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そもそもこの学校に教師として入った理由ですら、当時付き合っていた女に、「あなた、教師とか似合いそうよね。あと先生って呼ばれるのってなんかカッコいいじゃない」と言われたことがきっかけだ。つまりは動機が不純なのだ。
特別やりたいことなどない。当時の俺も今と変わらず適当な感じだったので、女のその言葉にそれも悪くないかもなと、少し思ってしまった。
そんな事でもなければ、今頃どこかの賢者みたいに山奥に引きこもって、薬でも作って一生を終えていたのかもしれなかった。
それが今や──
ビュン──!
「なっ!?」
目の前に迫った物体を手に持っていた出席簿で弾き落とす。
無惨に転がるそれに視線をやる。
上履きだ。
「ちっ!」
聞こえた舌打ちにそちらを見る。
教卓を挟んだ正面に、規則的に並べられた机が5つ。そこには4人の女生徒が座っていた。
舌打ちをした生徒は誰だかわかっている。
「オーリエ・ムーンウィプス……。毎度毎度、懲りねえなお前は」
俺は睨みを利かせてそう言った。
「いえ、今のは魔女様がそうしろとおっしゃったのであってですね。けしてオーリエのせいじゃありません」
「嘘つけ!」
分厚いメガネを人差し指で押し上げながら話すオーリエに対し、速攻でそう突っ込んではみるが、相手は既にこちらの話を聞いてはいない。
「せんせ~そんなことよりもう休みたいんですけどぉー」
「いやいや、おまえ、今登校したばかりだろうが」
「え~~」
「"え~"……じゃない!!」
赤茶色の髪とそばかすが印象的なローレン・グレイフェザーが不服そうに声をあげた。そしてその横の席では、オーリエの双子の姉である眼鏡をかけてない方のアーリエ・ムーンウィプスは我関せずといった様子で外をぼんやりと眺めている。
「──現在の時刻、8時29分、本日もこのようにして我が1日が始まる。しかし、未だ被検体である担任Aの実力は未知数。その実力を測るにはまだまだ情報が足りない。凡夫でない事を切に願うばかり──痛っ!!」
「聞こえてるぞソラリス」
録音機能のついた魔術道具を手に、研究者然とした態度で、今起きている出来事を記録するソラリス・アルキオンの不遜な言葉と動きを阻止すべく、勢い良くチョークを投げた。
それは狙い通りにソラリスの額に当たると床に落ち、折れた。
「──狙撃の命中率はなかなかと言ったところ。今後も調査を続けていく」
ソラリスは懲りずにまだそんな事を呟いている。そんな中、校内に鐘の音が鳴り響いた。
授業開始の合図だ。
それと同時にさっき閉めたばかりの教室のドアがガラガラっと勢いよく開かれる。
次いで、
「おはようございまーーす!!」
という元気な声が響いた。
「先生!今日もいいお天気ですね!」
「お前はいつも元気だな。まあ、遅刻だがな」
「はい!元気だけが取り柄ですから!それから、遅刻は見逃してください!!」
「うんうん、そうかそうか。カリム・ブライトハート「遅刻」…っと」
そう答えて、俺は出席簿のカリムの名前の右側に大きく×印を書き込んだ。
特別やりたいことなどない。当時の俺も今と変わらず適当な感じだったので、女のその言葉にそれも悪くないかもなと、少し思ってしまった。
そんな事でもなければ、今頃どこかの賢者みたいに山奥に引きこもって、薬でも作って一生を終えていたのかもしれなかった。
それが今や──
ビュン──!
「なっ!?」
目の前に迫った物体を手に持っていた出席簿で弾き落とす。
無惨に転がるそれに視線をやる。
上履きだ。
「ちっ!」
聞こえた舌打ちにそちらを見る。
教卓を挟んだ正面に、規則的に並べられた机が5つ。そこには4人の女生徒が座っていた。
舌打ちをした生徒は誰だかわかっている。
「オーリエ・ムーンウィプス……。毎度毎度、懲りねえなお前は」
俺は睨みを利かせてそう言った。
「いえ、今のは魔女様がそうしろとおっしゃったのであってですね。けしてオーリエのせいじゃありません」
「嘘つけ!」
分厚いメガネを人差し指で押し上げながら話すオーリエに対し、速攻でそう突っ込んではみるが、相手は既にこちらの話を聞いてはいない。
「せんせ~そんなことよりもう休みたいんですけどぉー」
「いやいや、おまえ、今登校したばかりだろうが」
「え~~」
「"え~"……じゃない!!」
赤茶色の髪とそばかすが印象的なローレン・グレイフェザーが不服そうに声をあげた。そしてその横の席では、オーリエの双子の姉である眼鏡をかけてない方のアーリエ・ムーンウィプスは我関せずといった様子で外をぼんやりと眺めている。
「──現在の時刻、8時29分、本日もこのようにして我が1日が始まる。しかし、未だ被検体である担任Aの実力は未知数。その実力を測るにはまだまだ情報が足りない。凡夫でない事を切に願うばかり──痛っ!!」
「聞こえてるぞソラリス」
録音機能のついた魔術道具を手に、研究者然とした態度で、今起きている出来事を記録するソラリス・アルキオンの不遜な言葉と動きを阻止すべく、勢い良くチョークを投げた。
それは狙い通りにソラリスの額に当たると床に落ち、折れた。
「──狙撃の命中率はなかなかと言ったところ。今後も調査を続けていく」
ソラリスは懲りずにまだそんな事を呟いている。そんな中、校内に鐘の音が鳴り響いた。
授業開始の合図だ。
それと同時にさっき閉めたばかりの教室のドアがガラガラっと勢いよく開かれる。
次いで、
「おはようございまーーす!!」
という元気な声が響いた。
「先生!今日もいいお天気ですね!」
「お前はいつも元気だな。まあ、遅刻だがな」
「はい!元気だけが取り柄ですから!それから、遅刻は見逃してください!!」
「うんうん、そうかそうか。カリム・ブライトハート「遅刻」…っと」
そう答えて、俺は出席簿のカリムの名前の右側に大きく×印を書き込んだ。
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