で十分だよ。ねっ」

「彩音と一緒に温泉に入りたい」

 ふぎゃ!

「はいりませんよ~、もちろん」

 ニッコリ断る。

 ありえないでしょ~っ!

「じゃあ、別でもいいから熱海で温泉」

 う~っ、う~っ、う~っ。



「彩音、温泉の素どれにする?この『湯の花入り』気になるな~。あ、でもコレもいいな。彩音はどれがいい?」

 るんるんと弾んだ声のアヤトが、両手に温泉の素を持って聞いてくる。

「アヤトの好きなので」

 顔を引きつらせながら答える。

 だって、妥協案の『水着を着て温泉の素のお風呂にアヤトと入る』←アヤト案。を帰ったら遂行しなきゃいけないなんてっ!


 
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