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 翌朝、あまり寝られなかったせいかジュディーは頭が痛く起き上がる事が出来なかった為、ベッドの上で野菜スープと果物を少し食べ、また床に伏せっていた。

 「ジュディー、大丈夫か?」

 朝、昼ともにあまり食事を取らなかったと聞いて、夕方ガイがジュディーの部屋を訪れた。その手にはブーケのように可愛らしく束ねられた薔薇がある。

 「綺麗な薔薇が庭に咲いていたからね。庭師に少しもらってきたんだ」

 「ありがと、ガイ」

 微笑んだつもりだが、ガイは少し悲しそうな顔をした。

 「ジュディー、ミヤから何か聞いてる?」

 いつもの口調でガイは聞いてくる。

 「いえ、何も?」

 食事の用意やお茶の準備をしてくれたが、特に話してない。

 「じゃあ、見てもらおうかな?」

 そう言うと、そばに控えていたミヤにジュディーに寝間着の上に羽織りものを着せる様に指示を出した。そのジュディーを抱き上げ、ガイは部屋を出る。

 「えっ、ガイっ!?どこに・・・!?」

 運ばれたのはティールームだ。

 しかし、そこには花・花・花っ!!花だらけで、花から視線を動かせば何やら大小の箱が大量に積まれている。

 「何コレっ!?」

 「今朝からジュディーにお見舞いと称した花と貢物だ。花はしょうがないとして、貢物はどうする?受け取るか、送り返すか?」

 「もらう理由がありませんので、送り返します」

 「箱に番号が振ってあって、この紙に番号と送り主が書いてある。花はこっちの紙だ。体調が優れないのは分かるが、返送に付ける文の作成と花にはお礼状を書いてくれるか」

 「分かりました・・・」

 改めて花と箱を見て、溜息が出てしまった。




 翌日から返送とお礼状の手配に追われる事になり、凹んだ気分のままではいられなかった。手配の合間には焼き菓子などが用意されており、ジュディーは一休みしながら作業をこなして行く。目処がつくのに2日かかった。

 「お、終わったわっ!!」

 届いたモノの処理が全て終わり、手放しで喜び、ミヤと共に解放された喜びを分かち合っていた。しかし、その場にやってきた祖父の一言でジュディーは凍りつく。

 「おお、終わったな。次はこの見合いの申し込みを処理してくれ。受けるなら教えてもらいたいし、断るなら報告はいらん」

 祖父はりんごを入れる大きな木箱に3つ、山盛りになっている見合いの申し込み書を置いて行った。

 「ミヤ、私は今、何も見てないわ。今日は開放感を味わうのよ?」

 「そうよね、ジュディー。いえ、お嬢様。私は今、何も見てないし聞いてないです」

 2人は現実逃避し、溜息をついた。



 
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