願いの十字架

ゆきりん(安室 雪)

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 プツリと娘の腕に注射針が刺さり、勢いよく血が溜まって行く。十和子の血液はこうはいかない。いつも勢いが無く、時間がかかるのだが、その娘は1分もかからない。大量に抜き、嫌がられたり、貧血を起こされると困るので、少量にしておく。

「ありがとう、助かるわ」

 ニコリと微笑む澤に、娘はたずねる。

「どういった研究なんですか?」

 娘は興味本位だ。

「それは教えられないわ。他に研究する人が出てきたら困るから」

 冷たく言う澤に、娘はそれ以上はたずねなかった。



 数週間か経つと、明らかに娘の態度が大きくなってきた。しかも、2日に一度のお菓子では不満だと言い、お金を要求する様になってきた。お給金を上げるように旦那様に伝えると言っても納得せず、毎回お金が欲しいと言ってきたのだ。食べ物の融通は簡単だが、現金のお金となると澤には厳しい。もちろん十和子にもだ。

『人の血が欲しいなんて、怪しいのよね。お金、払ってもらえないなら人に言うわ』

 そんな事を言ってきた。

 どうしたものかーーー。




 娘がお菓子を食べにきた。その日のお茶には澤が睡眠薬を入れていた。娘はいつも通りお菓子を食べ、お茶を飲み、そして眠った。

 いつも通り、腕から採血すると澤は娘を引きずり、十和子の部屋から出て行った。その日からその娘が十和子の部屋に現れる事は無かった。

 屋敷の離れの地下に座敷牢がある事に澤は気が付いていた。いつの頃からか、澤には屋敷に部屋を与えて貰っていたので、敷地内を散策し、使っていない離れ内を見ていた時に発見したのだ。とりあえず、娘はそこに監禁した。使っていない建物で、本邸からは若干離れているので地下からの叫び声も聞こえる事は無いはずだ。

 ふふふっ、と澤は微笑む。



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